戦術本『麻雀の2択』のレビューを始めさせていただきました。こちらでは本書で取り上げられている、「データの泉」を元に思うところを徒然なるままに書かせていただきます。データの具体的な数値については、是非とも本書を購入のうえ御確認下さい。
「データの泉」42p
赤有りルールだとリーチの半分くらいは満貫以上になるというイメージを持っていた方も多いのではないでしょうか。今回はあくまで振り込んだ場合の話ですから、メンゼンツモの1翻がつきません。逆に降りてツモられた場合は必ずメンゼンツモの1翻がつきます。
『科学する麻雀』は赤無し、昨今の戦術書は赤有りルールを想定して書かれているにもかかわらず、押し引き基準が押し寄り(カンチャンリーチドラ1程度でも十分追い掛けられる)になっているのはこのためです。以前はツモアガリも含めたリーチの平均打点で判断していたので、放銃打点が実際より高いものになっていました。
また、リーチの待ちがリャンメン相当である確率は60%強ですが、リーチを受けた時、打ち手の多くは待ちがリャンメンであることを前提に判断しがちです。このこともデータに基づく押し引き判断が押し寄りに感じる理由と言えます。
ただし、リーチの打点も良形率もあくまで平均値の話であり、個別の局面においてそのまま適用できるとは限らないことにも注意が必要です。特にオーラスともなれば誰しも順位を意識した手作り、リーチ判断をします。
昨今は差し込みという選択も、よく見かけるようになったように思われます。以前は結構な実力者であっても発想自体が無かったという人もいれば、発想はあるけれども、わざと差し込むとその後の展開が悪くなるのではないかというオカルト的理由や、同卓者に恨まれたくないという心理的な理由で差し込みを避ける人も結構見受けられました。
本書で触れられているように、子の満貫までなら振ってもトップで、親に連荘される可能性があるというのであれば、差し込みにいけるようなら大概差し込んだ方がよくなります。天鳳のような完全順位戦ならなおさらです。
しかし、オーラス満貫までなら振り込んでも大丈夫といっても、リーチ者がこちらから満貫アガってもラスのままというのであれば、跳満以上の手になっている可能性はずっと高いでしょう。仮に跳満に届かない手であっても、今度はこちらが当たり牌を切ると見逃してフリテンになってしまい、別の他家を手助けすることになってしまいます。
従来であれば「差し込み」という発想が思い浮かぶ程度の実力者であれば間違えなかったであろう点数状況関連の問題を、うろ覚えからミスしてしまう打ち手も少なからず見受けられるようになりました。問題はデータ研究が始まる以前の戦術書であれば、著者にとっては書くまでもない常識的な話で、データ研究に基づく戦術書では管轄外になりがちな分野。昨今の戦術書で新しく麻雀を始めた人にとっては盲点になりやすい話なので、今後はこの手のギャップを埋め合わせる戦術書が求められるようになるかもしれません。