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ネマタの戦術本レビュー第178回「フリー麻雀で食う 上級雀ゴロゼミ 著:雀ゴロK その28」

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三限目 講座10

 前回までは1シャンテンから押すべきケースでした。今回からは、テンパイからでも押さないケースに入ります。

 極端な話、相手の待ちが一点で読めるのであれば、差し込みが目的でないのならどんな手牌でテンパイしていても切らない方がよくなります。もちろんリーチの待ちを一点で読む事は、1シャンテンで何を引いてテンパイしたかによって待ちが変わり、何を引いたかを知ることはできない以上不可能です。特定の面子候補を持っていると読めるのでないなら、リャンメンに当たる組み合わせが2通りある両無スジ456であっても、全体でみた場合は放銃率15%を大きく超えないので、リャンメンテンパイなら多くの場合のみ手でも押せます。

 しかし、全部突っ張ると決めつけるのは考えものです。何故なら危険牌を通せば通す程、次に危険牌を引いた場合の放銃率が高くなるうえに、残りスジが少なければ少ないほど、次に通すことになる無スジの放銃率も大きく上がるからです。

 今回は残りスジから放銃率を計算すると2/7×100で約28%。実際は必ず良形テンパイとは限らないのでここまで高くはないですが、両無スジであっても中盤なら精々放銃率15%程度というのは、リーチの待ちの1/3程度は悪形であることが前提の話なので、良形テンパイの可能性が高いとなると無スジの放銃率が急激に上がることがお分かりいただけるかと思います。

 残りスジが少ないほど、次に通すことになる無スジの放銃率が大きく上がる(両無スジなら尚更)というのも重要です。例えば必ずリャンメンテンパイのリーチに残りスジ10本となると、無スジ2378の放銃率は10%ですが、1本と通って残り9本になっても約11.1%と1%程度しか変わりません。放銃率1%の差で押し引き判断が変わることは考えにくく、仮に判断が変わったとしてもその場合は押してもそこまで損にはなりませんし、逆に残り10本の時点で降りてしまってもやはりそれほど損ではありません。

 しかし残りスジ5本となると、1本通ることで放銃率20%が25%と5%も増加します。こうなると、それまで辛うじて押せるくらいの判断だったのであれば、1本通るだけで押すのが大きく損になってしまいます。多くの場合テンパイから押せると言っても、テンパイでも降りるべきケースまで押してしまうと大きく損をすることが多い一方、多少降り気味に打つ分にはそこまで損をしないということがお分かりいただけると思います。

 押し有利であればギリギリまで押すというのが理想ではありますが、押し引き判断に自信がない場合は、テンパイからでも降り寄りになるケースを意識し、一歩手前で降りるくらいのつもりで打った方が戦績もよくなると思います。

講座11

 残りスジの少なさ以外にテンパイからでも降りる要素として頻出するのは、残り局数が少ない場合の点数状況です。特にアガリによるリターンが小さいということの方が、放銃のリスクが大きいことよりも降り有利の要因になりやすいということは、「バカ本」レビューその2の時にも申し上げました。

 アガリによるリターンが小さい局面というのはトップ目とは限らず、今回のようにトップと遠い2着目であることも多々あります。トップの価値が大きいルールだとこのようなケースでも押しガチになります。平場なら十分押せるだけの手であればなおのこと形にとらわれがちですね。前回、残り局数が少なくて着順争いをしている相手への押し引きについては、安手でも実質高打点とみなすと申しましたが、今度は逆に、高打点であっても実質低打点とみなして押し引き判断をすると分かりやすいです。
 

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この記事のライター

ネマタ
浄土真宗本願寺派の僧侶。麻雀戦術サイト「現代麻雀技術論」の著者。
同サイトは日本麻雀ブログ大賞2009で1位に。
1984年佐賀県生まれ。
東京大学文学部中退。

著書:「勝つための現代麻雀技術論」「もっと勝つための現代麻雀技術論 実戦編

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