テーマ2「対リーチにどのくらい押すか」
本書の牌姿であれば、安牌が十分あったとしても中盤過ぎまでは無筋2378は押し。両無筋456となると微妙ですが、今回は現物が1枚のみで通っていない牌が少ないこともあり押すことが多そうです。
「1シャンテン押しは悪」というのは、「先制テンパイなら悪形でも即リーチ」「降りるなら現物から切って徹底して降りる」というセオリーともつながっています。当時は悪形テンパイの価値が低く見積もられ、比較的良形高打点になりやすい1シャンテンは、たとえ後手であっても価値が高く見積もられていました。そのため、先制テンパイでも悪形なら放銃を恐れてリーチしないにもかかわらず、良形高打点の可能性が一応ある程度の1シャンテンだと後手からでも通ってない牌を半端に切ってしまう打ち手が多く見られました。従来の誤った価値観の影響を受けている打ち手が多いからこそ、「1シャンテン押しは悪」ということが強調されてきたわけです。
ベタ降りした時の収支を±0で計算している考察がどこのものかは不明(少なくとも『科学する麻雀』ではない)ですが、『科学する麻雀』でも、ベタ降り時は安牌が無くなって放銃することが無い、他家のリーチの平均打点がツモ込みのものになっていて実際の放銃平均点より高い、押す場合は最後まで押すことが前提で、途中で降りる選択は考慮しないといった、1シャンテン押しが不利になりやすい前提で計算されていました。そのような経緯もあり、最近麻雀を覚えた方は1シャンテン押しが苦手と思われている方が多いかもしれません。押し引き問題は結論が出にくい微妙な問題も多いですが、今回本書で取り上げられているような、「押すことで安牌が増える場合」「降りても安牌が増えなければ次に切る牌は押したときと同じ牌である場合」については、ひとまず一旦押してその後押すかどうかはその都度局面から判断していくという選択が有力であることは押さえておきたいところです。
・ 無筋の本数を数えるか
数えられるならそれに越したことはありませんが、他の要素も合わせて考慮したうえで押し引き判断をするのはなかなか困難です。「通ってない牌が多い」方は数えなくても見れば分かることなので、私は基本的に押す手をテンパイしている場合に、「かなり待ちが絞れていないか」にだけは注意するようにしています。
・ 点数状況で押し引き判断はどう変わるか
トップ目は引き気味、ラス目は押し気味と言いますが、実際はトップ目なら引き気味、ラス目なら押し気味に打つのは低アガリ率高打点のケース。本書でも触れられているように、高アガリ率低打点の手をリードしているという理由で降りすぎる、逆に低アガリ率低打点の手をラス目だからという理由で押し過ぎてしまうミスはありがちです。区別をつけたうえで押し引き判断に反映させるようにしましょう。「もっと勝つための現代麻雀技術論」第198〜199回でも同様の内容を取り上げさせていただきました。
・ ルールによって押し引き判断を変えるか
今回は元々1シャンテンとはいえ押し寄りの牌姿だったというだけで、実際は手作り以上にルールの影響は大きいと考えます。ただし、局面に応じた対処が出来ていれば、敢えてルールに言及しなくても正しく押し引き判断ができることが多いというのは確かです。「ルールによって打ち方が変わる」と言うよりは、「ルールによって特定局面の生じやすさが変わり、局面によって打ち方が変わる。局面は同じだがルールそのもので打牌選択が変わるというケースは多くない。」と言うのが正確です。ややこしい言い回しになりましたが、両者をひっくるめて、「ルールによって打ち方が変わる」と表現されている例を多々見かけるので気になっているところです。
・ 他家の打ち筋によって押し引き判断を変えるか
先切りやツモ切りリーチといったケースは、他家の打ち筋によって切る牌の放銃率に明確に差が出ることもあるので判断が変わることも十分有り得ます。私もどちらを選んでも大差なさそうなら、相手の読みの裏をかける分有利とみて先切りやツモ切りリーチを用いる場合もあります。ただ、他家から出アガリできて一見成功したように見えても、実はツモアガリできていて打点的に損していたケースもあるので、あまり小手先の技術には頼らない方がいいかもしれませんね。
本記事に関するご紹介
そこで、それぞれの分野の天才に麻雀のことを聞いてみた。