麻雀ウォッチ

日本最大級の麻雀専門ニュースサイト!プロ雀士やイベントの情報をはじめ動画やマンガ・アニメ、アーケードゲーム情報まで麻雀関連の事柄全てを網羅します

CABOクィーンカップ
AIと人類の共存へ。渡辺太「人間の感覚ではやりづらいとされてきた選択を見てほしい」Mリーガー列伝(43)

AIと人類の共存へ。渡辺太「人間の感覚ではやりづらいとされてきた選択を見てほしい」Mリーガー列伝(43)

CABO求人麻雀BarWatch

 Mリーガーでは初となる医師と麻雀プロという二足の草鞋で活動する渡辺太プロは、オンライン麻雀『天鳳』の最高段位である天鳳位を三度獲得(四麻2回・三麻1回)。オンライン麻雀『雀魂』においても四麻・三麻それぞれで最高ランクとなる魂天に到達する等、ネット麻雀界で無類の強さを誇っている。VTuberもこなす多忙な日常を送る太プロの素顔とは?

麻雀を始めたきっかけは?

 麻雀は5歳の頃、父親と祖父母との家族麻雀が最初だったという。「ルールも何も知らないので、何をアガったのかも覚えていないんですが、無限にできる飽きないゲームという印象を持ったことは覚えています。その後ゲームボーイやスーパーファミコンといったゲーム機の麻雀ソフトを買ってもらって、ひたすらやっていた小学生でした」と第一印象通り、実際30年間、麻雀と向き合い続けている。

 小中学校の頃は勉強も好きだった。「算数をはじめ勉強が大好きで、ふたつ上の姉の勉強ドリルなどを無理やり奪って勉強していたそうです。漫画『ヒカルの碁』の影響で、小学校高学年の頃に囲碁教室に通っていた時期もありました。麻雀漫画は父親が持っていた『哲也 雀聖と呼ばれた男』は読んだことはありましたが、理解できていたかどうかはわかりません(笑)」

麻雀を始めた5歳の頃の太プロ。この家族麻雀が、太プロの麻雀人生の原点だ

東京大学を中退してまでなぜ医師の道へ?

 現役で東京大学理科I類に入学後に医師の道を志して中退した。「当時同居していた80代の祖母が現役バリバリの開業医でした。私が小学校6年生の時に亡くなった父も医者だったため、祖母は私に医者になってほしいという思いはすごく強かったようです。東大に入学してからもまだ間に合うから医者になる気はないのかという話になり、それで家族会議のもと休学し、北海道にある大学の医学部に合格できたので東大を中退し、医師免許を取得後、道内の病院で働き始めました」と祖母の思いを形にした。

オンライン麻雀『天鳳』に夢中になった医学部時代

 太プロがリアル麻雀を打つようになったのも、オンライン麻雀『天鳳』に夢中になったのも大学生の時だった。「天鳳は良くも悪くも無機質なので、人と対戦している感覚はあまりなく、それまでひとりで麻雀ゲームをやってきた感覚と変わらなかったので、とっつきやすかったのかもしれません。当時はネット麻雀上位者と競技麻雀プロとの接点はなく、それぞれが独自路線を行っていて、交わることはありませんでした。そんな中、2011年に始まった天鳳名人戦というイベントによって、それぞれの世界がつながり始めたターニングポイントになったのではないかと個人的には思っています。私も医学部の学生になった頃に天鳳名人戦に出ていたのですが、自分はただのネット麻雀民として出ていたので、当時は別世界の人だと思いながら戦っていました」

ネット麻雀とリアル麻雀。楽しみ方に違いは?

