「なんとなくメンゼン派」だった私が積極的に鳴くようになったきっかけは、実は2004年2月より近代麻雀ゴールド誌上で連載されていた漫画『真剣』。今はMリーガーとして活躍されている佐々木寿人氏のアマチュア時代、「フリーで1000万貯めた男」として知られていた頃を描いた作品です。
本書で取り上げられている歌舞伎町の東風戦が、まさに手役よりスピードを地でいくルールというのもありますが、印象に残るシーンはいわゆる「魅せる麻雀」とはほど遠いアガリ。見え見えの役牌後付けから、アガれる方をツモってドラドラの1000−2000を、あたかもメンゼンで綺麗な手を仕上げた時のごとく誇らしげにアガる主人公に、「これこそが、魅せる麻雀なのではないか」と価値観を転換させられたものです。前回申しましたように、私自身は後付けの仕掛けを特別嫌っていたわけではないのですが、1翻縛りの先入観からかそもそも役牌以外から仕掛けるという発想が無かったのです。
見え見えの後付けでもテンパイに取って構わないという話は、講談社版の『科学する麻雀』にも記載がありますが、こちらは2004年12月発売なので時系列では後の話。『新版おしえて!科学する麻雀』のレビューで、本書の内容に最初は半信半疑だったと書きましたが、「最初は全く受け入れられなかった」ではなく、あくまで「半信半疑」だったのは、実は『真剣』の影響だったということを今更ながら思い出したことでありました。
コラム第70回で麻雀格闘倶楽部3時代に導入された、「トーナメントモード」の話をしましたが、こちらは東風戦以上に鳴きの重要度が高いルール。「3」導入が2004年3月なのでまさしく同時期の話。このことも私が鳴き派に転じる大きな要因となりました。当時参加していた麻雀格闘倶楽部ユーザーのコミュニティ内では、熟練者でも大半はメンゼン派だったのですが、時折同卓する高勝率のプレイヤーの多くは、安手の早い仕掛けも厭わないタイプ。何より当時のランキング1位(黄龍神)も高勝率の鳴き派だったこともあり、「実はこの打ち方こそが最強なのではないか」と、自分の中で段々と確信めいたものになってきたのでありました。