第6章 危険を察知せよ!読みの技術論
白丸と黒丸の喩えはいつかコラムで掲載しようとしていたのですが本書に先を越されてしまいました。しかし、「読み」に関する立ち位置としては本書と異なるところもありますので敢えて掲載させていただきます。
本書では白球が88、黒球が12ですが、計算しやすいように白80黒20としましょう。今から100個の球を白と黒に識別しますが、色を見ることはできません。実は色以外で識別することも不可能ではないそうですが、今のあなたには全く分かりません。ただし、白80黒20であるという情報だけは分かっています。色が合っていれば1点、間違っていれば0点で100点満点とした時、得点期待値を最も高くするためにはどうすればよいでしょうか。
正解は「100個とも白と答える」です。こうすれば必ず80点を取ることができます。「適当に80個を白、20個を黒と答える」では、100点を取れる可能性も0ではありませんが、期待値は68点にまで落ちてしまいます。
ここに、黒球には特徴があって、自分は黒球を識別できる自信があるという人が現れました。確かに黒球だった時は必ず黒と答えたので識別能力は確かなものと思われましたが、この人は白80黒20という肝心な情報を知りませんでした。この人は50個を白、50個を黒と答えてしまったので70点しか取れず、全部白と答えたあなたより成績が悪くなってしまいました。
白80黒20なら、20しかない黒を当てにいった方が、いかにも「読み」が上手いという印象を与えます。「読み」の上手さが高く評価されるあまり「黒」を当てにいこうとし過ぎて、「白」までも「黒」だと読み誤ってしまったことに、従来の戦術論の問題点があったのではないでしょうか。
麻雀を1から覚えて上達を目指すのであれば、まずはデータに基づいた打牌基準を確立し、「読み」については一旦排除した方がよいでしょう。この段階で下手に読もうとすれば、「全部白」と答えるよりも戦績が悪くなりかねません。
しかし、「全部白」と答えるだけでは80点しか取れません。更に上達を目指すのであれば「黒」を当てにいく読みが必要になります。
私は本書ほど、「ふだんなかなか起きないことは、読んでも当てられない」とは考えません。従来の戦術書の問題点は、「何となく黒っぽい傾向があるので黒かもしれない」という類の読みであり、「黒と分かるだけの極めて特徴的な情報があるので黒」という類の読みについては、現代の視点からみても概ね正しいものです。「ふだんなかなか起きないことでも、現にふだんなかなか起きない特徴が河などの公開情報に表れているのであれば、読むことは可能」と言えるのではないでしょうか。もちろん、こういった読みの技術が、戦績に影響を与えにくい瑣末なものであることは否定しません。しかし、「白」を読む精度を上げるということは、裏を返せば「黒」を読む精度を上げることにもつながるはずです。
本書を繰り返し読んで打牌基準を確立することに専念していた頃の自分は、「黒」を読もうとしても仕方ないというスタンスで打っていましたが、強者との牌譜検討の中で、合理的に「黒」を読むことができるケースを指摘された時は驚いたものです。今ではそういったケースを実戦で見つけては喜んでいる程度で技術として身に付いているとは言い難いですが、いつしか「黒」を読むことすらも当たり前のこととして淡々と続けられる打ち手になりたいものです。
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