どんなゲームやスポーツでも、試合が終わる条件が決まっています。
例えばサッカーは、一定の時間が経つと審判が笛を吹きます。野球は、延長戦がなければ、9回までですね。
麻雀は、トビ終了やコールド終了、時間制限がなければ、南4局までです。
野球では、序盤、中盤、終盤で戦い方がかわります。
序盤はほぼ先発メンバーのまま戦い、中盤は、投手が交代したり、代打が出たりします。終盤、リードしているチームは、中継ぎ投手や抑え投手で逃げ切りを図ります。残りイニング数に応じて作戦が変わります。
麻雀も、残りの局数が大事です。
後半戦の南場に入ると、次のように考えます。
●リードしていたら、早く局を進め、残り局数を減らすと有利。他家の親を流せるなら、安い手も積極的にアガる。
●不利な状況なら、反撃のチャンスを得るため、残り局数を減らさないことが大切。なるべく高い手を狙う。
2つの場面で考えてみましょう。
●シーン1
北家で迎えた南2局。自分は50000点持ちのトップ目で、他の3人を大きくリードしています。
優位を保ったまま早く終わらせたいですね。自分があがれば、安い手であっても、他家の親を流せて残り局数を減らせます。自分が加点するより、局を進めることが優先です。テンパイして役があれば、リーチをしないことも増えます。一般には、リーチをしない方が、他家から出てアガりやすいためです。
親以外の他家が、高くない手でアガろうとしている場合、その人に鳴かせてアシストしたり、振り込んだりして局を進めることもあります。わざと他家に振り込むことを「差し込み」といいます。
●シーン2
北家で迎えた南2局。自分は10000点持ちのラス目で、他の3人に大きく引き離されています。
シーン1と逆に、局を進めず、なるべく長引かせることが重要です。
その間に、高い手が来るのを待って、反撃のチャンスをうかがうのです。
安い手でアガって局を進めると、戦況にほとんど影響がないまま、残り局数が減ってしまいます。
高い手になりそうになければ、親に連荘してもらうことも考えます。親が欲しそうな牌を鳴かせることもあります。対局が長引けば、他家が、別の他家の高い手に振り込んで失点し、自分がラス目から脱出できるチャンスも出てきます。
「麻雀の匠」で、具体例をみてみましょう。
この動画では、朝倉康心プロが、南1局を42300点のトップ目で迎えます。有利な立場なので、冒頭「高い手をあがるよりも自然にあがりにいく」と話しています。打点より、局を消化することに価値があるからです。
一方、こちらは同じ南1局、小林剛プロが12500点のラス目で迎えた場面です。最初に「南場でこの点差だと、さすがにいつもよりちょっと打点重視になりますね」と構想を話しています。安い手で局を進めてしまうと、不利になるためです。
東場と南場で意識が変わるのは、第1回で触れたように、ウマ(順位点)やオカがあるためです。順位が1つ変わると得点が大きく変わるので、試合終了に近づくほど、素点よりも順位の価値が高くなります。トップ目であれば逆転されないことが大事ですし、ラス目なら何とか3着以上にあがることが重要です。
残り局数と点数状況をみながら進行を考えることは、戦術書などで「大局観」「ゲーム回し」「試合運び」などの言葉で解説されていますので、注目してみてください。
もちろん、一局ごと、一打ごとに有利不利を考えるミクロな視点が基本なのですが、半荘全体をどう運営したいのか、マクロな視点もあわせ持つと、麻雀がより面白く感じられ、成績もあがっていくと思います。
次回は、今回の内容を踏まえて「他の3人の気持ちを想像しよう」をテーマにお届けします。