ある牌をツモります。ちょうど、ツモ牌と同じ牌が手の中にあります。
そんな時に、ツモ切りせず、手の中の牌を切ることを「空切り(からぎり)」といいます。
同じ牌を切るだけなので、手の形は変わりません。
一方、他家からは、手出しに見えます。
つまり、実際には手は変わっていないのに、手が進んだように見せる効果があるんですね。
この効果によって、どんなことが起こるでしょうか。
その前に、基本に立ち返ってみましょう。
麻雀は、配牌から一巡ごとに、必要な牌を手の中に残し、不要な牌を切ります。
つまり、「後の方に手出しされた牌ほど、その人にとって大切だった」という大原則があります。例えばタンヤオを狙う人なら、先に一九字牌が切って、テンパイに近づくにつれて中張牌が出ていきます。
そのため、空切りを効果的に使うと、自分の手牌に煙幕を張れることがあるのです。
具体的に見てみましょう。
このイーシャンテンから、をチーします。
を切って、待ちのテンパイになりますね。
チー
すると、「チーテンにソバテンあり」の格言通りの素直な待ちになり、は他家から出にくくなります。
そこに今度は、をツモってきます。
ツモ切りせず、手の中のを空切りします。
他家から見た最終手出しが変わり、「よりの方が大切だったんだな」と誤解させることができます。
そして、のまわり、を切りにくくして、他家の動きを縛れるわけですね。
また、本来の待ち への警戒度は、少し下がります。
実力者同士だと、「それ空切りでしょ」と読まれることもありますが、とはいえ、絶対に放銃できない場面などでは、効果があります。最終手出しのまわりを切るのは、やはり覚悟がいるからです。
終盤は、ある1牌を切れるかどうかで、わずかなアガリの可能性を残せたり、形式テンパイをとれたりするので、小さくない影響があります。
また、空切りには「他家から見た安全牌を減らす」という効果もあります。
例えば、自分が鳴き手でテンパイ。他家から見てもテンパイ濃厚、という場面を想像してみてください。
その後、自分がツモ切りを繰り返していると、その間に他家が切った牌は、基本的にすべて安全牌になります。
当たり牌が出たら「ロン」と言われるはずが、声がかからない。
そして、ずっとツモ切りなので、手が変わっていないからです。
(特定の人からだけアガリたい時に、他の人からアタリ牌が出ても見逃すケースもありますが、レアケースです)
すると、どんどん安全牌が増えて、他家は自由に打てるようになります。
しかし、自分が一度空切りすれば、手が進んだように見えますから、安全牌情報はいったんリセットできます。
これもやはり、他家の動きを抑えることにつながります。
少し前の記事ですが、麻雀ウオッチに
最高位決定戦注目の一局その4!園田賢プロの先を見越した空切りテクニック!
という興味深い記事がありますので、ご紹介しましょう。
この一局の牌譜はこちら。
この局で、園田賢選手は2度、空切りを使っています。
まず7巡目。
ツモ ドラ
ここでを空切り。
だいたい、待ちか待ちのリーチになりそうですが、その前にを手出しすることで、の周辺を切りにくくさせているのです。例えば、他家が「からを切って、が残っているのかな」と思えば、が要警戒になります。
このあと、待望のドラのをツモ。
ドラをアタマにできて打点アップ。トイツのを1枚切ります。
ドラ
すると、またをツモります。
ツモ ドラ
は不要牌なので、今さら3枚目が来ても嬉しくはありません。
普通はツモ切りそうですが、園田選手はを空切りします。
常に一手も二手も先を見る、園田選手のすごいところです。
空切りすると、他家からは「を連続で切って、トイツ落としだな」と見えますよね。ここがポイントです。
園田選手は、狙い通りとを引き、次の形でリーチ。
ドラ
でアガればチャンタになり、決定打になりえます。
ここで、事前にのトイツ落としを見せていることによって、他家からが出やすくなっているんですね。
というのは、もしがリャンメンで当たるなら、手の中にがあるわけですが、を2枚切っているので、もともとはと持っていたことになります。
普通、こんないい形から、を2枚切るかなあ?あまり切らないよね。
だから、は比較的安全に違いない。。。
と考えます。園田選手の思惑通りですね。
最後の例は高度な話でしたが、空切りの効果の一例として紹介しました。
と、ここまで読んでいただいて「空切りすげえ!」と思われた方に冷や水を浴びせて恐縮なのですが、どんな時でも空切りをした方がよいわけではありません。
基本的に、手の中から牌を出すことは、他家に何らかの情報を与えてしまいます。
明確な目的があれば良いのですが、何となく空切りを繰り返していると、どんな手牌構成なのか、自らさらしていくことにもなりかねません。
また上記の例で、もし空切りせずに、ツモ切りしたとしても、致命的なマイナスになるわけではありません。
最初は、迷ったら無理に空切りしない、ぐらいのスタンスで良いと思います。そのうえで経験を積んで、「こういう場合は空切りが有効なのだな」とつかんでいくのがお勧めです。
次回は、形式テンパイについて考えます。