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森内俊之 ・土田浩翔 特別対談 第2回「プロの戦術とは!?」(麻雀界第14号より転載)

森内俊之 ・土田浩翔 特別対談 第2回「プロの戦術とは!?」(麻雀界第14号より転載)
森内俊之 ・土田浩翔 特別対談
2016年02月03日 21:00

- 以下「麻雀界 第14号」(2012年2月10日発行)より転載 -

プロの戦術とは!?

──技術的なところを質問させていただきたいのですが、まず名人は、対局の際の初手をどの時点で考えておられるのでしょうか。

 先手、後手は朝の振り駒で決まることが多いので、それまでに両方考えて行きますが、まっさらな状態で行くこともありますし、その時々で違います。 
 

──数ある戦法の中で、今日はこれで行こうというのは、どのようにして決めるのですか。

森内俊之

 総合的に判断して決めますが、目の前の対局だけではなく、長期的に成績をあげられる戦法を考えるようにしています。
 

──序盤の戦い方は、棋譜も山ほど残っていてみんなが研究をし、ある程度までは同じ戦い方になるような状況だと思いますが、そうであっても常に何か変化を求めているのでしょうか。

森内俊之

 何百もある選択肢の中から今日はこれで行こうと決めますので、相手もそれを予測することは難しいですし、自分もその時になってみないとどれで行くかは決められない場合もあります。
 
 途中で相手が違う手を指してくれば、そこでまた状況が変わってきますので、その場その場で少しずつ対応していくという感じです。思い通りにずっと進むときもありますが、相手も予想している展開ですので、それはそれで怖いですし、早めに定石を外れれば、そこから構想力の勝負ということで、また違った戦いになってくるかと思います。

──お互いにノータイムで指しあう、一見問題のないような局面であっても、少し不安を感じたりすることはありますか。

森内俊之

 お互いに速いテンポで進んでいくときというのは、どちらかが手を準備していることが多いので、そこからが本当の勝負だと思います。それまでは前例をたどるという感じなので、新しい手が出てからが楽しみという面もあります。

──麻雀には、とくに戦術というものがないかと思うのですが、今日はこういう戦い方をしようということはありますか。

土田浩翔

 僕の場合は、その日の運気を東1局・2局目といったなるべく早い段階に感じて序盤を変えていきます。
 
 第1・2・3打あたりでだいたい勝負がつくのが麻雀なので、序盤が大事ですね。というのは、最初は相手からの攻撃がないので自由に打てる時間帯で、ここは自分の意志で作っていけるところだからです。 麻雀で一番大事なのは、いらない牌を捨てる順番なんですよ。それを自分に与えられた運やツキの状態にあわせて変えていかなくてはいけない。
 
 例えば、といういらない牌があったとすると、普段なら全部いらない牌なのでの順に捨てるけれども、調子が落ちてきたらの順に捨てていかないと、実は中盤以降に対応できなくなるというゲーム性の問題があります。  
  
 数牌と字牌の切り方でも、普段なら1・9牌を整理して、次に字牌を整理し、その次に2・8牌というように、フォームが決まっている人が多いと思うんですよ。その決まっているフォームは、基本的にタンヤオ・ピンフという両面系にあわせて決めているわけですが、調子が落ちてくるとタンヤオ・ピンフ系の手にならないので、違う方向の手に向かわなければならないときに、1・9・字牌が役に立つわけです。
 
 例えば中盤以降に、がくっついてきたり、がくっついてきたりするツモが来るであろうという想定をしながら序盤を決めていかなければいけないので、「いつもどおりには切れないぞ」というように自分で切り替えて、そこをいじらないで普段なら必要とされそうなエリアの牌たちをいじらないといけないわけです、第1・2打は。
 
 そこに、ほとんどいませんが序盤の研究ができている人と、どんな状態でもいつもどおりいらない牌を捨てていく人の差が出てきます。これではプロ失格です。愛好者はそれでいいのですが、プロなら中盤以降に入ってくる牌を予測して、埋まらない所を最初から外していかなくてはいけません。
 
 例えば、がポツンとあったとします。普通はそこにを持ってきて両面形が作れればいいと思って中盤まで残すわけです。ところが、とも引かないとわかっていれば、は第1打で捨てても問題ないわけです。
 
 そこがプロとアマの差になってこないとおかしいと思っているので、序盤は自分が持っているエネルギーを0から100くらいに考え、まあ70以上だったら普通に切っていこうか、60から70だったらこの辺から切る、50から60、40から50、30から40ならこうというように、第1・2・3打を変えていくことが大事だと思います。

──東1・2局というのは、それを測りながらということでしょうか。

土田浩翔

 いつも思うのは、今日の第1戦目で部屋に入ってきたとき、ものすごく強いエネルギーで来てるんじゃないかという想定でいますよね。そうでないと最高の手を逃してしまうので、狙っていくのですが、当然そういう日は少ないので、違うんだなとわかる。どのくらい違うのかを東1・2局の早い段階で測りたいわけです。 

森内俊之

 その日の感じを掴むのは、いつも東1・2局くらいですか。
 

土田浩翔

 そうですね。遅くとも東3局くらいです。普通は座った段階で掴めないとおかしいんですけどね。3人を相手にして、フィット感で調子の良し悪しがわかるというのが普通です。  座ったときの、今日はしっくりいってないなという違和感が危険信号ですね。配牌とツモを見たら、ああこのくらいかとなる。そういうときは東3局以降、エネルギーにあわせて切り替えていきます。

