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竹書房 近代麻雀編集部・金本晃「好きだからやれるのが、この仕事の魅力」マージャンで生きる人たち 第30回

竹書房 近代麻雀編集部・金本晃「好きだからやれるのが、この仕事の魅力」マージャンで生きる人たち 第30回

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 1989年から始まった「麻雀最強戦」(主催:近代麻雀)が2019年に30周年を迎えた。権威と伝統のあるこのメディア対局で、2007年から12年間、「一番麻雀が強いのは誰だ!」をキャッチフレーズに、大会実行委員長を務めてきた株式会社竹書房 近代麻雀編集部・金本晃さんに、麻雀最強戦にまつわるエピソードと編集の仕事について話を聞いた。

金本晃(かねもと・あきら)プロフィール

1978年、広島県生まれ。乙女座、A型。東京大学法学部卒業。株式会社竹書房「近代麻雀」編集部。麻雀最強戦大会実行委員長。

竹書房に入社されたきっかけは?

「高校時代は政治家になるのが夢でした。政治家になるためにはどうしたらいいのかと親父に相談したら、東大に入るしか方法はないと言われました。たぶん親父は政治家になるというより、勉強させたかったんだと思うんですけど」

「大学時代は本当に友達がいませんでした。周りは司法試験の話か、国家公務員一種を受けて官僚の道へ進むといったような話ばかり。私の好きなことは麻雀。当時から近代麻雀は読んでいました。3年の頃にはほとんど学校に行かなくなり、雀荘メンバーとして働いていました」

「1年留年して、大学に復帰した時。就職どうしようかなと思い、学生課に通い、相談に乗ってもらっていました。そこで麻雀と本が好きなら、竹書房という選択肢もあるという話が出たんです。このアドバイスのおかげで、24歳の時に竹書房に入社し、近代麻雀編集部に配属されました」

 

近代麻雀編集部ではどんなお仕事を?

「入社1年目は先輩の手伝い。読み切り作品を担当するようになった頃、片山まさゆき先生が“打姫オバカミーコ”を立ち上げる準備をしていました。当時の編集長がお前は麻雀オタクだから、その部分ではちょっとはタメになるかもしれんと、2人制だった担当編集者のひとりに加えてくれました。学生時代に近代麻雀を読んでいた一番の目的が片山先生だったんで、嬉しくてなんとも言えない気持ちでしたね」

「でも片山先生は僕が入社前から雑誌に掲載されていた方なんで、はっきり言えば、仕事をしたことにはならないと僕は思っていました。次に担当した作品は押川雲太朗先生。当時やっていた日本プロ麻雀連盟と竹書房の交流麻雀大会で荒正義プロと知り合いになり、荒さんが押川さんとやろうよと言ってくれて“リスキーエッジ”を立ち上げました。でも押川さんもすでに竹書房とつながりも信頼関係も出来ている人だったんで、僕の力というわけではありません。竹書房でまだ描いていない人を何人連れてこれるかが勝負だと思っていたので、とにかく描いてくれそうな人に当たりまくりました。各出版社に漫画家さんを紹介してほしいと電話するんですが、断られてしまうことも多々ありました」

「自分もちょっとは仕事したかもと言えるのは、 須田良規プロ原作の“東大を出たけれど 麻雀に憑かれた男”を描いてくれた井田ヒロトさん。井田さんは当時はまだ竹書房では描いていなかった人でした」

 

麻雀最強戦30周年を振り返って

「28歳の時、第18回目の麻雀最強戦から携わるようになりました。当時はまだプロの大会もほとんどなかった時代です。近代麻雀で人気のあった、福本伸行先生、片山まさゆき先生、佐々木寿人プロ、須田良規プロにお声かけしたら来てくれまして、著名人では萩原聖人さんも来てくれました。作家と著名人8人と読者8人の計16人での大会となった第18回麻雀最強戦は、DVD販売されました」

「ちなみに第1回大会は、私は入社していないので、聞いた話ですが、平成元年だったので、何かしらのイベントを開催しようということになったそうです。それでプロを呼んで、プロ以外に雀鬼こと桜井章一さんは読者人気もすごかったので、お声かけしたのですがお断りされ、桜井さんが代走に片山まさゆき先生を立てたという経緯でした」

「会場はホテルメトロポリタンエドモンド。当時はホテルで麻雀を打つのは珍しく、参加者も新鮮で感動したそうです。そして片山先生の勝ち方も灘麻太郎プロの国士無双のロン牌を止め切っての優勝だったので、第2回大会以降は読者参加型になった経緯でした」

「麻雀ファンの方と話をしているときが一番楽しいですね。僕自身、麻雀が好きな人が好きなんです」

 

キャッチフレーズ「麻雀が一番強い奴は誰だ!」が生まれた経緯は?

「もともと第1回大会のコンセプトが“最強を決めようぜ”ということだったんです。大会名もそうですけど、それを僕が番組監督の演出通り、マイクを使って真面目に言っただけ。マイクのエコーのおかげで定着したんだと思います(笑)」

麻雀戦術書の制作はどのぐらいのペースで刊行されているのですか?

