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ネマタの戦術本レビュー第169回「フリー麻雀で食う 上級雀ゴロゼミ 著:雀ゴロK その19」

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三限目 講座1

 中盤で他家1人からリーチが入っていてこちらもメンゼンテンパイ、切る牌は安全牌として追いかけリーチを打つものとします。この時自分がリャンメンテンパイならアガリ率:放縦率の比は約3:1、カンチャンなら約1.5:1となります。

 カンチャンであっても放銃率よりアガリ率が高いのが意外に思われた方もいるかもしれませんが、仮に先行リーチが必ずリャンメンテンパイ、脇の2人からは完全に降りてアガリ牌は絶対に切らないという仮定でも、アガリのケースは、「自分が自分のアガリ牌をツモる」「相手が自分のアガリ牌をツモる」の2通りあるのに対して、放銃のケースは、「自分が相手のアガリ牌をツモる」の1通りだけですから、待ちが同じリャンメンならアガリ率:放銃率の比は2:1、待ちが半分のカンチャンであっても1:1です。

 1:1だとしても、相手と同程度の打点があれば、少なくとも局収支のうえでは押し有利になります。子のリーチの平均点は赤有りの場合約6000点と言われますが、放銃した時はツモの1翻がつかないので、一発以外で子のリーチに放銃した場合の失点は平均で約5200点になります。このことから良形テンパイ、あるいは悪形でも3翻以上あるなら、特に条件がなければほぼ押してよいといってよいでしょう。

 しかも、「押した時より降りた時の方がツモられて失点するケースは多い」「降りても安牌が無くなって放銃する可能性がある」「流局ノーテンによる支出がある」という降り側に不利な要素もあるので、実際は、安手悪形テンパイでもベタ降りするよりは押した方がよいことも多々あります。祝儀の支出は放銃した場合もツモられた場合も一緒なので、雀荘ルールではあればなおのことその傾向が増えます。
 
 一方、中盤でリャンメン×2程度の1シャンテンでリーチに押し続ける(テンパイしたらリーチ)とすると、アガリ率:放銃率は約1:1.4。しかもこれは危険牌を引く前の段階での話なので、危険牌を切って1シャンテン維持であればこれより分が悪くなります。

 アガリ率より放銃率の方が高いとなると、今回のようにアガれたとしても安手の場合はほぼ降りた方がよくなります。テンパイと1シャンテンには大きな隔たりがあると言われるのがよく分かります。(ちなみに、中盤で先制なら、アガリ率:放銃率の比は、リャンメンテンパイなら約6:1、カンチャンなら約3.5:1となるので、テンパイでも先制であることがいかに重要かも分かります。)

 よって、テンパイなら押し、ノーテンなら降りが基本になりますが、これはあくまで大雑把な基準です。基準通りに打てばいい局面は基準を押さえていれば考えるまでもなく正解を選べるのですから、実戦ではむしろ、ノーテンでも押すケース、あるいはテンパイでも押さないケースでの対応に力を入れることが肝心であるとも言えます。

 ノーテンから押すケース、あるいはテンパイからでも押さないケースにどのような例があるか、講座の内容と合わせて次回以降確認していきましょう。

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この記事のライター

ネマタ
浄土真宗本願寺派の僧侶。麻雀戦術サイト「現代麻雀技術論」の著者。
同サイトは日本麻雀ブログ大賞2009で1位に。
1984年佐賀県生まれ。
東京大学文学部中退。

著書:「勝つための現代麻雀技術論」「もっと勝つための現代麻雀技術論 実戦編

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