麻雀を覚えたてのとき、戸惑うルールの一つが、「食い替えの禁止」です。フリーの麻雀店や、仲間で対局するとき、ほとんどはこのルールが採用されています。Mリーグや、多くのインターネット麻雀でも、食い替えはできません。
食い替えは、完成したメンツがあるときに、そのうち1枚をチーかポンしてすぐに同じ牌を切ること(現物食い替え)、あるいはチーして、メンツ内にあったスジの牌をすぐ切ること(スジ食い替え)の2つがあります。
例えば、 がある時に、をチーしてすぐにを切ると、「食い替えだよ」と指摘され、アガリ放棄やチョンボとなってしまうのです。
ペナルティーを科されるので、すごくいけないことをした気分になるかもしれませんが、実のところ、もともと中国の麻雀は食い替えが自由です。日本でも、日本プロ麻雀連盟の公式ルールは、現物以外の食い替えを認めており、スジ食い替えはできます。
私が所属する最高位戦日本プロ麻雀協会でも、普段のリーグ戦のルールは食い替え禁止ですが、一発や裏ドラがない最高位戦classicルールでは、現物を含めて食い替えができます。小林剛プロらが所属する麻雀連合のルールも、食い替えを認めています。
食い替えができると選択肢が増え、戦い方が変わるので、私たちも、classicルールの対局前などに食い替えの研究をします。むしろ、食い替えありの方が思考の幅が広がり、ゲーム性が高いのではないか?と思うこともあります。
ではなぜ、世間一般では食い替えはNGなのでしょうか。先輩や有識者の何名かにうかがってみましたが、はっきりとした公式な説明がかたまってはいなさそうでした(どなたか、歴史的な経緯などをご存じの方がおられたら、教えて頂ければ嬉しいです)。
一般に、リーチ直後の一発役があるルールでは食い替えNGで、一発なしだとOKなので、一発と関係ありそうだと推測はできます。一発を認めることは、偶然性による打点アップの可能性をつくり、より逆転しやすく、ドラマチックにしようという狙いがあります。しかし食い替えができると、一発を消すためだけのポンやチーが増えて、興ざめしてしまうとも考えられるのですね。一発と食い替えを同時に認めると、相性が良くないというわけです。
なお食い替えには、「実質的に食い替えと同じ意味を持つけれどOK」という技があります。
チー ドラ
このようなテンパイで、上家からが出ます。ドラですし、678のサンショクも見込めるので、チーしたいですね。
しかし、をチーしてスジ牌のをすぐに切ると、食い替えになってしまいます。
が、をチーしてを切れば、直接のスジ牌ではないので食い替えにはなりません。テンパイを維持したまま、打点アップをできるのです。他家からみれば、単純に孤立牌で持っていたを切っただけかもしれないし、事実上の食い替えだとはわかりません。小技として知っておくと便利です。
また、食い替えと似て非なるものに「食いのばし」があります。食いのばしは、あらゆるルールでOKですし、出現頻度が高いので、ぜひマスターしましょう。
典型的なケースは、以下のような形です。
ポン
のカンチャン待ちでテンパイしています。でも、苦しい形なので、もっと待ちが多くしたい。
そこで、上家がを切ったら、チーをしてを切ってみましょう。
チー ポン
のリャンメン待ちにグレードアップしました!
ほかにも、上家がを切ったらでチー、を切ったらでチーしてを切るとリャンメン待ちにできます。
をチーしてを切ったら、スジの牌では?とちょっと焦りますが、食い替えになるのは、とある状態から、でチーしてを切った場合です。
でチーしてを切るのはまったく問題ないので、ご安心ください。
やや気付きにくいですが、をポンしてを切っても待ちが増えます。
ポン ポン
となって、のノベタン待ちにできます。
「食いのばし」は「食い替え」と一見似ており、「これを鳴いてもいいのかな?」と悩むことがあると思います。上記のように、ルールによって食い替えがOKのときもあるので、余計にまぎらわしいですよね。
しかし、食いのばしを活用して、テンパイ時の待ちの枚数を増やすと、アガリ率、勝率に直結します。ぜひ食い替えとの差を理解し、使いこなして勝ちましょう。
複雑な連続形がある時や、場に見えている牌に偏りがある時などは、どの牌をどう鳴けば効果的な「食いのばし」になるか微妙なこともあり、上級者にとっても奥の深いテーマです。ご興味がある方は、応用編として、ネマタ氏の詳しい解説を読まれることをおすすめします。
次回は、特に大きく戦況を左右するアンカンについて考えます。