「麻雀の失敗学まとめ」
本書では著者朝倉プロの18の失敗打牌が取り上げられていますが、Mリーグの打荘数を踏まえると、二度も天鳳位になった打ち手でさえ、これほどまでの頻度でミスをしてしまうのかという気にさせられます。ミスをしていないように振る舞っている打ち手は多々見受けますが、単にミスに気付いていないだけか、見て見ぬ振りをしているのか、明確な正解が出せないから自分の選択もミスではないというスタンスで臨んでいるかのいずれかではないでしょうか。
「勝つための現代麻雀技術論」から何度も取り上げていることですが、ミスについても、「認知ミス」「判断ミス」「打牌ミス」の3通りに分けられます。例えば放銃を回避できたはずの局面で放銃した場合、「他家がそれほどテンパイしていると思わなかった」のであれば「認知ミス」、「この手ならまだ押してよいと思った」のであれば「判断ミス」、「押すべきでないと頭では分かっていたが、うっかりツモ切りしてしまった」のであれば「打牌ミス」になります。
私は、麻雀でそれなりに勝てるようになったと感じられていた頃にミスをした記憶があまりありません…もちろんミスをしていなかったはずがなく、ミスに気付けていないか、見てみぬ振りをしていたかのどちらかです。そもそも「認知ミス」「判断ミス」に関しては、後から牌譜が見られる環境でなければ、打牌直後に気付かなければそのまま気付かずじまいになってしまうことがほとんどです。
そして、「打牌ミス」に関しては、「たまたま調子が悪かっただけ」と片付けられがち。具体的に覚えていないというだけで、麻雀格闘倶楽部をやり込みはじめた頃は、持ち前の不器用さから隣の牌にタッチして切ってしまうことが相当あったはずです。手先が器用かどうかは人次第ですが、「認知」「判断」の段階で時間に余裕を持って何を切るか判断できていれば、そのようなミスももっと減らせていたはずです。
最近はミスが本当に増えたと感じていますが、「ミスに気付けなかった」時よりはいくらかはマシになったとも思います。ただ、以前ほど麻雀に打ち込まなくなったのも、自分のミスに嫌気が差したからという理由が大きいような気もします。朝倉プロは前書きで自分の麻雀を減点方式で評価していると書かれていますが、「どんなにミスに嫌気が差しても、毎日麻雀を打ち続ける自信がある」という方でなければ正直お勧めしません。朝倉プロはメンタルに不安があると言われる向きもありますが、むしろこのやり方を貫ける時点で、よほどメンタルが強いとさえ私は思います。
ミスの原因をみつけたら、すぐにそのミスを忘れなさい。ミスを忘れることもプロの技量のひとつです。そしてミスの原因だけを記憶しなさい。その記憶の積み重ねが財産となる。ミスそのものは財産とはならないのでミスを背負ってはならない。 『風の大地』という漫画の中の言葉が最近話題になりましたが、ミスした時の対処法として、まさに至言といってよいでしょう。しかし、人間はどうしても、「ミスまで背負ってしまう」あるいは、「ミスの原因まで忘れてしまう」かのどちらかとなりがち。簡単でないからこそ「プロの技量」と言われているわけですが、どうすればその域に近づくことができるのか。私も今後実戦を通じて学んでいきたいと思っております。