ITサービス事業を核とするPPP's(スリーピース)株式会社では、麻雀事業として初心者~中・上級者までを網羅したレッスン&イベント「HQ(High Quality)麻雀」を展開している。麻雀事業に力を注ぐことになった経緯も含め、代表取締役の石山大介さんに話を聞いた。
石山大介(いしやま・だいすけ)プロフィール
1975年、東京都生まれ。牡牛座、O型。立教大学経済学部卒業。PPP's株式会社代表取締役。趣味は飲むことと旅。好きな役は三色同順と四暗刻。
PPP'sを創業された経緯は?
「手に職をつけ、自分で何かをやっていくというのは、印刷会社を創業して40年間経営していた父親の影響が大きくあります。父親からは、サラリーマンにはならなくていいとことあるごとに言われていまして。大学卒業後、就職活動は思うようにいかなかったんですが、IT分野で手に職を持ち、自分のやりたいことがだんだん増えてきて、会社を立ち上げるというところまでは、父親と同じ道を歩んでいるんだと思います」
「会社を立ち上げた時に株主となってくれた2人は雀荘で知り合いました。そのうち1人は同じIT業界の先輩で、その人が企業したことで自分もいつかはと刺激を受け、2015年にPPP’s(スリーピース)を立ち上げました。社名はプロポーサル(提案)、プロデュース、プロモーションの3つのPからPPP’sとしました」
自分のやりたいこととは?
「東京の下町育ちだったこともあり、地域が発展するような何か面白いことが出来たらいいなと思っていました。普段から浅草界隈で飲み食いしていたんですが、浅草はデジタル化が遅れていました。それで何が不便なのか?夜な夜な通っていたバーでオーナーに聞いてみたんです。2008年以降は、海外からの観光客が増えているということだったので、スマートフォンで見られるポータルサイトを作りますよと提案しました。それで街が盛り上がれば実績となって、次の新しい仕事につながると思い、浅草にあったバー30軒をひと月半で取材しました」
「写真も記事も自分で担当し、フライヤーも制作して浅草のホテルに置いてもらい、2009年にデジタル版浅草バーマップが完成しました。周りからは何か面白そうなことやっているねといった感じで受け止めて頂きました」
「この取材で浅草のバーや地元の飲食店をはじめ、異業種の方と知り合いました。エンジニアだけやっていたらまず知り合えないような方から、浅草でこんなことやるから手伝ってよみたいな感じで、ネットワークが広がり、《はしご酒24》という浅草で24時間飲み続けるイベントも定期開催するようになりました」
麻雀事業を立ち上げた経緯は?
「創業時、麻雀事業を立ち上げるビジョンは全くありませんでしたが、Twitterを通じて醍醐大プロ(最高位戦日本プロ麻雀協会)と10数年ぶりに会うことになったんです。私にとって麻雀は、小学生時代に両親と印刷工場の職人さんが家でやっているのを見ているうちになんとなく覚えてからは、ずっと身近なものでした。大学卒業後、よく通っていた雀荘で醍醐が働いていた時に出会っていたので、その時以来の再会となったんです。久しぶりに麻雀しながら話をすると、最高位戦のリーグ戦が平日開催になるから転職を考えているということでした」
「会社の事業としてHADO(※)というeスポーツゲームコンテンツの営業をやっていたタイミングでもあったので、醍醐が入社すれば、eスポーツと麻雀とのつながりが生まれる上、醍醐にとっては麻雀に集中出来る環境を得られるということで入社してもらいました。その流れで最高位戦日本プロ麻雀協会に所属する麻雀プロによるHADOのチーム編成をお願いしたことがきっかけで、麻雀事業も派生したという経緯です」
※HADO(ハドー):頭にヘッドマウントディスプレイ、腕にアームセンサーを装着して対戦するAR(拡張現実)スポーツ
麻雀事業では、どんなことをやられているのですか?
