こんにちは。前回に続き、牌の扱い方のポイントです。
D 王牌の枚数に気をつけよう
ある局で、誰もアガリがないときは、王牌を14枚残して流局します。テンパイしている人は牌を倒して手を開き、ノーテンの人は伏せて、テンパイ料をやりとりします。
このとき、王牌が本当に14枚か、気をつけてください。15枚以上残った状態、まだ誰かのツモがある時に牌を倒してしまうケースが時々あります。仲間内であれば、勘違いで済ませることもあるかもしれませんが、直ちにチョンボとなることもあります(競技ではチョンボになります)。局の途中で手牌を公開し、競技の続行を不可能にしたとみなされるためです。テンパイ料で決着がつく緊迫した場面、必死の思いで形式テンパイをとって、何とか耐えた!と安心した瞬間などに、間違いやすいので、慎重に確認しましょう。
なお、分かりやすくするために、王牌を14牌で区切る場面を見ることがあります。確かに判別しやすくなるのですが、正しく区切られていないと間違いのもとになりますし、区切ると牌がこぼれやすくなるので、あまりお勧めはできません。少なくとも競技の場では、区切ることはありません。
また、発展形?として、牌を他家の山から持ってきたり、他家の山に移動したりして、目の前を王牌14枚だけにしようとする場面もあります。が、「他家の山に触らない」というマナーに反しますし、移動中に山が崩れるリスクもあるので、避けましょう。他家の山が不必要に長くなり、プレーに支障が出ることもあります。
E キー牌を端におかず、見せ牌を防ごう
右利きの方は手牌の右端、左利きの方は左端にツモった牌を持ってきて、そのままツモ切ることも多いので、端の牌は接触し倒れやすくなります。そのため、キーになる牌を端に置かないことをお勧めします。例えば写真のように、ドラを含むシャンポン待ちでテンパイしている時に、ドラを倒したら、重要な情報を他家に見せてしまいます。自分も不利になりますし、他家の判断に影響を与え、ゲーム全体を左右することもあります。
なお、過って1つの牌を倒しただけでは、ペナルティが課されることは少ないですが、なかには、「見せ牌」といって、他家に見せた牌でロンできなくなるなど、厳しいルールを採用している場もあります。
Mリーグの解説でも知られる土田浩翔プロは先日、「見せ牌」をしたら、ルールにかかわらず、自らアガリ放棄をするとツイートされていました。初心者の方が、いきなりこのような厳しい制約をまねしなくても良いでしょうが、対局に臨む姿勢として、一つの目標として頂ければと思います。
{見せ牌}をした経験は、リアルで打っていればみなさんあるはずです。こぼしかたによっては、自分にしか見えない{見せ牌}もあります。その牌が局面に重大な影響を及ぼすことも多々あります。わたしは自分への戒めも含め{見せ牌}をしたらアガリ放棄するようにしています
— 土田浩翔 (@tsuchidakosho) May 5, 2021
F ツモ牌を手の中に入れるのは、打牌した後に
これは、ペナルティというより、マナーの話かもしれません。
放送対局を見ていると、ツモった牌を端に置いた状態で考えてから不要牌を捨てて、その後にツモ牌を手に入れていることがわかると思います。これが正式な打ち方です。
この理由は、「ツモってきた牌をそのまま切ったのか(ツモ切り)、手の中から不要牌を切ったのか(手出し)」を、他家にわかりやすく示すためです。
この連載でも今後ご紹介しますが、ツモ切りか手出しかは、重要な意味を持つことが多いのです。
【麻雀の匠 村上淳】トッププレイヤーの思考に迫る【#3】では、序盤から、他家のツモ切りと手出しを緻密に見ていることがわかります。
例えば、親のまろちょふ選手は、2巡目にを手出し、3巡目にをツモ切りしています。もし、とも手出しであれば、「いきなり手の中から、ペンチャンターツを惜しげもなく捨てている」→「他の部分でメンツができていたり、リャンメンなどの強いターツが複数あったり、ドラがあったりして、手が良さそう」→「早い段階から親を警戒した方がよい」という思考になります。基本的に、「価値が高い牌を早めに切る人は、もっと価値の高い牌を既に持っている可能性が高いので要注意」と考えます。
