25歳でプロ入り以降、鳳凰位決定戦や十段戦の決勝等に幾度も進出するもタイトルに手が届かなかったHIRO柴田は、いつしか“無冠の帝王”と呼ばれていた。2023年、46歳で悲願の日本プロ麻雀連盟の最高峰「鳳凰位」を獲得。以降、第1期達人戦、麻雀グランプリMAXを連覇し、2025年にはEARTH JETSからドラフト指名を受け、念願のMリーガーとなった。これまでどんな道のりを歩んできたのか、その足跡をたどるーー
麻雀との出会いは?
小学生の頃から麻雀漫画が大好きだった。「小学校3年生の頃、友達の家に麻雀卓があり、友達3人と友達のお父さんとやってみたのが最初です。友達の家には麻雀漫画もいっぱいあり、片山まさゆき先生の『ぎゅわんぶらあ自己中心派』や『スーパーヅガン』を読んでました。片山先生のキャラクターって可愛らしいので、子供でも読みやすいんですよね。中学生になってからは近代麻雀も読み始め、高校生の頃は、近代麻雀の別冊も読んでいたので、知らない麻雀漫画はほとんど無いくらいでした。来賀友志先生の原作漫画も大好きで、ふたりの作品は全部読んでます」

中高時代、夢中になっていたことは?
中学時代は卓球、高校時代は麻雀どっぷりだったという。「よく友達の家で手積みでやってました。学校に麻雀をやるグループがあって、20人はいたのでメンツにも困らない(笑)。当時は成績管理しながらやっていたんですが、実家が麻雀店だった同級生はとにかく強くて、私はよく負けてましたね」
高校卒業後の進路は?
サラリーマン時代もあった。「映像関係の専門学校に行ったんですが1年でやめて麻雀店で働き始めました。20歳になった頃、旅行会社の営業を1年、システムエンジニアとして4年ほど働いた後、再び麻雀店に勤務し、月平均200~300半荘は打っていました。32歳の頃、プロ活動の幅をさらに広げていこうと麻雀店勤務を辞め、日本プロ麻雀連盟の試合運営、道場スタッフ、カルチャー教室の講師を始めました」
プロ入りされたきっかけは?
プロ入りしたのは25歳の時だった。「当時は麻雀店に勤務していたんですが、お店に活気が出たらいいなと思ってプロ入りしました。今だから言えますが、あの頃は自分が一番強いと勘違いしていたんですよね。まさに井の中の蛙で、そんな自信はあっという間に打ち砕かれました(笑)。ただ私がプロ入りした頃のプロ受験者は、誰もが自分が一番で、周りはみんな敵だみたいな感じでギラギラした人が多かったですね。今は時代が変わって、プロ入りしてから強くなろうという人が増えた気はします」
“無冠の帝王”と呼ばれた時期もありました
プロ入り以降20年間、タイトル戦の決勝に数多く進出するも優勝はなかった「A1リーグに上がった最初の年、31歳の時に初めて鳳凰位決定戦に残ったんです。最終日、2位以下に100ポイント差以上つけていて鳳凰位目前というところから前原さん(前原雄大プロ)に抜かされて大逆転を喫し、結局3位にまで落っこちたんです。翌年も決定戦に残ったのですが、その年は瀬戸熊さん(瀬戸熊直樹プロ)が初の鳳凰位になりました」と鳳凰位決定戦では過去四度、辛酸を舐めた。

