前回までのDAY1・2で、全44人のシンデレラのうち11人が登場し、4人がラウンド16進出を決め、その陰で7人が涙をのんだ。
今回のDAY3では新たに8人のシンデレラが登場し、そのうちの3人が脱落の憂き目に遭った。残る5人はシード選手の待つDAY4へとコマを進める。
DAY3までの合計9半荘を見て、ドイツの哲学者、アルトゥル・ショーペンハウアーの名言を思い出した。
「強い人間は、自分の運命を嘆かない。」
敗退し、脱落となったシンデレラたちは皆、卓上で必死に運命に抗う。早いリーチを受けて慌てふためき、当たり牌をつかまされて戸惑い、自身の待ち牌は他家に厚く持たれて山には残り少ない。放銃すると裏ドラが乗って、先切りは間に合わず、勝負手が横移動で流れてしまう。
対局後のインタビューでは、涙を流すシーンすら見られるものの、しかし最後は必ず前向きなコメントと笑顔を残して会場を後にする。これがシンデレラたちのたくましさとも言えるし、麻雀の面白さとも考えられるし、シンデレラファイトシーズン2の見どころとも表現できる。
まずは♯1から見ていこう。
#1 成海有紗 加藤利奈 音無愛音 佐藤まひろ
#1東:成海有紗 @ari_mj_
#1南:加藤利奈 @rioa2004
#1西:音無愛音 @anonnpm
#1北:佐藤まひろ @mpy1221
「まっぴー」こと佐藤まひろは、丁寧に手を作ってじっと耐えていた。ドラも赤もない手を、12000に仕上げて、現状の3着目から一気にトップ目に立ちたかった。
佐藤は、二軒リーチを受けてなおシャンテン数を進めたものの、結果は4着目の「カトリーナ」こと加藤利奈のアガリ。
リーチ・一発・ピンフ・ドラ1は、1本場の親で12000は12300。それまでトップ目だった「あのぴー」音無愛音をかわして一躍トップ目に立った。
佐藤の立場で考えよう。南2局に入るところまでは、加藤がラス目で自分が3着目だったわけだが、南3局に入ったところで、ラス目が成海有紗に代わった。それだけのことだ。この3着目をキープすれば♯3へと進めるし、大物手が成就してトップでDAY4進出を決めることができるかもしれない。
南3局、佐藤はドラのをポンして発進。タンヤオは守備面で不安を抱えることが多い役だが、道中上手に安全牌をキープしながら、最後は両面の待ちテンパイまでたどり着いた。
しかし、最後は成海がをツモ。2000/4000で、ラス抜けに成功する。
南4局を迎えて、4者の点棒状況は下の通り。
東家・佐藤まひろ18800
南家・成海有紗22100
西家・加藤利奈30600
北家・音無愛音28500
恐れていたことが、ついに現実になってしまった。ラス目だった加藤・成海が相次いで満貫を決め、それぞれ点棒を持つと、入れ替わるようにして佐藤がラス目に転落。しかし、3着目の成海との点差はわずかに3300点で、これは佐藤の1人テンパイでも返る点差だ。
もしそうなった場合は南4局1本場を戦わなければならないため、一筋縄ではいかないが、佐藤はドラなし赤なしながら
渾身のシャンポンリーチを決行する。しかし、ライバルである成海はもちろんのこと、加藤・音無も丁寧に対応して、流局となってしまう。
最後は、逆転トップを目指して腹をくくり2副露した音無が、佐藤からカンをとらえて終局。1000は1300に供託1本を加えて、加藤との2100点差をひっくり返した。
音無は、チャンスがあると見るや、リスクを取って積極的に前に出る麻雀で、この♯1をトップ通過。♯3免除となり、DAY4まで力をためる。戦前にインタビューで語っていた「カッコええとこ見せれたら」が実現したのではないだろうか。
佐藤まひろ、深々と一礼してきびすを返す。
#2 彩世来夏 石田綾音 旭茅乃 佐藤芽衣
#2東:彩世来夏 @kona_ayase
#2南:石田綾音 @ishida_ayane
#2西:旭茅乃 @kk_7001300
#2北:佐藤芽衣 @midori___jan
続いて♯2。石田綾音が苦しんでいる。
「どんちゃん」こと旭茅乃のダマテンに刺さったことも寝耳に水だったし、
東2局0本場、親番でのリーチも、
南1局0本場のリーチも、
「こなたそ」彩世来夏に上手くさばかれた。
しかし、♯1の加藤・成海同様、石田もまたラス抜けに向けて死力を尽くす。
3着目の佐藤芽衣まで23100点も差があり、満貫ツモ2回でも届かないことが分かっている中、石田はペンを仕掛けると、広いイーシャンテンにツモでシャンポンテンパイ。チンイツは鳴くと満貫に下がるケースが多いが、今回はを使っているため跳満になるのも仕掛けた理由の1つだろう。
