四限目 講座20
従来の戦術書では、「○○なら鳴かない」という形で鳴き判断についてまとめられていたので、「○○だけども鳴く」ケースに対応しづらく鳴くべきケースを見落としがちでした。鳴き判断について一言で一般化するのは不可能なので、最近の戦術書では具体的な牌姿を取り上げて、「○○なら鳴く」という形で鳴き判断をまとめることが多くなりました。
しかしこの方針だと、「どのあたりまで鳴いた方がよいのか」については基準が分かりづらくなってしまうため、結果的に鳴き過ぎてしまう打ち手も多くなってしまったように思われます。「鳴いた時の形がいい」「鳴かないと苦しい」から鳴くのではなく、あくまで、「鳴かないよりはいい」から鳴くという比較の問題であることを忘れないようにしましょう。
図Aは鳴くとツモでしか役有りテンパイにならないので、メンゼンよりもテンパイする受け入れが減ります。役無しでリーチを打つのを嫌ったのかもしれませんが、受け入れが減ってアガリ率が落ちればそれだけ自分が失点する機会も増えます。放銃だけは特に避けたいのでリーチはしないつもりであっても、メンゼンテンパイなら役無しダマでもツモればあがれますし、カンが更に場に見えて苦しくなった場合も、メンゼンなら他で面子候補を作ってアガリ目を残すことができます。いずれにせよ、メンゼンであることのメリットが評価から抜け落ちてしまうと鳴き過ぎ病になりかねません。
図Bは鳴くとリャンメンができますが、メンゼンでテンパイすればリーチで40符3翻以上確定。カンが残ったとしても、鳴いて良形2翻と比べて局収支期待値で勝ります。また、スルーしてマンズが良形になる変化もあります。
従来言われていたような、「シャンテン変わらずなら鳴かない」は誤りであることが多いですが、1シャンテンで鳴くと安いがメンゼンでテンパイすればまずまず打点があるという、メンゼンの恩恵を受けやすく、メンゼンで進めるメリットも大きい手については、「シャンテン変わらずの鳴き」を控える方がよいことが多いと言えます。
図Cは面子候補オーバーなので、をポンして1シャンテンになってもリャンメンを落とすことになるので、リャンメンチーと変わりません。役有りで悪形面子候補が面子になる牌は基本鳴きますが、面子候補オーバーであれば他で面子が出来た時にそこを落とせばよいので、手役やドラ絡みといった、そこで面子を作らないと手牌の価値が落ちてしまうのでなければ、悪形であっても急所とは言えません。
図Dはマンズ4連形から面子候補ができればホンイツの4面子1雀頭が揃います。その面子候補以外で4面子1雀頭ができれば打点が上がるというケースも、悪形であっても急所とは言えない例です。
講座21
これまで鳴きについて取り上げてきましたが、アガリを目指すうえでの鳴きのデメリットの1つとしてツモ番を飛ばすというものがあります。鳴いた方がはっきりよい手になるのであれば気にすることはないですが、鳴いた方がよくなるか微妙程度の手ならツモ1回を優先してスルーすることもあります。
それとは逆にツモ番を飛ばすことがメリットになるのがテンパイ料のために形テンを取ったケース。これまで取り上げてきたシャンテン変わらずの鳴きのバリエーションが、それぞれ形テンのケースでも活かせます。地味な技術ですが利用頻度自体は結構高いので、流局間際は頭を切り替えて対応できるようにしたいですね。
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