「醍醐と話し合い、競技麻雀の魅力を伝えるためにHQ麻雀レッスンという教室を始めました。ギャンブルイメージからの脱却と、将来的にはeスポーツへの進出を見据えたオンライン展開もあると思ったので、少人数制の中・上級者向けレッスンからスタートしました」
「その後、河野直也プロ(最高位戦日本プロ麻雀協会)も入社したことで、河野を講師とした初心者・初級者対象レッスンも開講し、さらに最高位決定戦2020振り返りトークイベント等も開催するようになりました。アルコール飲み放題でSNS禁止のオフレコイベントとしたところ、かなり盛り上がりました」
「それで堀慎吾プロ(日本プロ麻雀協会)と渋川難波プロ(日本プロ麻雀協会)による雀王決定戦の振り返りトークイベント、日向藍子プロ(最高位戦日本プロ麻雀協会)と松本吉弘プロ(日本プロ麻雀協会)によるMリーグ振り返りイベント等も開催しましたね」
「また2021年にはITエンジニアとして袖澗宏樹プロ(最高位戦日本プロ麻雀協会)が入社し、社員5人のうち3人が麻雀プロでもあることもあり、プロ活動を行いやすいよう、会社でバックアップしています」
プロ活動を行いやすいバックアップとは?
「HQ麻雀レッスンの無料受講をはじめリーグ戦スケジュールの調整、オープン大会への参加費を会社で支払う等、麻雀プロとして活動しやすいように配慮しています。仕事最優先なのか。ライフワーク最優先なのかで選ぶ会社は変わってくると思うんですが、弊社はライフワークとして競技麻雀をやりたい人にとっては、仕事さえちゃんとやってくれれば活動しやすい環境なのかなとは思います」
コロナ禍における麻雀イベントへの対応は?
「2020年4月の緊急事態宣言発出時は、イベントをすべて中止としました。ただもともと将来的にオンラインレッスンを構築して立ち上げるつもりだったので、コロナ禍に見舞われたことで、予定より半年早くオンラインコンテンツをスタートさせることにしました」
「オンラインコンテンツの内容は、オンラインゲーム天鳳とzoomを使い、参加者が天鳳を打っている対局を収録しながら実況解説し、対局後の感想戦までパッケージにした《オンライン生実況解説》や、天鳳を打ってもらった上で、指導と質疑をプロ講師に直接聞ける《オンライン実践添削レッスン》です。トークイベントや大会等、状況に合わせてオフラインイベントを復活させながら、将来的にはオンラインコンテンツを主軸にしていかなければとは思っています」
自分がやりたい仕事を目指す人へ
「やりたい仕事目指すのは自由ですが、責任をともないます。自由だからこそ、どこまでやるのか、どう責任を取るのか。自由と責任のバランスを理解しながらやっていけば、どんなことにもチャレンジできると思います」
好きな言葉は
「“縁”という言葉です。人の縁があって今があると思うので、縁を大事にし、縁をつなぐようなことをし続けたい。私自身、いろんな業種の人との交流を通じて仕事につながって来たので、縁が生まれる場を作ることがライフワークとして一番好きですね」
インタビューを終えて
社員ひとりひとりのワークライフバランスの充実を目指している石山さんは「ストレスを感じるものを減らしたほうがパフォーマンスは出しやすいと思いますし、IT業界はリモートワーク環境が整っているので調整しやすい」と考えている。
実際、麻雀に集中出来る環境を得るため、2019年に入社した醍醐大プロは、2021年1月に所属団体の最高峰タイトルである第45期最高位を獲得した。
企業と麻雀プロが契約を結んで競い合うMリーグが創設されたとはいえ、麻雀プロとして対局だけで生計を立てられるかどうかは、将棋や囲碁の世界と異なり、まだまだ厳しい現状がある。それを理解し、縁が生まれる場を作るという発想を持つ石山さんのような経営者や企業が現れれば、麻雀プロという生き方に、今後さらに脚光が当たるかもしれない。
◎写真:PPP's、河下太郎(麻雀ウォッチ) 、インタビュー構成:福山純生(雀聖アワー)
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