6月30日に出た、「飯田正人杯 最高位戦Classic」というタイトル戦の予選で、不思議なことがありました。
正午に始まった第1戦。私は起家。いきなり対面からリーチを受け、参ったなあと思っていると、手の中にどんどん対子や暗刻が。あっさり、四暗刻をツモりました。開局早々、静かな会場に「1万6000オール」という私の声が響きます。公式戦での役満は初めてです。少し、手が震えました。
最高位戦Classicルールは一発や裏ドラ、カンドラがなく、リーチをかけることが少ないため、2000点や2600点のアガリでも貴重な収入になり、僅差の戦いになりがちです。「48000点は、2000点のアガリ24回分になるのか…」などと、余計なことを考えたのがいけなかった。その後リードを徐々に吐きだし、予選落ちとなりました。
「起こる可能性のあることはいつか実際に起こる」という、有名なマーフィーの法則があります。「1日の最初の局で親の役満をアガる」というレアケースも、確率がゼロでなければ起こりうるわけで、心の準備不足でしたね。もっとも、この1日で経験値は大幅にあがったので、今後に生かしたいと思います。
さて、確率といえば、学校で習った「樹形図」を覚えておられるでしょうか。
「コインを2回投げて、連続して表が出たら勝ち」というゲームだと、次のような樹形図になります。線が枝のようにわかれていくので、樹木に例えられるわけですね。起こりうる出来事は「表→表」「表→裏」「裏→表」「裏→裏」の4通りで、赤いラインが勝利のルートになります。
この、「起こりうる出来事をすべて書き出す」という考え方は、ゲームとも密接な関係があります。
(ご興味のある方は、「ゲーム木」という言葉で検索してみてください)
もちろん、麻雀でも活用できます。代表例は「何切る」問題です。複数の選択肢があるときに、すべての可能性を書き出すと、綿密な比較検討ができるのです。
今日のテーマは、5ブロックができている次のような形です。
結論からいうと、を切るのがもっとも優秀です。
覚え方としては、
やのような形は弱い(両面ではない)ので3枚とも残してフォローし、のような形は強いので、早めに1枚切っての両面を固定する、となります。建物の弱い部分を補強してあげて、強い部分は自立させるイメージです。
有名なセオリーなので、自然に身についている方も多いと思いますが、なぜそうなるかは、樹形図を考えてみるとよく理解できます。
例えば第一の分岐を「を切ったとき」「を切ったとき」「を切ったとき」などとし、さらにその後「○○をツモった時」という枝分かれを考えるわけです。
大きな樹形図になるので、ここではすべて書けませんが、とで比べてみましょう。
1)を切ったとき
1シャンテンに進む受け入れは、4枚、4枚、4枚、2枚、4枚、4枚、2枚で、7種24枚。とは、自分で2枚使っているので、残り2枚ずつになります。
2)を切ったとき
1シャンテンに進む受け入れは、4枚、2枚、4枚、2枚、4枚、4枚、2枚で、7種22枚です。
比べると、1)の方が2枚多いですね。の受け入れが4枚あることが効いています。2)では、がなくなる代わりに、が受け入れになりますが、自分で2枚使っており残り2枚しかありません。ここで2枚差が生じるわけです。
「たった2枚の差じゃないか」と思うかもしれませんが、1巡だけでなく、毎巡2枚違うので、かなりの差がつきます。
(ただ、既に見えている牌を数えると、2枚差が逆転するケースもあります。例えばが3枚場に見えていたら、切りが有力な選択肢になるでしょう)
さらに、1)と2)の後の分岐を考えたときも、差があります。
もう一度、両者を並べてみましょう。
1)を切って、
2)を切って、
この後、を引いたときは差はつきませんが、を引いたときは、大きな差がつきます。
を引いてを切った場合で比較してみましょう。次のようになります。
1)
2)
1)のテンパイへの受け入れは、4枚、4枚、4枚、2枚、2枚で、5種16枚。このうち、4枚、2枚、2枚の3種8枚は、両面でテンパイします。
2)のテンパイへの受け入れは、4枚、2枚、4枚、2枚、2枚で、5種14枚。このうり、両面でテンパイするのは2枚、2枚の2種4枚だけです。
つまり、1)の方が受け入れ枚数が多く、かつ最終形が両面になる可能性も高い。樹形図の最初の分岐、その後の分岐を考えて比べると、
からは、を切るのが有利だとはっきり分かるのです。
実戦で迷った牌姿や、「何切る」問題で疑問に感じたケースがあれば、ノートを広く使って、すべての可能性を樹形図として書いて、比べてみることをおすすめします。時間がかかる地味な作業ですが、自ら手を動かして考えたことは身につきやすいですし、その過程で新たな発見もあると思います。
次回は、いわゆるスジについて考えます。