 太プロにとっては、ネット麻雀で負けた時の気分転換が、仲間同士のリアル麻雀だったそうだ。「ネット麻雀は成績をはじめ、和了率や放銃率の改善などあらゆるデータを見られるので上達が実感しやすいし、自分の悪い部分も明確に把握できるので、モチベーションにつながるし、それは今でも最も楽しい部分です。リアル麻雀に関しては、麻雀プロとして大会イベントやゲスト仕事などをさせてもらう度に、ワイワイ騒ぎながら打つ麻雀も好きだったんだなと気付かせてもらっています」とコミュニケーションツールとしての麻雀の良さも改めて実感しているそうだ。

ネット麻雀のデータで重視している数字は?

 ネット麻雀では、リアル麻雀では集計しにくいデータも把握することができる。「昔は和了率や放銃率のバランスを気にしていました。具体的に言えば和了率マイナス放銃率の数値差が大きければ強いんじゃないかと思っていました。天鳳の鳳凰卓だったら、その数値差が10%以上あれば相当強い印象があります。最近はさらに打点も考慮して、和了率×アガリ平均打点マイナス放銃率×平均放銃打点という指標も確認できるようになり、この数値は成績に相関するのかなと重視しています」

 オンライン麻雀『天鳳』と『雀魂』で四麻・三麻それぞれで頂点を極めるためには、実力はもちろん膨大な時間も要するのは想像に難くない。「ネット麻雀の世界は評価はシビアだと感じていて、打たなくなったら過去の人みたいな、私もそう思うんですが(笑)。負けず嫌いなんで、空き時間をみつけて打ち続けています。ただ評価されたいからではなく、普通に強くなりたいからというモチベーションは、プロ入り後もMリーガーになってからもずっと変わらないままです」

ドラフト指名を受けた時、どのように受け止めましたか?

 Mリーグは2018年にスタートした時から注目して見ていたという。「医師として働きながら麻雀界の発展をアマチュアとして見ていましたが、Mリーグによって、麻雀の内容に関しても注目されるようになってきて、自分もそういう舞台で戦ってみたいなと思うようにはなっていました。もちろんプロになった時はそんな話もまったくなかったので、ドラフト指名の話を頂いた時は自分が一番驚きました」

 ドラフト指名は、プロ入り後に出場した最高位戦日本プロ麻雀協会のリーグ戦を、赤坂ドリブンズの越山剛監督が見ていたことがきっかけだったそうだ。「麻雀の内容からインタビューの受け答えも含め、越山監督の目に止まったそうで、お声がけいただいたんですが、何より麻雀の内容で判断していただけたことは嬉しかったですね」

医師との二刀流。時間の使い方で気をつけていることは?

 プロ入り後、生活拠点を北海道から都内に移し、現在は都内にある病院で非常勤医師として働いている。「プロ入り1年目ですが、麻雀プロとしての仕事もできる限り受けるようにしているので、今は麻雀プロと医師とのバランスを測りかねているところです。普段は完全な夜型で睡眠時間は3、4時間という日もありますが、休みの日はわりと寝ています。不健康ですね(笑)」

キャッチフレーズ「麻雀シンギュラリティー」の由来は?

 シンギュラリティーとは英語で、技術的特異点と訳される。「AIが人類の知能を超える転換点という意味を指す概念ですが、キャッチーな言葉なので元々好きでした。強い麻雀AIがどんどん出てきて、そういうツールを使って強くなってきた自覚があって、データ麻雀やAIで学んだ麻雀は、あまり人間の感覚ではやりづらいなという選択が実は得だったと見えることが、私には多くありました。それらを取り入れ、積み上げて来たものが自分の麻雀スタイルなので、そういう選択を多くの人に見てもらえたらという思いを込めました」と自身のキャッチフレーズは麻雀プロの友人と相談して決めたという。

「ブタはビジュアルが好きなんでアイコンに使っています。以前は豚肉は食べづらかったんですが、最近はトンカツなども食べるようにしています(笑)」という麻雀チャンネル『ないおトン』

チームで戦うMリーグ。Mリーガーになって感じていることは?

