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作家 新川帆立「麻雀は手のかかる彼女みたいな存在です」【マージャンで生きる人たち第39回】

作家 新川帆立「麻雀は手のかかる彼女みたいな存在です」【マージャンで生きる人たち第39回】

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 著書『元彼の遺言状』(宝島社)で第19回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞。作家で弁護士でもある新川帆立さんは、東京大学法学部時代に麻雀に熱中し、司法試験に合格してからプロ雀士として活動していた時期があった。

 現在は、いち愛好家として麻雀と向き合っているが「麻雀で何かできることがあったらやっていきたい」という新川さんに、麻雀に対する思いを聞いた。

新川帆立(しんかわ・ほたて)プロフィール

1991年、アメリカ合州国テキサス州ダラス生まれ、宮崎県宮崎市育ち。作家、弁護士、元プロ雀士。東京大学法学部卒。著書『元彼の遺言状』で第19回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞。好きな役はリーチとツモ。

麻雀を始められたきっかけは?

「祖母が囲碁をやっていたこともあり、高校では囲碁部に入りました。入部してみると麻雀が好きな部員も多くいて、部室にあった手積み卓で教えてもらったのがきっかけでした。全国高校囲碁大会にも出場しましたが、麻雀の方が楽しくなってきて、大学では囲碁部には入部せず、麻雀店でアルバイトを始めました。多い時は週4~5日、月に150半荘以上は打ってました」

「司法試験の勉強のために2年ほど麻雀から離れましたが、24歳の時に最高位戦日本プロ麻雀協会のプロテストを受けてプロ入りしました」

なぜプロ雀士になろうと思われたのですか?

「私の場合は下手なりに一生懸命やっていました。でも麻雀好きなんですと言っても、最近は女の子も打つよね~とか、彼氏に教わったの~?といった反応をされることが多く、あまり信じてもらえないというか、真に受けてもらえませんでした」

「本当に好きでやっているのに、その気持ちが伝わりづらいところがあったので、プロになって公式戦に出たりするようになれば、自分の好き度が周りにも伝わるかなと思っていたからです」

「プロ入りしてから公式戦に出場していたのは最初の1年間でした。弁護士の仕事が忙しくなってきたので、3年ほど休会させてもらっていました。第19回『このミステリーがすごい!』大賞で大賞を取らせて頂いた時に、作家という仕事とプロ雀士としてのクオリティを高めていくこととの両立は、私の中では難しく、どっちも中途半端になりそうだったので、最高位戦の方と相談させて頂き、いち愛好家として関われるところで関わっていきたいですという話をして退会に至りました」

作家になろうと思っていたのはいつ頃から?

「16歳の時に夏目漱石の『我輩は猫である』に感銘を受け、私も小説家になりたいと周りの友達に宣言していました。今考えると恥ずかしいのですが、ペンネームは何がいいかな?なんて話もしていました。本名には“帆”の字が入っていて、この漢字を口頭で説明する時、帆立の“帆”ですと伝えていたので馴染みもあり、覚えてもらいやすいので新川帆立をペンネームにしました。そういえば、帆立には立直(リーチ)の“立”が入ってますね(笑)」

小説を書いていく上で、麻雀が役に立ったことはありますか?

「運不運があっても惑わされずに打ち続けることで、メンタルはすごく鍛えられました。小説の世界においても、自分では頑張っても、いまいち評価されなかったり、売れる売れないはタイミングもあるので、理不尽だなと感じるところは麻雀と似ています。その中でどう戦っていくのか。その思考パターンを考えていくところでも、麻雀は本当に役に立っています」

「また元プロ雀士という肩書きがあることで、読者さんからこの作者おもしろそうと思ってもらえるところは、ちょっと得しています。作家のプロフィールはおもしろいほうがいいので、それも含めて読者さんに楽しんでもらえたらと思っています」

