前回は「三色と一通」「一通とチャンタ」の両天秤を取り上げましたが、三色、一通、チャンタの共通点と言えば、メンゼンで2翻、鳴くと食い下がりで1翻であること。昨今のドラが多い麻雀においてはやや物足りなさを感じます。現代麻雀はやはり、ドラを使って素早くリーチしてツモるのが王道と言えるでしょう。
しかし、麻雀にリーチが導入される前の歴史からすると、「2翻役だが鳴くと食い下がりで1翻」と言うよりは、「1翻役だがメンゼンだと2翻」と言った方が近いかもしれません。リーチ麻雀が導入される前、アルシーアル麻雀では役満とチンイツ(3翻)以外は全て1翻役。リーチやドラが無いのはもちろん、三色も役として存在していませんでした。
リーチ麻雀が普及する過程でドラが導入され、ドラによってアガリ点が高くなるにつれて、手役の数も増え、翻数も上方修正されました。とりわけ、それまで採用されなかった手役で、しかも一通やチャンタよりできやすい三色がメンゼンで2翻となれば、「手役の華」と持て囃されるのはむしろ自然なことではないでしょうか。
やたらと三色ばかり狙い手数が少ない打ち手が、「昭和の麻雀」「三色が4翻のルールで打っている」と揶揄されることもありますが、個人的には、そのような打ち手が狙う三色は、現行ルールで損とはいえ分からなくもないと感じます。古いと言っても、平成も30年続いたので現在書店で見られる麻雀本はほとんど平成になってからのものです。
「ここから三色を狙うのは遅い」と聞くと、平和テンパイだけどメンツがスライドすると三色に手変わりする程度のものをイメージしがちですが、文字通りの意味で昭和の麻雀本には、アガリに結構近く、ピンズが1枚も無い手牌から、ピンズをツモった時の三色を意識せよといった、「見ている三色を追う」のではなく、「見えないところに三色を見出す」昨今の戦術書で学ばれた方が見たらきっと腰を抜かすであろう「三色狙い」が多々見られます。
個人的には三色を結構狙う方なので、「麻雀に三色はない」という考え方に否定的でしたが、当時の麻雀本の内容を知る人向けのアドバイスとしては適切であったということに気付かされました。どんな主張も、その主張がなされるに至った背景を知っておきたいものですね。