 Mリーグ初代チャンピオンである赤坂ドリブンズは、2023-24シーズンから園田賢プロ、鈴木たろうプロ、浅見真紀プロ、太プロという新体制で戦っている。「チーム戦だから打牌が変わるこということは一切ありません。でも感情の動きは個人戦とはまったく違います。チームメンバーがトップを取った瞬間はすごく嬉しいですし、一喜一憂を感情として共有できることはいいことだなと感じています。チームに関わる監督やスタッフの方々も含めて雰囲気が良く、良い麻雀を打つために支えてもらっているのを実感しているのでなおさら優勝したいという気持ちが強く湧いてきます。医療の仕事も以前は医師が偉そうなイメージがありましたが、現在はコメディカルと言って看護師さん、技師さんあっての医師であり、他業種、他職種の人たちとも連携していくことが重視されているので、医療もある種のチーム戦と言ってもいいかもしれません」

リラックス方法は寝っ転がること。「家ではベッドの上でひたすら寝っ転がったまま、ネット麻雀を打ってます。基本インドア派なんで」

影響を受けた羽生善治九段の言葉

 太プロは将棋を観戦して楽しむ“観る将”でもある。「2012年にプロ棋士とAIが戦った将棋電脳戦がきっかけで将棋を観戦するようになりました。“観る将”歴としては10年以上になりますが、その中では羽生さんの存在はとても大きく、10年、20年、30年と変わらず取り組み続けていくことが才能なんだという言葉『才能とは努力を継続できる力である』には気づきがありました。かつて私もなんでそんなにネット麻雀を続けているの?と聞かれたことがあり、自分としてはただ好きでやっていることなので、最初はなぜそんなこと聞くんだろうと思っていたのですが、確かにこれほど淡々と続けていくことって普通じゃないんだなと(笑)。そういう部分では才能があるんだなと、その言葉を聞いて気づいたというか、ひとつのことに集中して楽しいと継続できるのは恵まれていることなんだなと感じています」と受け止め方が変わったという。

 “観る将”だった太プロは、将棋を知りたいと思い、今ではプロ棋士の棋譜も見るようになったそうだ。「麻雀でも“観る雀”から入って、私の将棋と同じように興味を持って取り組んでくれる人が増えたらいいなと思っています。それこそ私の場合はVチューバーもやっていますが、アイコンにしているブタが可愛いという理由で麻雀を好きになってくれた方もいます。興味を持つきっかけはなんでもいいので何かひとつでも見てもらえる部分があったら、それはプロ冥利に尽きますね」

◆写真:河下太郎、インタビュー構成:福山純生(雀聖アワー)

渡辺 太(わたなべ・ふとし)プロフィール

1988年7月25日、埼玉県さいたま市生まれ。A型。医師。最高位戦日本プロ麻雀協会、赤坂ドリブンズ所属。第5代・16代天鳳位(四麻)、第14代天鳳位(三麻)。『雀魂』でも3麻・4麻ともに魂天に到達。異名は「麻雀シンギュラリティー」。好きな役はリーチ・ツモ・七対子。“ないおトン”というハンドルネームで麻雀プロVTuberとしても活動中。

渡辺太 年表
年齢 主な出来事
1988 0歳 ふたり姉弟の弟として誕生
1992 5歳 家族麻雀で麻雀と出会って以来、麻雀ゲームに夢中になる
2007 18歳 東京大学理科I類入学
その後医師の道を志し、北海道にある大学医学部へ
この頃オンラインゲーム『天鳳』を始める
2015 27歳 第5代天鳳位獲得
2019 31歳 第15代 三麻(3人打ち)天鳳位獲得
2020 32歳 第16代天鳳位獲得
2021 33歳 3麻・4麻共に『雀魂』最高位段位となる魂天に到達
2023 35歳 最高位戦日本プロ麻雀協会入会
赤坂ドリブンズからドラフト指名。Mリーガーとなる

 

 

新着記事

Return Top