- 『ネマタの戦術本レビュー』は、麻雀戦術サイト「現代麻雀技術論」の著者・ネマタさんによる戦術本レビューです。
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当レビューは書籍の内容に関するネマタ氏が当書の回答に異論があるもの、追記事項があるもの、または更に掘り下げたい部分等を取り上げます。姿牌、局面については書籍を購入してご確認下さい。
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第3章 中盤のスリム化
4.スリム化の引き出し
①攻撃的な先切り
スリム化の攻撃的な利点は「河作り」。パンパンに構えてリーチを打つと宣言牌を引っ張った理由が読まれて待ちが絞られやすくなります。
しかし、先切りは単にテンパイ率を落とすだけでなく、「先に埋まると河が弱くなる」というデメリットがあります。待ちが読まれてもアガリやすいリャンメン待ちが残る形に関しては、河作りを理由に先切りするほどではないでしょう。
河作りが有効になるのは、アガリ率が出アガリに依存しやすいスジ待ちや字牌待ちのケース。一般論としてスジ待ちは通常カンチャンと通常リャンメンの中間程度、字牌待ちは通常リャンメンと同程度のアガリ率になりますが、いかにも読まれそうな待ちになることも多々あるにも関わらずこれだけのアガリ率が見込まれるということは、河の良し悪しによってアガリ率が変動しやすいということ。テンパイ時の待ちの強さこそアガリ率に大きく影響を与えることを踏まえると、多少テンパイ率を落としてもテンパイ時のアガリ率を上げる「河作り」は案外有力なケースが多いとみてよいのではないでしょうか。
しかし先切りするかどうかはあくまで手牌次第。今回はが枯れているうえに残り1枚。スリム化にしろ半端押しにしろ、「実戦では縦受けが枯れていることもそれなりにあるが、一般論で考える際にはそこまで想定されない」ことが、実戦派の中では以前からよく見られた手筋が、研究が進歩するまでは軽視されがちだった理由であるように思われます。
②どこでスリム化するか
手牌の形は「23222」2。いわゆるメンツ候補オーバー。1つメンツ候補を落としてもシャンテン戻しにならないので安牌を残しやすいですが、どこから落とすかがまた迷うところ。手拍子でツモ切ってしまいそうですがAIの選択は打。理由は本書で考察されていますが、本当にその選択が最善と言えるのか、仮にそうだとして人間に再現できるのかと言われると何とも難しい話。今後の研究課題となりそうです。
③雀頭崩し
唯一の雀頭崩しは筋悪、安牌を残すにしても未完成のターツから落とす。スリム化の引き出しを増やす前にまずは押さえておきたい手組のセオリーと言えます。
雀頭を崩すことでドラ入りリャンメンが固定され、ドラを使わないと安手になりやすい、そのうえで他で雀頭が作りやすいと条件が揃えば候補に入るというところでしょうか。パンパンに構えているところから打点重視で雀頭を崩す例は何度となく見かけますが、今回のように既に安牌を抱えているところからの雀頭崩しは珍しいですね。再現できるかどうかはともかく、引き出しの一つとして押さえておきたいところです。
④あくまで土台は牌理
単純にアガリを目指すうえでもよりの価値の方が高いことに気付けたでしょうか。麻雀の研究が盛んになり始めた頃、スリム化は過小評価されがちでしたが、そもそも当時はまだ牌理に関する土台が十分出来上がっているとは言い難い環境でした。本書の内容と合わせて、牌理に関する学びも深めていきたいですね。
世界最強麻雀AI Suphxの衝撃
世界最強の麻雀AIを人間のトッププレイヤーが本格解説!
2019年6月、麻雀AIで初めて天鳳十段に到達し話題をさらった「Suphx」(スーパーフェニックス)。
天下のMicrosoft社が麻雀という不完全情報ゲームに殴り込みをかけてきたのです。「Suphx」の強さはもはや人間のトップレベルに達しており、他のボードゲームがそうであるように、麻雀も「AIから学ぶ」時代に突入しつつあります。
本書はその端緒となるもので、最強のAIである「Suphx」を人間界のトップといえる天鳳位を獲得したお知らせ氏が徹底的に解説するのものです。
お知らせ氏の筆致は処女作である『鬼打ち天鳳位の麻雀メカニズム』で証明されたように緻密にして正確無比。「Suphx」の打牌を咀嚼し、人間の知として昇華する上でこれ以上の適任はいないでしょう。
ぜひ本書で「Suphx」の強さの秘密と、麻雀というゲームの深淵を味わってください。
●目次
第1章 強くなること
第2章 スタンダードな押し引き
第3章 中盤のスリム化
第4章 序盤の方針
●著者プロフィール
1989年9月18日生まれ。
神奈川県横浜市出身。東京大学工学部卒。
第14代四麻天鳳位。
著書 「鬼打ち天鳳位の麻雀メカニズム」(マイナビ出版)
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