第二章
16 麻雀順位予想計算機によると、東1に4000オールをツモアガリした場合のトップ率は53.7%、7700を出アガリした場合のトップ率は42.4%。12000出アガリの場合はトップ率52.7%です(ちなみにラス率はそれぞれ、5.1%、9.5%、5.0%)。
確かにトップ狙いにとってはツモアガリ、ラス回避狙いにとっては出アガリの方が有力になるとは言えますが大差あるわけではなく、「ツモアガリ重視か出アガリ重視か」を意図的に選べる手牌は多くないので、意識して判断を変えるケースはあまりないと思われます。
ただし、本書で指摘されているように、ラス回避重視のルールにおいては多少リードするだけでもラス目以外の他家が小場で局を進めることが多くなるということも考えられます。現状のシミュレートではそこまでは反映できないので、この辺りは今後の課題と言えます。
17 昨今の麻雀戦術の急速な発展は、「高速道路」に喩えられることがあります。一方、なかなか研究が進まない分野も多々あります。喩えるならば、自力で歩くより他ならない、「獣道」というところでしょうか。
「獣道」しかない時代であれば、より足腰を鍛えている打ち手でなければ勝ち進むことは難しいですが、「高速道路」であれば、その範囲内であれば誰でも容易に勝ち進むことができます。「量産型デジタル」とは結局、足腰を鍛える前に高速道路に乗っかった打ち手というところでしょう。
画一的な打ち方では勝ち切れないからという理由で、「高速道路」そのものを否定する声が挙げられることもありますが、原因は道路の方ではなく、足腰が弱いことにあるのではないでしょうか。
「足腰」についても、本書で言うところのアナログ的判断というよりは、むしろもっと基本的な、「場の情報を見落とさない能力」「局面に応じた牌の価値を見極める能力」といった認識力や、「ミスせずに打ち続ける能力」「思わぬ抽選や結果に惑わされない能力」といった体力や精神力の方が重要ではないかと私は考えています。
何故なら、アナログ的判断を要する問題については、実力者同士でも見解が結構分かれることが多いですが、認識力の高さに関しては、実力者であれば誰しも兼ね備えているものであるからです。
18 統計データを鵜呑みにすべきでないというのもよく聞きますが、鵜呑みにすべきでないのは、「この局面で統計データをそのまま適用してよいか」という判断の方です。統計データを判断の軸にしてこそ、「実戦でいつ判断が覆るか」に目を向けやすくなります。統計データと個別の状況判断。両者は車の両輪のようなものです。
何切る2 打 危険牌を切って受け入れ最大と、安全牌を切って1シャンテン維持を比較する場合は、「次に不要な無スジを引いても押すか」で判断しています。
今回は悪形残りとはいえ親で仕掛けがきき跳満以上まで見込める手なので次の無スジでもまだ押し。もちろん切り出す牌の危険度がかなり高いなら別ですが、もワンチャンスなので問題ないとみます。
何切る3 打 親は、メンゼンテンパイを目指していて面子がタンヤオ含みに変化したために鳴いたというところでしょうか。
それなら最後の手出しと合わせて、ドラをトイツで持たれている可能性がそれなりにあり、片アガリの形でが当たるパターンも完全には否定できません。
とはいえ、こちらはまだアガリ目も十分に残っている1シャンテン。で当たるのをレアケースとして切り捨てるほどではないかもしれませんが、それでも押しで問題ないとみます。
本記事に関するご紹介
デジタル麻雀は少ない定理を用いて麻雀を一般化し、簡略化された戦術を生み出そうとするものですが、ASAPINの考えはむしろその逆。一般化を拒み、カオスに近い麻雀というゲームに真摯に対峙し、わずかな優劣の差を個々のケースに応じて見出そうとします。本書を読めば、現代麻雀の最高峰の姿、最も進んだ麻雀とはどういうものなのか、分かるはずです。