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多井隆晴「多くの麻雀ファンを喜ばせたい」から始まった未来への準備 Mリーガー列伝(28)

多井隆晴「多くの麻雀ファンを喜ばせたい」から始まった未来への準備 Mリーガー列伝(28)

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 大和証券Mリーグ2018で個人MVPに輝いた渋谷ABEMASの絶対エース・多井隆晴プロは、1995年にプロ入りしてから自身も数えきれない程のタイトルを獲得してきた。

 「最速最強」と謳われるその強さの原点には「本気で麻雀ファンを喜ばせたい」と未来を想定した“ある準備”があった。

バブル景気の終焉を間近で見ていた証券マン

 3人兄弟の末っ子として生まれた多井プロは、小中高と数学が得意だった。「数字が好きだったんで銀行か証券会社。やるなら給料がいい方がいい」と高校卒業後は証券会社に入社した。

 1990年、世の中はまだバブル景気に浮かれていた。「株券がデータ化される前で、山のように積まれた株券を手作業で数えていた時代でした」と多忙な日々に追われていた。

 しかし入社から1年が過ぎた頃、バブルがはじけた。「証券保管振替制度(※)が出来てからは、10時間かかっていた作業が20~30分で出来るようになりました」とあらゆるものが効率化されていく変革を目の当たりにした。

※証券保管振替制度=有価証券の所有権を帳簿上の記帳によって行う制度のこと

「やる時代」から「見る時代」が来ると予見

 麻雀は幼少期に友達とゲームセンターで覚え、高校時代にはすでに大人顔負けの腕前だった。「麻雀には自信があったので、プロってどんだけ強いのかな」と20歳の時にプロの試合を見学しに行った。そこで刺激を受け「頑張ったらプロになれるかな」と23歳の時に日本プロ麻雀連盟のプロテストを受験し合格した。

 しかしプロ入りして愕然とした。「対局料をいっぱいもらえると思っていたら、逆に会費や対局料を支払うことに驚きました」と将棋や囲碁のプロの世界とは異なる現実を知った。

 2年ほど証券マンとして働きながらリーグ戦に参戦していたが、バブル終焉以降の世の中の意識変化を感じ取り「もしかしたらチャンスじゃないか」と麻雀プロに対する認識が変わった。

 「麻雀はやらなきゃつまらないと思われていた時代でしたが、麻雀は見ても楽しめるものなので、テレビで対局観戦を気軽に楽しめる時代がいずれ来る」という未来を予見していた。「いつかそういう時代が来た時に絶対トップになってやる」と麻雀の勉強に真剣に取り組むため、入社8年目、26歳の時に証券会社を退社した。

「麻雀は対人ゲームなんで、相手を知る必要があり、その人を研究しておけば対応出来ます。地球で一番強くなりたかったら、全人類を研究するしかないというのが麻雀なんです」©ABEMA

麻雀プロとして「本気で麻雀ファンを喜ばせたい」

 麻雀プロ1本で生きていく決心を固めてからの多井プロには「本気で麻雀ファンを喜ばせたい」という思いが根底にあった。「この世界で本当に強い奴がいっぱいしゃべるのが面白いと思っているんですよね。弱い奴がしゃべらないのは僕の中では一番つまらない」とファンにわかりやすくアピールできる麻雀プロになるためには、解説者としてのスキルも必要になると考え、退職後はアナウンス学校とボイストレーニングに通い、話し方の勉強も始めた。

「最速最強」の原点は、牌譜研究にあり

 1997年、日本プロ麻雀連盟の新人王戦で優勝。リーグ戦においてもプロ入り3年目にはほぼストレートでA2リーグに昇級し、すべての公式戦の整理牌譜を任されるようになった。

 整理牌譜とは、4人それぞれの打牌記録を最後にまとめる作業で、観戦記等も整理牌譜がないと書けない時代だった。「若手の試合からタイトル戦まで、公式戦のすべての牌譜を見てました。すごい面倒な作業なんですけど、実はものすごく勉強になったんです。牌譜研究なら世界一やっていますね」と6畳の部屋が牌譜の入った段ボールで埋まることもあった。

 多井プロの言う研究とは、自分目線、相手目線、さらに客観的目線という3つの視点を牌譜から読み解くことにある。「1人分の手牌が育っていくのを見れる人はいますけど、4人いっぺんに見れる人はいない。相手が何をやっているのか、完全に当てることはできないけど、読みの精度は上がった」と約10年間にわたる整理牌譜により、あらゆる対局を立体的に見られるようになった。

