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ネマタの戦術本レビュー第199回「進化するデジタル麻雀 著:石橋伸洋 その6」

ネマタの戦術本レビュー第199回「進化するデジタル麻雀 著:石橋伸洋 その6」

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例題11

 この牌姿なら一昔前でも、ドラドラあるから三色は見ずに手広く受ける打が推奨されることが多かったと思いますが、最近は鳴きのメリットも意識されることが多くなったため、一周回って打とする人も見受けられるようになりました。

 しかし、鳴き三色テンパイは30符3翻止まりのうえに悪形テンパイ。打としてツモの40符3翻良形リーチの方が明確によい手です。メンゼンで三色にするのは先にを引いた時のみ。ツモのタンピン変化があるとはいえ、打なら引きで打とする変化があるので変化面でも有利とは言えません。「よりよい受け入れ優先(鳴き三色カンチャン<リャンメンリーチ)」「特定の牌()を引いたケースより引かなかったケースを優先」という考え方は、「もっと勝つための現代麻雀技術論」第12回 でも取り上げました。

 ドラ無しであれば打が有力ですが、今度は鳴き三色というよりは、ツモでもカンの三色リーチを打つほどメンゼン三色の打点的メリットが大きいため。一方ドラドラであっても、アガリまで遠い手で三色の面子候補が揃っているのであれば三色は残しますが、この場合は鳴き三色に言及しなくても、「よりよい受け入れ優先」で三色を残すことは説明できます。

 鳴きがきくことは確かにメリットではありますが、メンゼン手の場合は、鳴きがきくメリットを打牌選択のうえで考慮する必要は実はありません。特にメンゼンで1シャンテンの場合は、鳴きよりもメンゼンでテンパイした場合を優先して比較しなければ、鳴きを過大評価して選択ミスをしがちになるので注意が必要です。

例題12

 面子候補オーバーに受けても、リャンメンが面子になった場合に余り牌が出ないので面子候補オーバーに受けるケースについては、「もっと勝つための現代麻雀技術論」第54回を御参照下さい。今回はテンパイ時に必ずリャンメンテンパイに受けられるので、単純によりよい1シャンテンになりやすい面子候補十分に受けるのが有利です。

 をポンすると守備力が落ちるのでスルーするが、後付けの仕掛けなら鳴くという選択については、そこまで有力なケースは多くないと個人的には思います。何故なら、役牌からポンできた方がアガリやすく、アガリ率の高さで失点のリスクを押さえられますし、役牌からポンしてもアガリにかなり遠い手の場合は、他から鳴いても手が進まなければ役牌が出てもスルーすることになるので、結局アガリに結びつくことが少なく、こちらの仕掛けに役牌を絞る程度に手牌が悪い他家の手を止めてしまうことで、高い手が狙える手が入っている別の他家のアガリ率を上げてしまう展開も考えられるためです。

 ただし、今回は誰に満貫をツモられてもまだトップを維持できる点数状況。役牌のみのリャンメンテンパイでも、他家からリーチが入った場合に、「安牌があるなら降りた方がよい」ことが多くなります。それなら、先制でテンパイできた場合はテンパイに取るとして、安牌の無い1シャンテンの段階で他家からリーチが入る展開だけは避けるために、はスルーして他からは鳴くという選択も十分考えられます。今回くらいの手ならも鳴いてそうですが、局面に応じて考慮には入れるようにしたいですね。

本記事に関するご紹介

前著「黒いデジタル麻雀」で概念的に説明された戦術論を具体的な局面に落とし込んで解説しています。41の例題が収録されていますが、それらは決して単なる何切る問題ではなく、何を切り、何を考えておくべきかを問うています。ハイレベルになった現代麻雀において勝ち続けるにはここまで深く考えなければいけないのかと驚かされます。
 
石橋 伸洋 (著)
発売日:2016年10月26日
定価:本体1,490円+税
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この記事のライター

ネマタ
浄土真宗本願寺派の僧侶。麻雀戦術サイト「現代麻雀技術論」の著者。
同サイトは日本麻雀ブログ大賞2009で1位に。
1984年佐賀県生まれ。
東京大学文学部中退。

著書:「勝つための現代麻雀技術論」「もっと勝つための現代麻雀技術論 実戦編

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