Q・自分の性格を一言で言うと?
A・粘り強いのび太
Q・あなたのチャームポイントは?
A・メガネ、もはや本体。
Q・子どもの頃の将来の夢は?
A・イギリス人
小條がテレて顔がブレたため、ランウェイを歩く姿の写真を入れることができない。観戦記に載せられるテイストのスクショが撮れなかった。赤い蝶ネクタイは、国民的少年探偵のアニメを模しているのだと言う。
小條薫は、そんなタイプのシンデレラなのだ。
アンケートはさらに、
Q・勝負の日のルーティンは?
A・最高のコンディションにするため、試合前日にはメガネに休暇を与えてます。
と続くから、もしかしたら昨日メガネは下のような状態で、小條の自宅にたたずんでいたのかもしれない。
このように、小條のアンケートを掘っていくと、それだけで一記事でき上がってしまいそうだ。幸いSemiFinalにも登場してもらえそうな運びになったので、この辺で麻雀の内容に入っていこう。
小條は東場の間、ずっと我慢していた。「リーチ」と言われたらオリ、「ツモ」と言われたら点棒を払う。
いわゆる「地蔵ラス」という言葉もチラついてきた南2局の親番で、とうとう小條のお眼鏡にかなう配牌がやってきたのだった。
■ラス目
■親番
■イーシャンテン
3つそろったら、これは暗カンだ。上に書いた3つの要素は、あくまでも一般論の域を出ないものの、今回の小條の場合はさらに、
■新ドラが1つ乗り
■・ドラドラが12000に打点アップ
という結果につながった。「新ドラはいつもひとつ!」というわけか。国民的少年探偵としては。そういうことなのか。そうなのか。
しかし、ライバルたちも黙ってはいない。
まずはトップ目のみあ。トップ目とは言え、同点で2着目の2人、成海有紗・鈴木桃子とはわずか1400点差で、ラス目の小條とも10400点差だ。このめくり合いを制して、一気にこの試合を突き抜けたい。
ここに、を仕掛けた鈴木が両面待ちで追いつく。
待ちの小條・待ちのみあ・待ちの鈴木、
2人の待ちが重なっているキー牌のは、成海の手に渡り、
鈴木は、このラス牌のを止めてオリを選択した。相変わらずピントがバッチリ合っている。ちなみに、鈴木がテンパイを維持し、これを河に放っていたとしたら、頭ハネでみあのアガリだったこともつけ加えておく。
アガリでも、放銃でもなかった鈴木。しかし、このゲームの命運は、確かに彼女が握っていた。麻雀には、4人で描く芸術作品という側面がある。
最後は、を暗カンしたみあがをつかみ、
小條が牌を倒す。・ドラドラの3翻だが、暗カンによるテンパネで12000の収入を得、ラス目から一躍トップ目に立つ。このリードを守り切って、小條薫はSemiFinal行き2枚目の切符を手にした。
相棒と、固い握手を交わす。
「次も頼むぞ。」と。
先述した通り小條への12000放銃が響いたものの、後半の巻き返しで2着に滑り込んだのは、みあ。
■リーチ判断
■鳴き判断
■押し引き
随所に高いレベルの麻雀を見せた7年目のシンデレラは、東3局1本場で腕を見せる。いや、魅せる。
まずは、ポンから発進。南家のみあは、バックの仕掛けを入れたと見ることもできる。
ホンイツに決めるなら、を残してのトイツ落としを急ぎたいところだが、トイトイを見て、いったんから河に並べ、
を暗刻にした後ツモを引き入れると、ここで改めてホンイツに向かう。素晴らしい手順だ。みあの麻雀には、確固たる意志があり、視聴者を引きつける。
みあは自風のを鳴いて役をつけると、
ここでトップ目の親番・鈴木にテンパイが入る。
下家みあのソーズ仕掛けも気になるし、自身の手だけを見ても、両面待ちとシャンポン待ちを選択できる難しい局面で、
両面待ちに受けて、鈴木は力強くリーチを宣言した。
この宣言牌を、みあがチーしてテンパイ。こちらも待ちが選べるところだったが、みあはこの5枚から暗刻のを打ってカン待ちを選択。
テンパネを捨て、見ようによってはわずかながら打点を下げる打ち方のようだが、この成海の手牌と河を見れば、タンキにもタンキにもアガリはないと分かる。神目線では、という注釈つきになるけれど…。
最後は注文通りをツモって、1000・2000は1100・2100に供託1本も回収した。
Best32GroupD♯3では伸び伸びと打ち、54500点を集めてトップになった鈴木桃子だったが、このBest16GroupA♯2では、中盤以降みあに絡めとられてしまった印象だ。
