戦術本『麻雀の2択』のレビューを始めさせていただきました。こちらでは本書で取り上げられている、「データの泉」を元に思うところを徒然なるままに書かせていただきます。データの具体的な数値については、是非とも本書を購入のうえ御確認下さい。
「データの泉」95p
データ研究が始まった頃の押し引き基準は、リーチへの放銃打点をツモアガリ込みの平均点で求めていたので、実際より引き寄りの判断になっていたことは第86回でも申し上げました。しかし、リーチドラ1のカンチャン程度で危険牌を切って追っかけリーチしてよいという判断には違和感を覚えた方も多いのではないでしょうか。
今回のデータは、その違和感の正体の一つとも言えるでしょう。押し引き基準はリーチのリャンメン率が60%強であることを前提にしていますが、実戦ではリーチが高確率でリャンメンテンパイと読めることも少なからずあります。単に宣言牌が字牌というだけなら、手変わりよりは安牌を優先した悪形リーチ、あるいは第87回のようにチートイツのケースもあるので、リャンメン率が上がると言っても5%程度です。しかしこれが字牌のトイツ落としでリーチならどうでしょう。カンチャンやペンチャンがあるなら字牌のトイツよりそちらを切りそうなもの。トイツ落としから単騎待ちのケースも否定されるので、手役絡みでないならリャンメンテンパイの可能性がかなり高いと言えそうです。
もし相手が必ずリャンメンテンパイとするなら、こちらがカンチャン待ちでめくり合いをするとなれば、安牌を切ってテンパイだとしても和了:放銃=1:1。実際は危険牌を勝負することが多いため、リーチへの放銃平均点より打点が低いリーチドラ1では若干厳しく、ドラ2は欲しいところです。
字牌切りリーチなら、それまでに切られた数牌をまたぐ待ちの可能性が低くなるので、相対的にそうでない無スジの放銃率が上がるというのも引き寄りになる要素です。元々打点が低い手ほど、受け入れを狭めて安牌を抱える選択も増えることを踏まえると、先切りのまたぎ以外の無スジで当たる場合はドラを固めた高打点のケースであることが増えるというのもありそうです。
手作りや押し引きの基準をシステム化することはこれまでも色々な試みがありましたが、微妙なケースになるほどシステム化が難しいうえに、局面の違いで判断が変わりやすくなるので、基準そのものにこだわることはあまり得策ではありません。
「自分はまだ未熟だから基準通りに打つ」という方も見受けられますが、この手の判断は実力者であっても実戦で完璧にできているというものでもありません。自己評価は周りの環境に左右されやすいので、勉強する環境があり周りに実力者が多い人ほど自分の実力を過小評価しがちです。そのような方がわざわざ自ら学習機会を逃してしまうのは大変もったいないことなので、「未熟である」という自覚があるのであれば、むしろもう1段階上の判断についても学ばれることをお勧めします。