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ネマタの戦術本レビュー第261回「迷わず強くなる麻雀 著:鈴木たろう 編集: 鈴木聡一郎 その8 」

ネマタの戦術本レビュー第261回「迷わず強くなる麻雀 著:鈴木たろう 編集: 鈴木聡一郎 その8 」

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レッスン10

 リーチに放銃しなくても自分がアガらなければ負けという局面なら、別の他家のテンパイを抑止するため、あるいは別の他家がテンパイした時に抱えていた危険牌がその他家の当たりになってアガリを逃すケースを避けるために、安牌があってもあえて危険牌から切る方がよいこともありますが、流石にかなり限定的なので実戦で使うことは少ないです。危険牌を面子や雀頭になることで危険牌を勝負せずに追いつけることもあります。「ベタ降りする手牌ではないが、余計なリスクを負って放銃してしまう」のも、降り方の基礎が十分に出来ていない打ち手にありがちなミスです。

 「他家を降ろすことができる」についても、リーチ相手にノーテンから押す人が減れば、それだけ自分の放銃率も上がります。危険牌を勝負しなければ降りることになる手で、勝負に見合う手ならそもそも、「他家が降ろす」効果は関係無く押した方がよいですので、少なくとも、「降りないことの最大のメリット」と言い切るほどではないと考えます。

 「他家を降ろす」効果が発揮されやすいのは、明確なテンパイ者がいない段階で、安手と読まれにくい仕掛けを入れる時でしょうか。他家のテンパイが入った時を考えると守備を考慮してスルーしたくなる手牌であっても、他家からこの仕掛けを見た時に降りに転じる可能性を考慮して積極的に鳴くということは考えられます。ただしこのあたりも初級者向けのアドバイスとは言い難いですね。少なくとも降り方よりはずっと難しい技術です。

レッスン11

 次に危険牌を引いても降りずに勝負する手なら、安牌を切ってアガリにくくするより、危険牌を切ってアガリやすい待ちに受ける。「科学する麻雀」でも取り上げられているセオリーなので、むしろイマドキの打ち手なら出来てしかるべき選択ですが、確かにこのあたりは出来ていない打ち手が多いかもしれません。私自身、このセオリーを知るまではついつい安全牌を切っていたものです。

レッスン12

 今度は1シャンテンなのでレッスン11ほど明確に押し有利とは言えませんが、中以外は全て無スジというのであれば、押すならを切った方がよいでしょう。選択の余地があること自体はデメリットではないですが、選択の余地がある故にミスをしてしまうことは誰しも少なからずあります。人の気の迷いからくるミスが少ないことが、鋭く踏み込める打ち手の強さかもしれません。

 ただ、このあたりの講座の内容は、やはり初級者向けにしては高度であると感じます。を切ればスジのが出やすいというのは、スジは比較的通りやすいという基本的な守備の知識が必要です。このあたりの話がすぐ飲み込める打ち手なら、降りないでひたすら打たなくとも、どんな時なら降りずに攻めるかを理解することは難しくないはずです。逆にこのあたりの話が難しいと感じる打ち手が降りずにひたすら打ち続けたところで、押し引きのバランス感覚がつかめるとは思えません。

 それどころか、降りずに打ち続けた後でいざ降り方を身につけようとしても、降りずに打っていた時の癖が抜けずになかなか降り切れず、実戦経験がかえって成長の妨げになってしまうかもしれません。降り方を身につけるためにも実戦経験は必要ですし、打ち方を大きく変えるのは多くの打ち手にとってなかなか難しいことですから、座学と実戦はあくまで並行して行うべきと考えます。

本記事に関するご紹介

本書では、たろうプロとはなさんの会話形式で構成し、3つの章にわけて、48のレッスンを展開することにより、読む人のレベルに合わせた上達が見込めます。大人気の鈴木たろうプロの麻雀、勝負に対する思考、スタンス、駆け引きに関してここまで公開したのは本書が初となります。
 
鈴木たろう (著)
鈴木聡一郎 (編集)

発売日:2017年3月29日
定価:本体1,404円
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この記事のライター

ネマタ
浄土真宗本願寺派の僧侶。麻雀戦術サイト「現代麻雀技術論」の著者。
同サイトは日本麻雀ブログ大賞2009で1位に。
1984年佐賀県生まれ。
東京大学文学部中退。

著書:「勝つための現代麻雀技術論」「もっと勝つための現代麻雀技術論 実戦編

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