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ネマタの戦術本レビュー第210回「進化するデジタル麻雀 著:石橋伸洋 その17」

ネマタの戦術本レビュー第210回「進化するデジタル麻雀 著:石橋伸洋 その17」

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例題33

 ベタ降りで現物を切る際は、将来別の他家がテンパイした場合にも通る共通安牌は後回しにするということはよく言われますが、本書で取り上げられているような比較についてはあまり言及されてこなかったように思われます。失点を最小限に抑えるという観点からは、現物同士でもノーチャンスが出来た時に通せる枚数が増えるように手牌に多く持っている色から、またノーチャンスが出来やすいように多く見えている牌から切るのが有力になります。

 逆に、安牌は十分にあるので降り切れて、なおかつ横移動が起きると都合がよい場合、あるいは少なからず手詰まりのリスクが残るとはいえ、それでもできれば横移動に期待したい場合は、場に多く見えている牌は後回しにして、なるべく情報を与えないようにして降ります。ベタ降り同士の比較でも順番があります。特に自分が4枚目の牌を切ることでノーチャンスができる場合は、他家に情報を与えて降りやすくすることが得になるのかどうかを検討したうえで切るようにしましょう。

例題34

 頭頭なら受けがあるのでから切られるはずで、頭頭なら安全度からと切った後でが切られることから、は面子の一部、すなわちの面子が完成した後のスライドか空切りと分かります。よってはほぼ通り、はスジとはいえペンチャン、カンチャンで当たる可能性は否定できないと言えます。

 切り間違いや読みを外す狙いで頭頭からを切る例も無くはないですが、その場合の放銃率は(他家がこの形からを切る確率)×(待ちが残る確率)。一方の待ちがリャンメンとして待ちが残る確率は50%としても、から切る確率が10%として5%(カンチャンなら約3.3%)。リャンメン以外は否定できないよりはそれでも通りそうです。

 赤受けを残すというのは手作りの知識に疎い打ち手であっても自然と出来ることであり、この手の読みを外す手順は赤5切りの36待ちよりもマイナーな部類と思われるので、相手の打ち筋は特に分かっているのでないなら今回は切りがよいと判断します。

例題35

 が当たるとすればのリャンメンを落としてが当たるとすれば二度受けのを残していることになるので不自然。「手出しのリャンメン落としはそれよりよいリャンメン待ち」については、手役狙い、単騎待ち、ダブった形をカンチャンやペンチャンより嫌った、スライドといった例外が数多くあるので、実は一般論として成立しているとは言い難いのですが、今回のようにその手のケースは読みによって否定できることも多いです。

 今回はドラ役牌がポンされているので赤受けを残したケースも考えにくく、が本線と読めますが、読めたところでを切るのはなかなか勇気が要りますね。読みの知識を身につけるだけでなく、一見型破りな選択でも合理的と判断したのであれば実戦で自信を持って選べるだけの胆力を兼ね備えた打ち手を目指したいものです。

本記事に関するご紹介

前著「黒いデジタル麻雀」で概念的に説明された戦術論を具体的な局面に落とし込んで解説しています。41の例題が収録されていますが、それらは決して単なる何切る問題ではなく、何を切り、何を考えておくべきかを問うています。ハイレベルになった現代麻雀において勝ち続けるにはここまで深く考えなければいけないのかと驚かされます。
 
石橋 伸洋 (著)
発売日:2016年10月26日
定価:本体1,490円+税
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この記事のライター

ネマタ
浄土真宗本願寺派の僧侶。麻雀戦術サイト「現代麻雀技術論」の著者。
同サイトは日本麻雀ブログ大賞2009で1位に。
1984年佐賀県生まれ。
東京大学文学部中退。

著書:「勝つための現代麻雀技術論」「もっと勝つための現代麻雀技術論 実戦編

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