それでも東1局0本場には、ペンから引き入れて、気持ちのいいリーチを打ち、
テンパイを入れていた親番成海からを打ち取って8000のアガリ。
2着になったみあとともに、「負けてなお強し」の印象を残した。
ラス脱落の憂き目に遭ったのは、Best32GroupC♯3を劇的勝利で勝ち上がってきた成海有紗。しかし、成海は大きな勝負所を制していて、このGroupA♯2のヒロインになってもいいくらいの存在感だった。
東4局0本場、まず鈴木から先制リーチを受ける。
その時の成海は、まったく間に合っていない状態だった。
しかし、ここから、ネガティブな自分を押し殺し、なんとか前向きに粘りながら進行していくと、
まずは1つ目の山場、払いの選択を迫られる。鈴木の河には第1打・第2打にが並んでおり、第4打・第5打にとある。タンヤオもつけておきたい中、スジのくらいは通しておきたいところだった。しかし、鈴木のリーチはとのシャンポン待ち。ドラドラ内蔵で打点は5200からだ。
成海はこのを止めて、現物のを打った。の部分は、タンヤオのシャンポンとしてではなく、の二度受けと考えられる。どうせツモを受け入れるのならタンヤオは不要、じっくり手を作って勝負どころは後半に、というわけだ。
しかし、一難去ってまた一難。小條から二軒目のリーチが飛んできた。待ちはノベタンのだ。
ここまで来て、ようやく成海の手にツモが舞い降りる。東1局からずっと当たり牌をつかまされてきた成海にとって、千載一遇のチャンスだった。二軒に通っていないを、蛮勇を奮って曲げる。決意の発声、
「リーチ。」
ずっとそっぽを向かれていた麻雀の神様に、この日成海が初めて抱きしめてもらえた瞬間だった。渾身で会心のツモ。さらに、裏ドラ表示牌にもが転がり、
リーチ・ツモ・ピンフ・ドラ・赤・裏2
3000・6000にリーチ棒2本を入れて、一躍トップ目に立つ。次の瞬間、画面に表示されている敗退確率は、54.9%から12.5%にまで下がっていた。♯3の卓につけるかもしれない。いや、♯2をトップ通過できるかもしれない。
しかし、そんな成海に、最後の試練が待っていた。
再びラス目で迎えた南4局0本場、成海は2000・4000ツモなら親番・みあを200点かわしてラス回避できる。しかし、ドラも赤もないタンヤオのテンパイ。どうする。
■打の、待ちは、自分の河にが並んでいてフリテンだ。
■打の、待ちは、が鈴木の副露に見えている。
■打の、待ちは、でタンヤオが消える。
「すみません…。」と同卓者に詫びながら、この日1番の長考をした成海は、打を選択し、待ちに受けた。
Best32GroupC♯3では、一発ツモ裏1の条件を満たした成海だ。二夜連続の奇跡を起こす可能性は十分にあった。
しかし…
麻雀の神様がくれた細い細い1本の糸は…
裏目のツモただ1つだけだった。この、成海はどんな気持ちで河に放ったのだろう。
結局オーラスは、成海の一軒テンパイで流局。直撃条件のある鈴木・みあは、無理な勝負をしなかった。
同じキャンバスに夢を描いた同卓者たちに、通い慣れた思い出深い会場に、そしてルーキーイヤーから育ててもらっているこのシンデレラファイトという大会に、深々と頭(こうべ)を垂れ、成海有紗は踵(きびす)を返した。
Best16GroupA♯2で、トップを獲得した小條薫は、SemiFinalへと進む。インタビューでは、「実力というよりは、展開に恵まれた。」とはにかむが、ここまで来たら初のメガネっ娘シンデレラも現実味を帯びてくる。
2着のみあと、3着の鈴木桃子は、♯3へとコマを進める。2人とも麻雀が大好きで、なんならもう1回打てることを喜んでいるフシもあるくらいの怪物だ。
自身につきまとうネガティブな感情を振り切って、東4局0本場のめくり合いに競り勝った成海有紗は、ここまで。大舞台・強豪相手でも十分渡り合えるという自信を手に、この舞台を降りる。帰りの新幹線は、やっぱり辛いのだろうか。
一夜にしてニュースターを生む土壌、4年かけて頂を目指し精進したくなる魅力、その両方が、麻雀にはある。
それにしても、オーラスの裏ドラは何だったんだろう。
何だったんだろうなー、麻雀の神様ぁ。
Best16 GroupA Day5結果レポート
#1,#3観戦記
「今日は強気にいこうと思ったんです、私」【Best16 GroupA ♯1 担当記者・神尾美智子】
敗者の美学【シンデレラファイト シーズン3 Best16 GroupA ♯3 担当記者・坪川義昭】