- 『ネマタの戦術本レビュー』は、麻雀戦術サイト「現代麻雀技術論」の著者・ネマタさんによる戦術本レビューです。
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第一章 攻撃のベストバランス
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47ページの手牌からダブ東を絞るかどうか。(1)については、そもそも自分の手牌だけみても、字牌から切ったところでアガリ率上昇が望めないので、うまくツモが噛み合った時にドラ色のピンズ染め手をみる手でしょう。このような場合に字牌を残すのは「絞り」と言うよりは重なり狙い。言うなれば「抱え」とでもなるのでしょうか。選択としては同じ字牌残しでも、目的が違うので区別したいところです。
(1)のような手牌であれば、数巡経ってもほとんど手が進まずアガリ自体が厳しいことが多いですが、今度はむしろ絞るのではなく、あえて役牌を打って他家を鳴かせる選択も考えられます。自分一人が絞ったところで、結局誰かがアガることが大半なので、役牌をポンした他家にアガられた方が、リーチやメンゼンツモ、裏ドラ次第で高くなりやすいメンゼン手の他家にアガられるより失点が少なくて済みます。本書では、「アガリたい時ほど絞れ」とまとめられていますが、その逆の考え方です。
(2)は絞らない典型例。打南として東が重なったところで、タンピンに加えて678の三色まであるので、巡目が早いならも残して東をトイツ落としするところ。自分の手牌だけみてもほぼ不要牌である以上、他家にとって価値の高いダブをより先に切ります。
(3)は本書では絞るとありますが、巡目が深くなるにつれ役牌を重ねられる可能性も高まります。鳴かれた場合も、46ページのように5ブロックが揃っているとは限らず、5ブロックが揃ってない段階で鳴かせる分には、揃ってから鳴かせるよりは他家の手を進ませません。1巡目という条件であれば、やはりから切った方がよいと思われます。
ただし、これが5巡目くらいに生牌の役牌をツモったというのであれば、それ以上絞っても重ねられる可能性がさほど高まらないので、本書で言及されている通り絞ることも視野に入れます。もちろん絞ることで放銃リスクも高まりますが、アガリたい手であればそれ以上に他家のアガリ率を下げることで、自分のアガリ率を高めるメリットが大きいということです。
大会で優勝を目指すために、何としてでもトップが必要というケースであれば、高打点の横移動を防ぐうえでも、自分の勝負手を成就させるうえでも、「絞り」が有効になることが増えるといえます。「絞り」が現代麻雀において軽視されがちになったのも、大会やリーグ戦で結果を残す必要があるプロ雀士視点より、長期で良い成績を出すことを目的とするプレイヤー視点の戦術書が増えたという背景もありそうです。
初代Mリーガー松本のベストバランス麻雀
新鋭Mリーガーによる待望の戦術書!
現在麻雀界はMリーグの開幕で活況を呈しています。トッププレイヤーによる真剣勝負をリアルタイムで観戦できるのは麻雀ファンとしても興味の尽きないところです。 そんなMリーグに最年少で参加しているのが日本プロ麻雀協会所属の松本吉弘プロ。第9回 TwinCup優勝、第25期 發王戦優勝などの勢いを買われ、サイバーエージェントがオーナーを務める「渋谷ABEMAS」に大抜擢されました。 元高校球児で強面。その容貌から「卓上のヒットマン」の愛称でファンに知られている松本プロですが、麻雀の腕も一級品。 その場の状況に応じて様々なスタイルを使い分ける「ベストバランス麻雀」を身上としてMリーグでも活躍しています。 本書は手順、読み、大局観、ゲーム回し、押し引きといった麻雀で勝つための重要事項をテーマに、松本プロが自身の戦術を初披露した、ファン注目の一冊です。