前回の「流し満貫」は河で作る役ですが、河で作る役として名前だけは有名なのが、他家の河を真似ることで作る「真似満」です。
私が真似満の存在を初めて知ったのは、西原理恵子氏の「まあじゃんほうろうき」に出てくるエピソード。その時は「真似満」ではなく、「チンリプティ」という名前で出てきました。まだ麻雀を覚えて間もない西原さんに、友人が面白がって「親の捨て牌を5巡真似たらチンリプティといって役満になる」とでまかせを言い、それを鵜呑みにした西原さんが恥をかくというオチでした。
後から真似満という名前を聞いて、チンリプティは別名なんだなと思ったのですが、「チンリプティ」という名前、いくら調べても「まあじゃんほうろうき」以外の出典が見当たりません。真似満ではいくら何でもあからさまだから、それっぽい名前を友人がでっちあげたのでしょうか。全くもって謎です。
真似満には他にも謎が山ほどあります。役の都合上真似満が出来るのは子に限りますが、真似る対象は親の河なのか、上家の河なのか、誰でもいいのか。鳴きが入ったらどうなるのか。1巡目から5巡目まで真似ると満貫とされることが多いが、それ以上真似るとどうなるのか。真似満が成立した場合に点棒はどのタイミングでやり取りするのか。成立した後も局は続行するのかどうか。真似満成立の牌でロンされた場合に真似満は成立するのかどうか、あるいはアガリと真似満が同時に成立するのか…調べてみてもこの辺りの説明がされている記述を見ません。
流し満貫はたまたまヤオチュウ牌を多くツモってきた時に、中盤以降意識する役なので採用の有無で打ち方がそれほど変わるわけではありませんが、配牌から意図的に狙わないと作れない真似満を採用するとなると打ち回しがまるで変わります。そのため、競技の場ではもちろん、雀荘でも採用されているという例をまず聞きません。
しかし最大の謎は、採用例をまるで見ないのに、名前だけは有名ということ。これは私の経験ですが、麻雀は仲間が集まった時にたまに打つ程度という相手と麻雀を打つと、必ずと言っていいほど、「真似満ってアリ?」と聞かれました。どうしてたまに卓を囲む程度の人がこの役の名前を知っているのか。もしかしたら私が知らないだけで、仲間内で打つ時は真似満を採用するという集団が結構いるのかもしれませんが、謎は深まるばかりです。
真似満つながりで思い出したエピソードを一つ。学生時代東京に居た頃、別の大学に進学した高校の同級生二人と偶然渋谷で会うことがありました。とりあえず麻雀でも打つかとなり三人で渋谷のZOOに入店。実はこの時、私含めて全員が三人麻雀は初めて。からを抜くことだけは辛うじて知っていたのですが、他はとりあえず四麻と一緒でいうことで、何と「チー有り三麻」を始めたのでありました。
この時ルール確認で「真似満アリ?」と聞かれ、それが初めてのことではなかったので「アレってそんなに有名なんだ」と驚きつつ、「アリなわけないじゃないか」と返したのですが、真似満よりも三麻でチー有りの方がだいぶエキセントリックだったなと、昔のことを今更ながら思い出したのでありました。