フジテレビ麻雀番組「芸能界最強雀士THEわれめDEポン」にも出演されました

「テレビ対局は初めてだったのですっごく緊張したのですが、ミスったことも含め、心の中もすべて映し出されるので正直打ちづらいなと感じたところはありました。でも小説を書いている時にも、心の中を覗かれるような恥ずかしさを感じた経験はあったので、恥ずかしいと思いつつもまあいっか!みたいな開き直った気持ちで打っていました。こんな下手な人でも麻雀を打っていて、楽しんでいて、それでいいんだよという方向で、もしかしたら誰かを勇気付けられるかもしれないので」

「あと緊張した理由がもうひとつあって、KADOKAWAサクラナイツ岡田紗佳さん(日本プロ麻雀連盟)と同卓できたことです。お会いする前から岡田さんの写真集を買っていたほどのファンだったので、生身の岡田さんだ!みたいな感じでドキドキしてましたね」

「われめDEポンは、ずっと見ていた憧れの番組だったのに、何も出来ずに終わっちゃいました。悔しさだけが残ったので、すぐに何切る300問に取り組んでいます」

文壇には麻雀好きな方も多くいらっしゃるのでは?

「日本推理作家協会には、ミステリー作家仲間で麻雀を打つ機会があるらしく、それが目当てで入会しました。現在はコロナ禍で活動は制限されていますが、絶対に小説では勝てない憧れの先輩作家たちに、せめて麻雀では勝ちたいという野望があります(笑)」

好きな言葉は?

「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく。これは小説家の井上ひさしさんの言葉で、私は座右の銘としていて、常に心がけています」

「たとえば誰かに麻雀のおもしろさを伝えるためには、外向きにわかりやすく伝える必要があります。仲間内だけで好きなことをやるのも楽しいかもしれませんが、それだけでは業界がどんどん小さくなってしまい、結局は好きなことをできなくなります。山の裾野の広さが山の高さを決めるといいますが、麻雀もスポーツも小説の世界もアマチュア人口が増えていかないと、プロとしての到達点も低くなります。裾野を広げていくためには、アマチュアや初心者にやさしく接し、わかりやすく伝えていく。それはどんな業界においても大事なことだと思っています」

「素のままだと、いい手牌が来ると顔がほころんだりしていました。なので公式戦ではあえてポーカーフェイスを意識していました。そうしないと顔に出てしまうので」

新川帆立さんにとって麻雀とは?

「ひとことで言えば趣味です。趣味がないと人生はつまらないので、大事な趣味です。好きだから会いに行くんだけど、会うとしんどい。でも会いに行っちゃうといった感じです。つかず離れず振り回される。手のかかる彼女みたいな存在ですね」

今後、どのような作品を書いていきたいですか?

「将来的には麻雀小説を書く準備も進めています。ミステリー作家は男性作家が多いので、女性が女性を主人公に書くのは比較的新しい側面を出せるといったように、自分ができることの中で他の人ができないことをテーマとして書いていきたいですね」

「そのためにはメディア露出等、必要だと思うことはなんでもやっていくつもりです。作品以外のところで頑張っているよねなんて言われても痛くもかゆくもなく、書き続けていくための努力だと思っています。それは麻雀のおもしろさを伝えるという面でも一緒ですね」

インタビューを終えて

 文体には人間性が出ると言われているが、麻雀にも打ち手の個性が出る。新川帆立さんは麻雀を打つ時と同様、日常を過ごす時も「運、不運に惑わされない自分のペース」を心がけているそうだ。

 著書『元彼の遺言状』に登場する颯爽とした女性主人公さながらに、凛とした新川さんが書かれる麻雀小説は、麻雀のおもしろさをわかりやすく外に伝えて欲しいと願う、いち読者としても待ち遠しいかぎりだ。

◎写真:河下太郎(麻雀ウォッチ)/インタビュー構成:福山純生(雀聖アワー)

第19回『このミステリーがすごい!』大賞 大賞受賞作『元彼の遺言状』


宝島社/価格:1540円(税込)/判型:四六判

5月15日(土)15時~『麻雀最強戦 著名人最強決戦』出場

新川帆立さんが出場する「麻雀最強戦」には、文壇から綾辻行人さん、海堂尊さん、百田尚樹さん、宮内悠介さんらも出場している

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