念願のタイトルだった麻雀最強戦2020で優勝。「もしかしたらMリーグで優勝したら引退しちゃうかもしれないぐらい、ひとつの区切りがついた感がありますね」

「麻雀の勉強ってすごく辛いんです」

 2006年、日本プロ麻雀連盟を退会し、2007年に競技麻雀の新団体「RMU(リアルマージャンユニット)」を立ち上げた。「日本プロ麻雀連盟をやめてからの2~3年は一番きつかった」と新団体設立当初は苦難の船出となった。

 「絶対自分の方が強い。麻雀を打たせてくれよ。世の中に出してくれよ。いつか見てろよといろんな悔しさがあった」と反骨精神をかかえながらも、努力だけは怠らなかった。

 「麻雀の勉強ってすごく辛いんです。休まず続けても、それが身になったかどうかも正解がないからわからない。正解がないものを勉強するってすっごい大変なんです」と証券マンを辞めてからのすべての時間を麻雀に捧げた。

 そして2016年、予見していた時代が到来した。無料のインターネットテレビ局「AbemaTV」がスタートし、麻雀チャンネルもラインナップされ、24時間無料で麻雀対局が見られるようになったのだ。

 多井プロは、麻雀チャンネルのメイン番組だった「藤田晋 invitational RTDリーグ2016」で優勝。2018年には藤田晋監督率いる渋谷ABEMASからドラフト1位指名を受け、個人MVPを獲得と躍動した。

 まさに麻雀ファンを喜ばせるべく、積み上げてきたあらゆる努力を形にして見せたのだ。

YouTubeチャンネル「たかちゃんねる」でもマシンガントークを披露。「藤田晋さんがいなかったら、雀力が今ほどあったかどうかもわからないし、Mリーグもないし、YouTubeもやってませんね」©たかちゃんねる

麻雀プロになったことを知らない母

 Mリーグの試合後は、勝っても負けても母親とすき焼きを食べるのが恒例になっている。「母親は証券マンでいてくれとずっと言っていたんで、麻雀プロになったと知ったら心配しちゃうんで。ちゃんと稼げてるよと、稼げていない時から嘘をついていたんで、言わないまま今日まで来ちゃいましたね」と麻雀プロを生業としていることは、まだ伝えられてないそうだ。 

 麻雀プロとして世に出るため。麻雀プロとしてファンを喜ばせるため。1日たりとも怠らなかった準備が今、ひとつひとつ実を結び始めている。

多井隆晴(おおい・たかはる)プロフィール

生年月日:1972年3月17日
出身地:東京都葛飾区
血液型:B型
キャッチフレーズ:最速最強
勝負めし:肉
著書:「多井熱」(竹書房)、「全速力」(サイゾー)、「必勝!麻雀実戦対局問題集」(竹書房)他
主な獲得タイトル:第11期新人王戦、第1・9回日本オープン、第31期王位、RTD2016、第1・3・6・8・11期令昭位、麻雀最強戦2020他多数

多井隆晴 年表
主な出来事
1972 1歳 東京都葛飾区で3人兄弟の末っ子として生まれる。幼少期に姉が他界
1978 6歳

友達とゲームセンターで麻雀を覚え、高校時代に夢中になる

1990 18歳 証券会社に入社
1995 23歳 日本プロ麻雀連盟第12期生としてプロ入り
1997 25歳 第11期新人王戦
2002 30歳 第1回日本オープン
2005 33歳 第31期王位
2006 34歳 日本プロ麻雀連盟を退会
2007 35歳 「RMU(リアル・マージャン・ユニット)」を創設し代表となる
2009 37歳 第1期令昭位。以降第3・6・8・11期も獲得
2011 38歳 第9回日本オープン
2016 43歳 第1回麻雀日本シリーズ、藤田晋 invitational RTD2016
2017 44歳 第2回麻雀日本シリーズ
2018 45歳 大和証券Mリーグ2018MVP
2020 48歳 YouTubeチャンネル「たかちゃんねる」開設。麻雀最強戦2020優勝

 

◎写真:佐田静香(麻雀ウォッチ) 、インタビュー構成:福山純生(雀聖アワー)

 

この記事のライター

福山純生 (雀聖アワー)
雀聖アワー代表。
マージャン普及を目的とした様々な事業を展開。
好きな手役は門前混一色七対子。
雀聖アワーオフィシャルサイト:http://8141.info/jansei/

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