シャンテン数は、ふつう、小さい方が嬉しいですよね。3シャンテンよりはリャンシャンテン、リャンシャンテンよりはイーシャンテンの方がありがたい。
ですが、同じシャンテン数でも、形によってかなりの差があります。
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どちらも3シャンテンですが、上はリャンメン2つで軽やか、打点も十分でよだれが出そうな手。下はペンチャンとカンチャンだらけで、打点上昇も厳しそうです。これは極端な例ですが、単純にシャンテン数だけで判断するとあやういですね。
今回ご紹介するイーシャンテンにも、いろいろなパターンがあります。
国士無双とチートイツを除くふつうの手では、
1 くっつきイーシャンテン
2 ヘッドレスイーシャンテン
3 2メンツのイーシャンテン
にわけて考えると、わかりやすいです。
テンパイしやすいランキングは、一般に、1→2→3の順です。
1 くっつきイーシャンテン
のように、メンツ3つとアタマができでいて、孤立牌が2つある形です。
この手では、の11種類を引けばテンパイします。
孤立牌に、近くの牌がくっつけばテンパイするので、「くっつき」と呼びます。
一般には、「くっつきイーシャンテン」より「くっつきテンパイ」といわれることが多いです。まだイーシャンテンで、正確にいえば「ここから1つくっつけばテンパイ」なのでしょうが、「くっつきテンパイ」は語感がよく呼びやすく、定着しているのだと思います。
孤立牌が真ん中の牌なら、2つ離れた牌まで幅広く有効牌になるので、とてもテンパイしやすく、一刻も早く先制リーチを打ちたい時、終盤で形式テンパイをとりたい時などにありがたい形です。
ただ、テンパイ時の待ちが、リャンメンにならない時が多いのは弱点です。上の形では、を引けばカンチャン待ち、を引けばシャンポン待ち、を引けばタンキ待ちになります。つまり、11種の有効牌のうち7種は、好形の待ちになりません。
くっつきイーシャンテンは、テンパイは速くできるけれど、必ずしもアガリやすいとは限らない、と認識しておきましょう。
2 ヘッドレスイーシャンテン
のように、メンツが3つあり、アタマが決まっていない形です。アタマがないので、ヘッドレスといいます。日本語で「アタマなしイーシャンテン」でもいいじゃないかと思いますが、やや言いにくいですし、なんか欠陥品みたいな弱い語感になってしまいますね。
実際のところ、この形はまったく弱くなく、たいへん強力です。
上の手では、
を引けば、それがアタマになり、リャンメンでテンパイします。
を引けば、4つめのメンツができて、タンキ待ちでテンパイします。
タンキ待ちは嬉しくはないですが、その後アガリやすい牌に変えることができますし、メンツにくっつけばノベタン待ちや亜リャンメンなど待ちが増えることもあります。上の手では、を引いてを切れば、いったんのタンキ待ちでテンパイしますね。
ただ、その後を引けばのノベタン待ちになりますし、を引けば、の三種類のタンキ待ちに切り替えられます。
いったんタンキ待ちになっても、自由に好きな牌に変えられるので(牌をころころ変えることを「タンキコロコロ」ということもあります)、それほど悪いわけではありません。
ヘッドレスイーシャンテンは、奥が深く、組み合わせによって有効牌が飛躍的に増えることがあります。
ですと、有効牌はの14種類もあります。しかも、テンパイ時の待ちの形も良いですね。
こんな理想形は、実際にはあまり見かけないですが、こうなると「くっつきイーシャンテン」よりも強いといえます。
ヘッドレスイーシャンテンの扱いは、実力差が出やすいところです。上手な人は、手組みのなかでこの形を意識しています。上級者と対局して、「なんだかいつも先にリーチを打たれ、しかもだいたい好形待ちで、かなわんなあ…」と感じる大きな理由の一つです。
ふつうは、アガリに近づくにつれ、有効牌が減っていきます。4シャンテンから3シャンテンは簡単ですが、イーシャンテンからテンパイするのは狭き門です。「あと1つ来れば!」と思いながら引けず、じりじりした経験は誰しもあると思いますが、ヘッドレス形は、その狭い門を大きく広げてくれる魅惑の形なのです。
上級者の牌譜を見たり、放送対局を見たりして、ヘッドレスイーシャンテンまでの過程に着目してみると、大いに実力アップにつながると思います。
3 2メンツのイーシャンテン
もっともよく見かける、下のような形です。芸能人格付けチェックでいうと、これまでの2つは一流芸能人なのに対し、これは普通芸能人というイメージです。
アタマと2メンツができており、ターツが2つあります。
リャンメン2つで嬉しい形ですが、テンパイへの有効牌はの4種類だけです。
くっつきやヘッドレスに比べて、かなり少ない印象です。
麻雀牌34種類のうちの4種類を引く確率は、単純計算では 4÷34で、11.8%です。野球で、打率1割ちょっとの選手が打席に立ったら、あまりヒットは期待はしにくいですよね。それと同じで、この形から何巡もテンパイできないことも、珍しくありません。
また、リャンメンターツ2つなら良いのですが、カンチャンやペンチャンがあると、さらに有効牌は少なくなってしまいます。普通の芸能人よりさらにランクダウン、という感じです。
とはいえ、実戦で最もできるのは、この普通のイーシャンテンです。十分ありがたい形なので、基本としておさえておきましょう。
話は変わりますが、近年、「イーシャンテン」の「イー」を省略して、単に「シャンテン」ということもあります。「ここはシャンテンをとりますかね」「シャンテンを維持しましょうか」などと耳にしたら、いずれも「イーシャンテン」のことです。
このような言葉の移り変わりは、大変興味深く、新聞業界でもよく話題になるテーマの一つです。例えばかつては「全然」という言葉は、「全然食べ物がない」というように、否定する文章に使うものとされていました。しかし今では、「全然大丈夫」と普通にいいますし、新聞記事のなかでもよく使われています。言葉は生き物なので、麻雀に関する用語も、今後さらに変化していくかもしれないですね。
次回は、この2メンツのイーシャンテンの一つ、「完全イーシャンテン」について考えます。