「最初に作った戦術書は、桜井章一さんの“麻雀力が目覚める打ち方 ”でした。 若手プロ8人が対局した大会を桜井さんと日本プロ麻雀連盟の森山茂和会長に解説してもらったことがあって、生解説ではしゃべり切れないことがいっぱいあったので、それを深堀りして、2014年に本にしました。当時はデザイン以外はテープ起こしから何から何まですべて自分でやりました。麻雀も好きだし、話を聞くのも面白かった。好きでやっているから苦労とは思いませんでしたが、時間はかかりました。その後は、2~3ヶ月に1冊、毎年4~5冊ペースで作り、近代麻雀が月刊誌になった以降は、年間10冊ペースで作っています。1冊1冊について語り出すと、自分の子供のことを語るような感じで、どれだけ時間あっても足りなくて日が暮れてしまいますね」

「魅力あるプロや著者は、人と違うところがある人です。制作上、気をつけていることは自慢話で終わらないこと。読んでいる人が実戦で生きるような、著者の頭脳が読者に生きるような、当たり前の発想を大事にしながら制作しています」

「成功した話より、苦労している話や失敗した話の方が面白いはず」と考えながら書籍編集に取り組んでいる

編集者として、心がけていることはありますか?

「近代麻雀の読者層は40代が中心です。若い人が麻雀をやらなくなったと言われていますが、きっと麻雀よりもっと面白いものがあるから、麻雀をやらないんでしょうね。僕が学生だった頃は、とにかく麻雀が一番面白かったので、麻雀にハマったんですけど」

「だから無理やり好きじゃない人に勧めるものではないとは思っています。でも好きな人にとっては、知れば知るほど楽しいものなんだぞということは見せていきたいですね」

好きなことを仕事にするためには

「この仕事の魅力は、好きだからやっているとしか言えません。実際、好きなことしかやっていない。麻雀プロもそうだと思うんですけど、見栄を気にしていない。僕もそうですけど、好きじゃないことをする人ってきっと別のことで見栄を張るというか、自分の中でアピールしているだけという気がしています」

「本当は自分が前に出たいタイプなんですけど、麻雀も弱いし正直、能力的にも実績的にも無理なんで。麻雀が強かったら、本を作る側ではなく、本を出す側になりたいと思うので(笑)」

 

麻雀を始めたのはいつ頃ですか?

「麻雀を始めたのは、学生時代。朝晩食事がついて月6万円という学生寮に入っていた頃です。当時は麻雀が流行っていて、弱かったんですけど好きになりました。当時も今もお酒が苦手で飲めないんですが、人とお酒抜きでコミュニケーションを取れるのが麻雀しかなかったという感じです」

 

金本さんにとって麻雀とは?

「今はだいたい週2~3回、東風戦を10回ぐらい打っています。最近思ったのは、けっこう仕事も忙しくて、家庭では妻にしっかりと尻に敷かれているのに(笑)、うつにならずに済んでいるのは、もしかしたら麻雀を打っているからかなと。ここ10年を振り返ると、仕事をいっぱいやっているのに、麻雀では負けて来たことで、自分の中でバランスが取れているのかなと。疲れ切っていて負けるとわかっているけど、打ち続けるみたいな(笑)」

 

これからの「麻雀最強戦」とは?

「今は麻雀番組もいっぱいあるし、どれも面白い。その中で伝統だけで面白いと言えるのかどうかは、疑問に思っています。でも、意外と伝統が好きな人が多いのも事実。お笑い番組でも“M-1グランプリ”には伝統があって、自分の中で勝手に面白いものなんだと思い込んでいるので、そこで1位になった人はきっとすげえ面白いんだと思っているんですよね。そういう風に最強戦を見てくれている人は、けっこういるんじゃないかなと。だからM-1と一緒で、伝統で勝負している感じですね。そういう人がいる限り、麻雀番組として最強戦もやっていけるのかなと思っています」

「そして麻雀プロをはじめ、サイバーエージェントの藤田社長も含め、周りの人には励まされています。何より30年前に最強戦を立ち上げてくれた人たちのおかげです。先輩方、ありがとうございますという気持ち、歴史に対する感謝の気持ちですね」

「実は政治家になりたかった理由は世界を平和にしたいと思っていたからです。中学、高校時代の漠然とした正義感です。でもいま麻雀本を作ったり最強戦をやっていて思うのは、もし世界中の人が麻雀をやってたら楽しくて戦争なんてしなくなるんじゃないかなってことです。世界を変えるのは何も政治家にならなくてもできる、身近な所から。そしてまずは自分から。それが今の気持ちです」

インタビューを終えて

 「根が楽観主義なので、最強戦でも竹書房に入ってからも辛かったことはないですね」と入社以降、近代麻雀編集部一筋の金本さんは「麻雀が好きだから」という思いで人と人をつなぎ、それを形にして、世に発信してきた。

 麻雀という存在があるかぎり、その想いはこれからもブレることはない。

◎写真:佐田静香(麻雀ウォッチ)  、インタビュー構成:福山純生(雀聖アワー)

 

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