これに飛び込んだのが、シーズン1で緊急予選会を勝ち上がった現在トップ目の旭茅乃。試合後の反省会で「じゃなかったかもなぁ。」とこぼしていたが、
タンヤオ・ピンフ・ドラ・赤で12000のテンパイからなら、1枚押してもよかったんじゃないだろうか。
しかしながら、旭の受難は続く。
東家・佐藤芽衣27400
南家・彩世来夏32800
西家・石田綾音16300
北家・旭茅乃23500
ラス目の石田に対し、7200点のリードを持った状態で、親の佐藤にテンパイが入った。
しかし、旭はこれに気づかない。理由は、佐藤がリーチしなかったからだ。旭がに手を掛けると、
「ロン。12000。」
旭のTwitterを読むと、放銃した時の自身の表情があまりよくないという反省(?)があったけれど、ここはひとつ一種のエンターテイメントとして受け入れてもらえたらありがたい。すべての麻雀プレイヤーが共感する、共感せずにはいられない、「高いダマに刺さって痛い顔」の見本だった。
旭茅乃、南場のトップ目から12000点を2回放銃し、無念の脱落。シーズン1ではツモ裏条件を満たして緊急予選会を勝ち上がり、シーズン2では衣装や髪型にも変化を加え、視聴者を飽きさせない魅力があるシンデレラが、舞台をおりた。
最後に、シーズン1緊急予選会オーラスでツモ裏条件を満たした旭のスクショを1枚貼っておこう。次回シーズン3の前にまた見返すためにも。
#3 成海有紗 石田綾音 彩世来夏 加藤利奈
♯3では、♯1の2着・3着、♯2の2着・3着の4者が激突した。
♯2での戦いぶりもそうだったが、石田綾音に元気がないのが気になる。石田はフットサルをしていて、麻雀で言うところの「フリー雀荘」にあたる「個サル(1人で行ってフットサルを楽しめる場所)」に行ったこともあるというから驚きだ。それにしてもこのシンデレラファイトでは、不運な放銃が目につく。
石田はプロ3年目だが、非凡な嗅覚を持っている。
例えば東1局、加藤の仕掛けへの対応だ。加藤はポン・ドラのポン・ポンと三副露していて、残りがのシャンポンテンパイだった。
石田はそれらの仕掛けを一瞥すると、
このテンパイが入ってもは打たない。いわゆる「ビタ止め」とは言わないかもしれないが、危険牌の濃淡は的確に判断している。それでも、積まれた牌の順番は、石田を放銃へと誘(いざな)う。
東3局0本場、石田はドラ1の嵌リーチを打つ。トップ目であってもひるまず、リードを広げていく積極的な打ち方だ。
これが彩世への5800放銃。放銃牌はドラ表示牌のだった。
東3局1本場、石田はまたもやつかまる。を仕掛けた加藤に3900は4200の放銃。捨て牌はまだ1段目、6巡目の出来事だった。
南4局2本場を迎えて、4者の点棒状況は下の通り。
東家・加藤利奈32900
南家・成海有紗34800
西家・石田綾音14700
北家・彩世来夏16600
3着目彩世とラス目石田の点差はわずか1900点であることに加え、供託1本と2本場の600点が加点されることを考えれば、石田の条件はアガることだけだし、仮にアガれなかったとしても、石田テンパイ・彩世ノーテンで着順は入れ替わる。
ここに来て、どうにもならない配牌が入っても、それをオクビにも出さずに進行していくのが麻雀というテーブルゲームだ。
ここで、トップ目の成海にテンパイが入る。
でしかアガれないいわゆる片アガリの不自由な形ながら、南家の成海にとってはダブなので8000点。つかんだら即脱落のロシアンルーレットが始まった。
石田のライバル彩世にテンパイも入る。彩世は彩世で、♯3脱落阻止に向けて全力の仕掛け。カンをチーしてバックだ。
彩世がを引くかを引くかのロシアンルーレットだったが、
彩世がラス牌のを引いて♯3の3着を確保し、脱落は石田となった。戦前に語った「一戦でも長く」はいつわらざる本心だっただろうが、それはここにいる全員が同じ気持ち。筆者と同じ協会20期前期、プロ3年目の石田は、次回一回り大きくなって返ってくることをファンに約束して去った。
DAY4は、勤め先の麻雀BARシトラスで働きながら見ることになるのだろうか。もしくは最近特に力を入れているというYouTube【あやねむチャンネル】で同時視聴なんかもあるのかもしれない。
DAY4はシード選手を含め、また1牌の後先を巡る悲喜こもごもがあることだろう。「金曜日の夜はなんとなく白い服を着ている」というシンデレラがいたり、脱落が決まってもなお、勝ち残っている仲間たちにエールを送り続けるシンデレラがいたり、シンデレラファイトに出場したくてプロテストを受験する未来のシンデレラがいたり。多くの人々を巻き込んで、この物語は日々輝きを増していく。