鳳凰位を獲得するまでどんな練習をされてきたのですか?
自身初のタイトルは、所属団体の頂点となる第39期鳳凰位だった。「瀬戸熊さんからはよくアドバイスをもらっていました。『仕掛ける手が一歩早い気がする』といったように、その時々でポロッと言ってくれるんです。沢崎さん(沢崎誠プロ)からは、A2リーグに上がれなかった時に『打点を作る練習をしたほうがいいよ』とアドバイスを頂き、そうした先輩達からもらったヒントを自分なりに紐解いて、自分のスタイルを磨いてきました。細かいことではなく、あくまでもヒントなんですが、あとは自分で見て盗めという連盟の文化というか、そういう昭和スタイルが好きで、打点を作ることも必死に練習して自分のものにしていきました」
Mリーガーになってから意識に変化はありましたか?
EARTH JETSは石井一馬(最高位戦日本プロ麻雀協会)、逢川恵夢(日本プロ麻雀協会)、三浦智博(日本プロ麻雀連盟)、柴田の4人で編成され、柴田はチーム最年長となる。「チーム内では口数の少ない方なのですが、アースジェッツファンの方は選手の声を聞きたいと思うので、うまく声を届けられるように努力はしています。その一環で奥さん(蒼井ゆりかプロ)と一緒にYouTubeを始めました(笑)」

Mリーグデビュー戦に臨んだ時の心境は?
デビュー戦の対戦相手は内川幸太郎(EX風林火山)、白鳥翔(渋谷ABEMAS)、黒沢咲(TEAM雷電)と3人とも日本プロ麻雀連盟に所属する選手だった。「いい緊張感を保てていたんでベストパフォーマンスが出せるかなと思ったんですが結果は4着。終わってから、自分に都合のいい理由をつけて勝負したり等、焦っていたなという反省はありましたね。負けは実力、勝ちは運。対局相手が誰であっても、負けたことをただツイてなかったと言い訳しているようではダメなんですが」
しかしデビュー戦から勝てない試合が続き、一時は個人40人中38位、チームも最下位まで落ち込んでいた時期もあった。「EARTH JETSの川村芳範監督からはメークドラマがあるから気にしていないと言ってもらったり、大丈夫だからと期待してくれているファンの皆さんの声も届いていたんですが正直不安でした。なので初勝利は、タイトルをひとつ取るのに匹敵するぐらい嬉しかったですね」と初トップは5戦目だった。

ご自身のストロングポイントは?
「当たり前のことが出来ること。そして手役にこだわること。その上でこれまでの経験則から、打牌選択においては7割の人が選ぶであろう打牌だったら、少ない3割のほうを選択できるのが強みです」

対局に臨む上で意識していることは?
「1戦1戦、慎重かつ大胆に自分のパフォーマンスを発揮できるように体調管理は気をつけています。よくアスリートは絶対勝つと何度も自分に言い聞かせて、自己暗示をかける人もいますが、私は言葉には出さずとも、内に秘めた闘志をしっかり持って戦っていきます」
◆取材構成:福山純生(雀聖アワー)
HIRO柴田(ひろ・しばた)プロフィール
1976年2月16日、神奈川県生まれ。A型。日本プロ麻雀連盟、EARTH JETS所属。主な獲得タイトルは第39期鳳凰位、第13・14期麻雀グランプリMAX、第1期達人戦。趣味は料理。本名「柴田弘幸(しばた・ひろゆき)」で活動していたが、オンライン対戦ゲームKONAMI麻雀格闘倶楽部に参加する時、同姓のプロがいたことから改名。好きな役はチートイツとホンイツ。趣味は料理。勝負めしはパスタ
▼Youtube「ひろしばチャンネル」
| 年 | 年齢 | 主な出来事 |
|---|---|---|
| 1976 | 0歳 | 3人兄姉の次男として誕生 |
| 1984 | 9歳 | 小学3年生の時に麻雀を覚える 麻雀漫画を読み始める |
| 1988 | 13歳 | 中学校では卓球部に所属 |
| 1991 | 16歳 | 高校では仲間と麻雀に没頭する |
| 1994 | 19歳 | 麻雀店で働き始める |
| 2001 | 25歳 | 日本プロ麻雀連盟にプロ入り |
| 2008 | 31歳 | 鳳凰位決定戦に初めて進出 |
| 2009 | 32歳 | 日本プロ麻雀連盟道場のスタッフ等、運営業務に携わる |
| 2023 | 46歳 | 第39期鳳凰位、第1期達人戦 優勝 第13期麻雀グランプリMAX 優勝 |
| 2025 | 49歳 | 第14期麻雀グランプリMAX EARTH JETSからドラフト指名を受ける |


























