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在野の達人 ーーー「東大を出たけれど」須田良規

在野の達人 ーーー「東大を出たけれど」須田良規

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「東大を出たけれど」とは
  • 近代麻雀で連載されていた、須田良規プロ(日本プロ麻雀協会)の著作全108話。麻雀ウォッチにて8話分掲載。
  • 作品の発表経緯はインタビューをご覧下さい。

 何年も前の話だが、ある熟練の裏メンがいた。とにかく逸話を挙げればきりがないであろう彼は、私の知りうる限り最強の打ち手だったと思う。

 私は当時新米で初心者同然であったため、彼の凄さを断片的にしか理解しておらず、記憶にあるのは、彼の天才的な読みの力とその魔法のような打ち筋だけなのが悔やまれる。せめてもう少し自分自身経験を積んだ後に彼の麻雀に出会っていれば、何かしらもっと得るものはあっただろう。

 狭い店なので、面子はいつも気心の知れた連中ばかりだった。そのため彼は、後ろ見の私によく麻雀を指南してくれたものだ。
 その日も彼に付いて見ていると、突然私に小声でいたずらっぽく言った。
「対面の人は、このへんのイーペーコーがあるよ」
 自分の手牌のあたりを指差している。
 何を言っているのかまず理解できない。だいたい、そういうことが読めるものだという認識自体が無い。不思議に思っていると、数巡後に件の対面が引き和了る。
「ツモ。チートイ」
 なんだイーペーコーじゃないんだ、と一瞬がっかりする私。ところが倒された手牌は

 こんなことはほんの一例に過ぎない。
「対面の指し馬相手から一発で和了ってみせようか」
と、わざわざ多面張から中張牌単騎に受け変えて牌を横に置き、宣言通りに討ち取ったこともある。
 リーチ者に対し、
「うーん・・・入り目!」
と言って相手が暗刻にして張った牌を切り飛ばして和了り切ったこともある。
 当時は彼に対し、憧れを通り越して、畏怖の念さえ抱いたものだ。
 
 しかし、私が彼の天才的な打ち回しに触れられた期間はごくわずかであった。
 私がその店に勤めだして数ヶ月たった頃、自宅にいた彼は脳内出血で倒れ、病院に担ぎ込まれた。一命は取り留めたものの、左脳と右半身に後遺症が残ってしまった。

 現在は私が店を移ってしまったため滅多に会うことはないが、今でも彼は残った左手を使って麻雀を打っている。それでも相当に強いと聞くが、昔ほどの天才的な読みの能力は失われてしまったらしい。
 もともと彼は自分の読みの能力について多くを語るような人間ではなかったし、たとえ当時の私が教わったとしても半分も理解できなかっただろう。それでも今、多少は身についた雀力をもってその秘密を解明しようと求めたところで、記憶に埋もれていく在りし日の天才雀士の、神がかった打ち筋を探る術はもうないのである。
 たまに牌を交えることはあるが、やはり敵わないと思う。彼が持つハンデと、私が積んだ経験というアドバンテージくらいでは、到底埋めようがない歴然たる差がもともとあるのだ。当時の強さの程は、推して知るべしである。

 麻雀が強いとか巧いとか言われる人間は数多くいても、現実にあれほどの読みが出来る人間には、この先も市井で出会うことはないと思う。もちろん一生自分は追いつけないだろうし、彼の麻雀の領域の影も踏めぬまま、これからもただ漫然と打ち続けるのだろう。
 上達を目指して麻雀を打てば打つほど逆にそう思うようになる。皮肉なものだ。

全108話公開 須田良規プロのnoteはコチラ

 

プロフィール

須田良規(すだ よしき、1975年8月6日 - )島根県出身。東京大学工学部卒業。日本プロ麻雀協会(1期後期入会)A1リーグ所属。
代表作『東大を出たけれど』の原作を自身のnoteで108話公開。

この記事のライター

麻雀ウォッチ編集部
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