──たとえば、東1局の6巡目くらいにいきなり18000点を放銃して、ああ今日はだめだなあということもあるわけですか。

土田浩翔

 いやいや、そんなことはありません。18000点を放銃するとかなりエネルギーは低いと感じますが、20くらいしかないエネルギーを70くらいに上げるのが技術だと思っていて、体勢を立て直す修正力が必要だと思います。

精神的な調子を整える

──将棋の場合はその辺が違っていて、一手逃すとそれで終わりという感じがしますが。

森内俊之

 将棋の場合も朝、対局室に入っていくと、そこは特別対局室で4人入れるのですが、誰が一番エネルギーが高いかをなんとなく感じることはあります。
 

土田浩翔

 それはやはり、感じられないと一流ではないですよね。
 

森内俊之

 もちろん、エネルギーが高いからといって勝つわけではないですが…。
 

──過去の対局で調子が悪いなあと感じたときに、戦術の選び方にも影響はありましたか。

森内俊之

 やはり、ありますね。自分の体調や精神的な調子を考えて、速い展開に持っていったほうがいいのか、それともじっくり構えたほうがいいのか、そういうことも加味して対局するようにしています。
 

土田浩翔

 精神的な調子って大事ですよね。
 

──局面が進んで、本当に厳しい選択が突きつけられたとき、じっくり考えられればいいのでしょうが、どこかで決断しなければならない場合、何を一番優先して決めるのでしょうか。

森内俊之

 麻雀の場合は相手の方が待っているので、すぐに打牌しないといけないと思います。しかし将棋の場合は、もちろん持ち時間が短い棋戦もありますが、長い棋戦もあって、そういう場合は一手に何時間も考えることができます。
 
 有利な状況で答えがすぐに出る場合には盤面に集中してすぐに指しますが、よくわからなかったり形勢が不利な場合は、自分の感覚にヒットするかどうかを考え、その上で指したい手を指して失敗してもあまり後悔はないので、自分が納得いくかどうかを一番に考えるようにしています。

──それでは、読みでは攻めたほうが有利だけれでも、直感的には受けたほうがいいのではないかというジレンマのようなものはありますか。

土田浩翔

 その局面で有利になるという手が一つしかなければ、当然それはやるべきで、そのまま間違わなければ勝てますから。ミスを前提にした組み立てというのは基本的にしないようにしています。
 

──麻雀でも、押し引きを判断する局面があるかと思いますが。

土田浩翔

 麻雀の場合は、基本的に迷ったら引いたほうがいいです。迷うということは優勢ではないので。優勢でその局を制するときは、だいたいスッキリした感じで、危ない牌でもスッスッと誰でも切れるわけです。 そうではなくて、「ちょっと待てよ」と迷っているわけですから、それ自体が黄色信号で、ほとんどの場合、受けたほうが傷は浅いし、その後の心の問題に影響してきます。
 
 自分の心の動きが弱まらないように打っていかなくてはいけないので、やっぱり攻めなきゃよかったかという反省だけは一番よくない。中盤で手が止まるようなことがあったら、自分はほとんど受けの選択に入ると思います。手が止まるということは体が止まるので、やめたほうがいいと思いますね。

──3面チャン待ちでヤマにもいそうだし、絶対にリーチなんだけど、なんかリーチしないほうがいいんじゃないかと一瞬思ったりすることがありますよね。

土田浩翔

 嫌な予感というやつですよね。麻雀は手数が多いゲームなので、流局すると全員で70手かかります。その間にいろいろなことが自分の脳の中で動いていくわけで、即断・即決しないかぎり解決しないゲームなんですね。考えるのは、あるいは勉強するのはと言い換えてもいいのですが、麻雀をしていないときに麻雀のことは思考するべきだと思っているわけです。
 
 麻雀の最中に思考すると、ろくなことはありません。卓から離れて自分で勉強しているときに思考を深めたほうがよくて、麻雀をやっているときに思考に入っても、ろくな答えは出てきません。思考は麻雀する前に終えておいて、あとは感性。感性というのは思考の積み重ねがないと良く発揮できないので、考えておいたことをパッと思い出して打つ。麻雀の最中にあまり思考を深めると、それができません。
 
 打牌に1秒もかかっている人は良い選択ができないということなので、極力、ツモったらすぐに捨てるということが大事です。あとで間違ったなと思ってもいいから、そうしないと良い答えが瞬間的に出てこないでしょう。
 
 麻雀は、目先の確率論ではまったく解決できないゲームなので、牌効率がどうしたというような話をしている人は、絵合わせゲームにはいいけれど、麻雀にはなっていないということです。

(次号へつづく)

目次

プロフィール

土田浩翔
1959年生まれ、大阪府出身。
最高位戦日本プロ麻雀協会所属。
鳳凰位、王位、最強位、十段位、プログランプリなど獲得タイトル多数。
独自の戦法土田システムを操り、「トイツの貴公子」の異名を取る。

森内俊之
1970年生まれ、神奈川県出身。
日本将棋連盟第69期名人。
名人位8期在位のほか、竜王、棋王などのタイトルも獲得。
「鋼鉄の受け」と呼ばれる強靱な受けに絶対の自信を持ち、順位戦では驚異的な勝率を誇る。

出展:本ページは(株)日本アミューズメントサービス様からの転載許可に基づいて掲載しております

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