- 『ネマタの戦術本レビュー』は、麻雀戦術サイト「現代麻雀技術論」の著者・ネマタさんによる戦術本レビューです。
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当レビューは書籍の内容に関するネマタ氏が当書の回答に異論があるもの、追記事項があるもの、または更に掘り下げたい部分等を取り上げます。姿牌、局面については書籍を購入してご確認下さい。
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第2章 スタンダードな押し引き
ツモ切りリーチ
①持ち点による「どっちでもいい化」
麻雀AIが一見非合理的なツモ切りリーチを打たれることに驚かれる人もいらっしゃるかと思いますが、将棋AIは同一局面であっても、評価値から「どっちでもいい」と判断した場合は指し手をランダムに選びます。そうなると、この局面ではリーチでもダマでもどっちでもいいので、一旦ダマにしたものを途中でリーチに切り替えるということも有り得ます。今回は特段状況の変化が見受けられないので、まさに「どっちでもいい」のでリーチしたと考えられるのではないでしょうか。
人間が強くなるためにも「どっちでもいい」と判断できるようになることは非常に重要です。どんな時にどっちでもいいかが分かっていれば、明確に優劣が分かれるケースでより精度の高い判断を下すことができるようになります。
②危険牌止めリーチ
今回は南家の副露という明確な状況変化があります。がかなり切りづらく、かといってこちらもテンパイなら完全に降りるほどではないので
は押し。出アガリがきくテンパイではないのでリーチ。言われてみれば納得というところですが、止めた危険牌で単騎リーチはいかにも分が悪そうに見えてしまうもに。しかも手変わりとしては絶好の
を引いたのですからなおさら。局面は線で把握しても、打牌比較は点で考える必要があることを改めて認識させられます。
③弱愚形から強愚形へ
5巡目なら良形への変化だけなら8種程度、1翻アップの変化があれば良形への変化だけの場合やや少ない程度でも手変わりを待てるというのが一つの基準。つまり良形変化を1点、1翻アップを1点+αとして8点程度あれば手変わり待ちを考慮することになります。2翻アップのツモは2点+αから3点、そのままツモアガることもフリテンリーチも打てるツモ
は1点+αより高く2点程度。
とのシャンポン待ちになるツモ
が1点、赤引きが2枚あるので1点弱とすると、8点に届くかどうかというところ。手変わりの質が落ちたのでツモ切りリーチも妥当なところでしょうか。
中終盤になると手変わりを待てる牌姿は大幅に減りますが、今度は失点回避のためのダマが候補に上がります。このあたりの判断はまだまだ難しいので今後の研究が待たれます。
④手役の見切り
2翻アップの、フリテンリーチ狙いの
。これだけでは明らかに手変わりが足りないのでフラットな局面ではまずリーチするところ。今回くらいのダンラスであってもオーラス親番なら微妙とSuphxは判断したようです。
の先切りで
の出アガリ率を高める手筋をAIが駆使しているというのもなかなか感慨深いですね。
⑤モギリー想定
ダマでも満貫クラスのテンパイのケースも状況変化でツモ切りリーチに切り替えるケースがそれなりにある手牌。私なら何度やってもカンダマを選びそうですが、高打点同士の比較なのでシャンポンダマからの状況変化でツモ切りリーチも一考というところでしょうか。恰好としては「モロヒスジを嫌った」ように見えますが、リャンメン変化が薄くなったというのもリーチに切り替える理由になるので、空切りできる牌を引いた場合に果たして空切りでリーチしたのかも気になるところです。
世界最強麻雀AI Suphxの衝撃
世界最強の麻雀AIを人間のトッププレイヤーが本格解説!
2019年6月、麻雀AIで初めて天鳳十段に到達し話題をさらった「Suphx」(スーパーフェニックス)。
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本書はその端緒となるもので、最強のAIである「Suphx」を人間界のトップといえる天鳳位を獲得したお知らせ氏が徹底的に解説するのものです。
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ぜひ本書で「Suphx」の強さの秘密と、麻雀というゲームの深淵を味わってください。
●目次
第1章 強くなること
第2章 スタンダードな押し引き
第3章 中盤のスリム化
第4章 序盤の方針
●著者プロフィール
1989年9月18日生まれ。
神奈川県横浜市出身。東京大学工学部卒。
第14代四麻天鳳位。
著書 「鬼打ち天鳳位の麻雀メカニズム」(マイナビ出版)
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