前回は手役の出現率を見てみましたが、今回は打点の出現率について見てみることにします。赤有りルールでは跳満、倍満のアガリが出ることも珍しくないとよく言われますが、データから見てもまさにその通りで、赤ドラを導入することで点数のインフレ化に拍車がかかっていると言えます。
しかし、跳満以上となるとそもそもの出現率が低いため、出現率が1.5〜2倍になっているとはいえ、全体で見た場合の比率がそれほど増えているわけではありません。また、跳満は満貫の3/2倍、倍満は跳満の4/3倍と、翻数の増加に対して打点の伸びが低いということからも、見た目は派手なアガリが増えるとはいえ、ゲーム性が大きく変わるとまではいかないことが分かります。
赤有りとはいえ、上位卓になるほど跳満、倍満率が下がるのも注目点です。成績上位者ほど無理に高い手を狙わない傾向があることは以前から言われていたことですが、天鳳のデータからも改めてうかがい知ることができます。
麻雀関連の動画を観ていても、人気が出るのはやはり派手で高い手をアガっているものが多いもの。オンライン麻雀においても赤有りが主流になっていったのも、そのような手をアガリやすいルールが受け入れられやすかったためでしょう。とりわけ技術が介入しているとも言えない高いアガリが頻発しているのを観ると、赤有りは初心者でも勝てる、腕の差が出にくいゲームというイメージを持たれる方が増えるのも無理はありません。
しかし、赤ドラの恩恵を最も受けやすいのは、あと1翻で満貫に届く、子なら3900、親なら5800の手。もし、赤有りルールの印象から、跳満や倍満の手を狙って作ろうと考える打ち手が相手であれば、なおのこと実力者に利する展開になるとは考えられないでしょうか。
天鳳において、赤無しルールが上の卓でほとんど立たない、鳳凰卓に至っては皆無であるということも、戦績上位者にとって、赤有りの方が勝ちやすいと考えている打ち手が多いことの表れであるように思います。もちろん、単純に赤有り卓が立ちやすいから人が流れているだけとも言えますし、あくまでプレイヤーの主観に過ぎないため、これをもって赤有りは実力差が出やすいと結論付けることはできません。
しかし、麻雀研究の成果でそれまで言われていたセオリーが覆されたといっても、それは実力者の直感が誤っていたというより、セオリーという形で言語化する過程で起きた誤りであったということを踏まえると、赤有りが普及した理由は初心者でも勝ちやすくするためというのはあくまで建前で、実力者にとってもその方が望ましかったのではないかと私は考えます。