麻雀で「腕の見せ所」というと、難易度の高い手役を狙ってアガリきったり、他家の手牌構成を読み切って当たり牌を止めたりすることというイメージがある方も多いのではないでしょうか。私自身、そのような選択が上手くいった時ほど、いかにも実力で勝てた気がして嬉しいと思うものです。
赤ドラはおろか一発や裏ドラもない、いわゆる「競技ルール」では、難易度の高い手役を狙う必要性が増えます。他家も手役を狙っているとなると、それだけ手牌構成を読みやすくなるので、読みの技術もより重要になると言えるでしょう。
しかし、難しい選択が上手くできることは確かに「腕の見せ所」ではありますが、実力差が結果に現れやすいかと言われればそうとは限りません。むしろ、そのような技術が役に立つ局面はさほど多くないものです。難易度の高い手役狙いや当たり牌読みは成功率自体も低くなるので、上手い打ち手が最善を尽くしたとしても、結果的に実力差をつけることができないこともよくあることです。
単に手役と言えばリーチやタンヤオといった作りやすいものも含みますが、いわゆる「手役狙い」と言えば、三色や一通といった、メンゼンで2翻以上の手役を目指す選択を指します。しかし、赤無しと赤有りルールの手役の出現率を比べても、実はほとんど差が無いことが分かります。
手役を構成する牌をツモれるかどうかという抽選要素についてはどんなルールでも変わらない以上、ルールが変わったところで難易度の高い手役をアガれる可能性はさほど変わらないのです。そもそも狙って手役を作ることができるのであれば、裏ドラや赤ドラの有無に関わらず狙った方がよいものです。
実力差をつけやすいのはむしろ、利用頻度が高いうえに、成功率も高いので結果に差がつきやすい技術。手役で言えばリーチや役牌、タンヤオといった1翻役。確かにどれも狙って作るのは容易ですが、常にベストな選択が出来ているとかと言われれば、正直私も全く自信がありません。簡単とはいえ誰しも完璧に出来ているわけではないので、そこに実力が介入する余地が生まれるのです。
出処は確認できませんでしたが、麻雀の名手としても知られる、ムツゴロウさんこと畑正憲氏は、「タンヤオドラ1程度の手をうまくまとめることこそ最も腕の差が出る」と言われたそうです。赤有りルールなら運が良ければそのタンヤオ手がドラ2やドラ3になってくれるケースが増えるので、運要素とはいえ、実力で勝る打ち手が恩恵を受けやすいルールなのではないかと考えました。