第三章
19 メンゼンと鳴きは対比されがちですが、メンゼンで手を進めるのも鳴いて手を進めるのも、アガリを目指すうえでの手段に過ぎません。
そう考えると、「麻雀はメンゼン」というのは、目的と手段を取り違えている言葉とも言えます。勝つ為にはルールの範疇であらゆる手段を取るべきですね。
20 天鳳位の中でもフーロ率20%代の打ち手と40%代の打ち手がいるように、強者の中でも判断が分かれ、鳴いても鳴かなくても優劣は大差無い問題も多いものです。
単純なフーロ率だけでなく、牌譜解析による詳細なデータを確認することをお勧めします。
フーロ率以外のデータと合わせてみることで、どのような局面でもっと積極的に鳴くべきか、あるいは鳴きを控えるべきかも見えてくるようになります。
21 「安くて遠い(なおかつ守備力が低い)鳴きはしない」とよく言われますが、安くて遠い手だから鳴かないと決めつけず、鳴いていけるようになる手組を目指すようにすることで、放銃率を抑えつつアガリ率を上げることが可能になります。
「安手で3フーロは避ける」ともありますが、仮に2フーロして1シャンテンであれば、安手で3フーロになるとはいえテンパイに取れる牌は鳴くべきです。問題はそれまでの2フーロが本当に鳴いた方がよかったのかにあります。
1面子1雀頭あるところから鳴き始めれば2フーロまでにテンパイするので、逆に言えば、面子、雀頭が無いところから鳴ける牌が出た場合は、安くて守備力が低い仕掛けになる場合は鳴きを控えることも考える(スルーするとそこで面子を作ること自体が厳しくなるようなら鳴くのは有り)というところでしょうか。
遠くて守備力に難が残る鳴きでも、「他家から見て押しづらい」のであれば、実質的に守備力が残るものとして鳴く手もあります。いわゆるブラフの類ですが、その後うまく面子ができるようであればアガリ、テンパイも目指します。「安くて遠い鳴きはしない」は分かりやすいセオリーではありますが、これだけでは「鳴かなかった場合」との比較をしてないので正しい判断とは限らないことに注意したいですね。
22 牌図1からのチーは、「遠くはないけど、(リャンメンが片アガリの形になるので)大して早くなってないうえに打点が大きく下がる」のでスルーします。
「鳴かないと間に合わないから鳴く」というのもよく聞きますが、これも、「鳴くことで他の面子候補が面子になりにくくならず、なおかつ守備力が残る」のが前提。
鳴いてもさほどアガリやすくならないなら、低確率とはいえメンゼンでより高打点の手に仕上がる可能性を残しつつ守備力を維持できる方が有利です。
「他家に読まれやすい」というのも「鳴くことで他の面子候補が面子になりにくくなる」と言い換えられます。
ここでも「○○は避ける」という形で本書では取り上げられていますが、あくまで「鳴かなかった場合との比較」で判断すべきなので、読まれやすい仕掛けは、手牌だけみれば急所にみえても仕掛ける基準をやや厳しめに見積もるくらいにとらえていただければ結構かと思います。
本記事に関するご紹介
デジタル麻雀は少ない定理を用いて麻雀を一般化し、簡略化された戦術を生み出そうとするものですが、ASAPINの考えはむしろその逆。一般化を拒み、カオスに近い麻雀というゲームに真摯に対峙し、わずかな優劣の差を個々のケースに応じて見出そうとします。本書を読めば、現代麻雀の最高峰の姿、最も進んだ麻雀とはどういうものなのか、分かるはずです。