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卓上でヨシ!麻雀暗記ノート 第22回 牌効率(その5) 弱い部分をフォローしよう

卓上でヨシ!麻雀暗記ノート 第22回 牌効率(その5) 弱い部分をフォローしよう

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6月30日に出た、「飯田正人杯 最高位戦Classic」というタイトル戦の予選で、不思議なことがありました。

正午に始まった第1戦。私は起家。いきなり対面からリーチを受け、参ったなあと思っていると、手の中にどんどん対子や暗刻が。あっさり、四暗刻をツモりました。開局早々、静かな会場に「1万6000オール」という私の声が響きます。公式戦での役満は初めてです。少し、手が震えました。

最高位戦Classicルールは一発や裏ドラ、カンドラがなく、リーチをかけることが少ないため、2000点や2600点のアガリでも貴重な収入になり、僅差の戦いになりがちです。「48000点は、2000点のアガリ24回分になるのか…」などと、余計なことを考えたのがいけなかった。その後リードを徐々に吐きだし、予選落ちとなりました。

「起こる可能性のあることはいつか実際に起こる」という、有名なマーフィーの法則があります。「1日の最初の局で親の役満をアガる」というレアケースも、確率がゼロでなければ起こりうるわけで、心の準備不足でしたね。もっとも、この1日で経験値は大幅にあがったので、今後に生かしたいと思います。

さて、確率といえば、学校で習った「樹形図」を覚えておられるでしょうか。

「コインを2回投げて、連続して表が出たら勝ち」というゲームだと、次のような樹形図になります。線が枝のようにわかれていくので、樹木に例えられるわけですね。起こりうる出来事は「表→表」「表→裏」「裏→表」「裏→裏」の4通りで、赤いラインが勝利のルートになります。
この、「起こりうる出来事をすべて書き出す」という考え方は、ゲームとも密接な関係があります。
(ご興味のある方は、「ゲーム木」という言葉で検索してみてください)

もちろん、麻雀でも活用できます。代表例は「何切る」問題です。複数の選択肢があるときに、すべての可能性を書き出すと、綿密な比較検討ができるのです。

今日のテーマは、5ブロックができている次のような形です。

[三][四][四][七][八][九][③][⑤][⑤][4][6][8][南][南]

結論からいうと、[四]を切るのがもっとも優秀です。

覚え方としては、
[③][⑤][⑤][4][6][8]のような形は弱い(両面ではない)ので3枚とも残してフォローし、[三][四][四]のような形は強いので、早めに1枚切って[三][四]の両面を固定する、となります。建物の弱い部分を補強してあげて、強い部分は自立させるイメージです。

有名なセオリーなので、自然に身についている方も多いと思いますが、なぜそうなるかは、樹形図を考えてみるとよく理解できます。

例えば第一の分岐を「[四]を切ったとき」「[③]を切ったとき」「[4]を切ったとき」などとし、さらにその後「○○をツモった時」という枝分かれを考えるわけです。

大きな樹形図になるので、ここではすべて書けませんが、[四][③]で比べてみましょう。

1)[四]を切ったとき

[三][四][七][八][九][③][⑤][⑤][4][6][8][南][南]

1シャンテンに進む受け入れは、[二]4枚、[五]4枚、[④]4枚、[⑤]2枚、[5]4枚、[7]4枚、[南]2枚で、7種24枚。[五][南]は、自分で2枚使っているので、残り2枚ずつになります。


2)[③]を切ったとき

[三][四][四][七][八][九][⑤][⑤][4][6][8][南][南]

1シャンテンに進む受け入れは、[二]4枚、[四]2枚、[五]4枚、[⑤]2枚、[5]4枚、[7]4枚、[南]2枚で、7種22枚です。

比べると、1)の方が2枚多いですね。[④]の受け入れが4枚あることが効いています。2)では、[④]がなくなる代わりに、[四]が受け入れになりますが、自分で2枚使っており残り2枚しかありません。ここで2枚差が生じるわけです。


「たった2枚の差じゃないか」と思うかもしれませんが、1巡だけでなく、毎巡2枚違うので、かなりの差がつきます。
(ただ、既に見えている牌を数えると、2枚差が逆転するケースもあります。例えば[④]が3枚場に見えていたら、[③]切りが有力な選択肢になるでしょう)

さらに、1)と2)の後の分岐を考えたときも、差があります。

もう一度、両者を並べてみましょう。

1)[四]を切って、[三][四][七][八][九][③][⑤][⑤][4][6][8][南][南]
2)[③]を切って、[三][四][四][七][八][九][⑤][⑤][4][6][8][南][南]

この後、[二][五][⑤][南]を引いたときは差はつきませんが、[5][7]を引いたときは、大きな差がつきます。
[5]を引いて[8]を切った場合で比較してみましょう。次のようになります。


1)[三][四][七][八][九][③][⑤][⑤][4][5][6][南][南]
2)[三][四][四][七][八][九][⑤][⑤][4][5][6][南][南]

1)のテンパイへの受け入れは、[二]4枚、[五]4枚、[④]4枚、[⑤]2枚、[南]2枚で、5種16枚。このうち、[④]4枚、[⑤]2枚、[南]2枚の3種8枚は、両面でテンパイします。

2)のテンパイへの受け入れは、[二]4枚、[四]2枚、[五]4枚、[⑤]2枚、[南]2枚で、5種14枚。このうり、両面でテンパイするのは[⑤]2枚、[南]2枚の2種4枚だけです。

つまり、1)の方が受け入れ枚数が多く、かつ最終形が両面になる可能性も高い。樹形図の最初の分岐、その後の分岐を考えて比べると、

[三][四][四][七][八][九][③][⑤][⑤][4][6][8][南][南]

からは、[四]を切るのが有利だとはっきり分かるのです。

実戦で迷った牌姿や、「何切る」問題で疑問に感じたケースがあれば、ノートを広く使って、すべての可能性を樹形図として書いて、比べてみることをおすすめします。時間がかかる地味な作業ですが、自ら手を動かして考えたことは身につきやすいですし、その過程で新たな発見もあると思います。

次回は、いわゆるスジについて考えます。

この記事のライター

藤田 明人
最高位戦日本プロ麻雀協会第43期後期(2018年入会)
兵庫県出身。東京大学法学部卒業後、新聞社に入社。
記者を経て、教育事業部門で勤務。
麻雀が、幅広い世代の学びにつながることを研究しています。

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