一方、が手出し、がツモ切りであれば、シンプルに孤立していたを切ったところ、たまたま次にをツモったので捨てた可能性が高いので、同じ思考は成り立ちません。
このような重要な違いがあるので、4人とも、手出しかツモ切りかを示して競うのがフェアなのです。
Mリーグのルールでは、「自摸牌を手牌の中に入れる行為が度重なる場合」は、イエローカードが出され、1日に2枚イエローカードが出されると、レッドカードが提示されチョンボと同じ罰則になると定められています(第7章第5条5の5)。
もっとも、初心者の方にとっては、ツモった牌を手の中に入れないと、分かりにくい時も多いと思います。
特にホンイツやチンイツの場合、ツモった牌を端に置いたまま「うーん、これを切ればあの待ちになって…」なとと考えるのは、相当難しいですね。
慣れないうちは、手の中に入れて考えても、直ちにルール違反ではありません。ただ、将来はホンイツやチンイツであっても、マナー通りにできることを目指しましょう。
…と、偉そうに書いていますが、私自身も学生時代から、ツモ牌を手の中に入れる癖が染みついてしまっていました。最高位戦日本プロ麻雀協会が開いている、プロを目指す研修講座「最高位戦アカデミー」を受けたとき、最初に学んで直したことの一つが、この動作でした。長年の癖は直りにくいですし、周囲も特段注意してくれないことが多く、そのままになってしまいがちです。
そのため、初心者の方はもちろん、打ち慣れた方も一度ご自身の癖を確認されることをおすすめします。ツモ牌を手の中に入れる行為は、牌を動かすので、時間もかかります。4人全員がマナー通りに打てば、試合時間も短縮されるはずです。
なおこの原則は、アンカンする際も同じです。
例えば
ツモ
で、アンカンするとき。ツモったを手の中に入れてから、4枚そろえて倒すのではなく、「カン」と発声し、暗刻で持っている3枚と、ツモった1枚を別々に倒します。元々4枚あったのではなく、今ツモった牌が4枚目だと示すわけですね。
もし暗刻があって、4枚目が来たら必ずアンカンすると決めているときは、暗刻を端に置いておくのもお勧めです。ツモったらすぐに、隣の3枚とあわせて倒せるので、スマートにできます。
さて、3回にわたって、いろいろとご紹介してきましたが、「なんだか面倒だなあ」と思われた方も多いかもしれません。
確かにインターネットの麻雀では、これらのことを気にしなくて良いのが、大きなメリットですね。フリテンならそもそもロンできないですし、牌を崩すこともなく、チョンボやアガリ放棄の心配がありません。
とはいえ、やはり実物の牌を使って、他家の表情や仕種なども見ながらリアルに対局することも、大きな魅力があります。いきなりすべて完璧にしようとせず、失敗を重ねながら経験を積み、格好いい打ち手を目指して頂ければと思います。
なお、どのような行為をチョンボやアガリ放棄にして、どの程度のペナルティを課すかは、対局する環境や場所によって異なるので、トラブルを防ぐために、最初に確かめることをお勧めします。
例えば、Mリーグや最高位戦日本プロ麻雀協会のルールでは、多牌や少牌はアガリ放棄ですが、日本プロ麻雀連盟のルールでは直ちにチョンボになります。また、過ってロンと発声してしまう「誤ロン」の場合、Mリーグや最高位戦では、手牌を公開せず発声だけならアガリ放棄です。ただ、連盟のルールでは、発声だけでもチョンボになります。
一方、チョンボのペナルティは、Mリーグや連盟では、トータルポイントから20ポイント(2万点相当)減算ですが、最高位戦は40ポイント(4万点相当)と厳しくなっています。
フリーの麻雀店や、大会などで対局するときは、その場で同卓者に満貫払い(親の場合は3人に4000点ずつ、子の場合は親に4000点、子に2000点ずつ)や、「3人に3000点ずつ支払う」など、ルールが決まっていますので、ご確認ください。
次回は「局の決着の仕方を整理しよう」というテーマでお届けします。