第六章 迷彩
(1)「読み」「迷彩」と、現代麻雀にはあまり似つかわしくなさそうな項目が並びますが、「迷彩」についても「読み」と同様、利用した方が有利になるのであればそうすればよいというだけです。ルールの範疇で使えるものは何でも使うという姿勢が勝つためには必要です。
従来の麻雀観を浸透させたプロ雀士と言えば、小島武夫氏の名前が思い浮かぶ方も多いと思われますが、実は氏は意外にも自らの打ち筋を、「スピード打法」と名乗っています。テンパイまでのスピードでは遅れをとっても、迷彩によって他家から出アガリしやすい待ちで待つことで、アガリまでのスピードではかえって勝るというものです。
「目先の受け入れより、アガリに近い段階における受け入れ優先」。「もっと勝つための現代麻雀技術論」にて再三申し上げてきましたが、他家からの出やすさも受け入れの一種と言えるので、迷彩を施すというのも、考え方としてはむしろ合理的と言えるのではないでしょうか。
ただし問題なのは、効果的に迷彩をかけられるケースというのは、かなり限定的であるということです。特に例の牌姿のように4面子1雀頭の候補が揃ってない段階で迷彩を考慮して中張牌を先切りするのは徒に手牌の価値を下げるだけです。今回はタンピン234三色や一通まであるので尚更です。あくまで、基本は4面子1雀頭であるということを押さえたうえで、どのような時に効果的かを検討していきましょう。
(2)完全1シャンテンに取れる牌姿であえて取らずに先切りして、リャンメン×2の1シャンテンに取る理由として、「安牌残し」以外に「迷彩」が挙げられることもあります。
ただし、安牌残しとしての完全1シャンテンからの先切りが、一般論としてはあまり有効ではなかったのと同様、迷彩としての先切りが有効になるケースも限定的です。
何故なら、メンゼン手の場合は「メンゼンツモ」の1翻があるので、リャンメンテンパイなら多くの手牌はリーチすることで他家が降りて出アガリが期待できない方が、アガリ率では落ちてもアガリ時の打点が上がり、また失点の機会が減るので局収支では勝るからです。リーチであれば多少出やすい待ちになっても、現物を切って完全にベタ降りされてしまうことが多いというのもあります。
逆に言えば、メンゼンツモの1翻が付かない(鳴き手)、高打点が狙える(他家が降りることが損になりやすい)、迷彩をかけないと警戒されやすく、逆に警戒されなければ比較的出やすい(鳴き手の場合はテンパイ以前の段階でも、迷彩をかけることで他家から鳴きやすくなる効果がある)といった条件が揃った場合でしょうか。例の牌姿はまさにそのような条件を満たしているうえに、もも残り1枚。ここまで条件が揃えば先切りがよいのではないでしょうか。
実戦で効果的に使える例はなかなかありませんが、絞られなければ比較的鳴きやすく、高打点が狙える手牌が入った時は考慮したいですね。
本記事に関するご紹介
ツキ、流れ、勢いといったあいまいな表現を嫌ってきた著者の明晰な頭脳で、麻雀を論理的に限界まで語りつくされてます。