麻雀業界唯一の総合情報雑誌「麻雀界」にて連載されていた珠玉のコラムが、なんと麻雀ウォッチでもお楽しみいただけるようになりました!
麻雀界ならではの濃い情報を毎週水・金にお届けしますよ!
記念すべき第1弾は「大貝博美プロの麻雀マナー講座」です。お楽しみに!
~以下「麻雀界 第4号」より転載~
マナーが悪化している!?
以前北海道のピン雀で、タンヤオ・チートイツをツモったので「1600・3200です」と申告したら、
「ちゃんとイチロクザンニーって言ってよ。わかんないじゃないのさ」
と年配の女性に怒られたことがありまして。
「郷に入っては郷に従え」なので、その後はちゃんと(?)「ナナトーサンです」と申告してました。
むろんその女性にとっては(あるいはそのお店においては)そういう形のアガリ点申告が常識であるというだけの話で、目くじらを立てるほどのことではありません。ただこちらが合わせればよいだけのことです。
話は変わって、最近若い子と麻雀についてしゃべる機会がありました。
若いといっても二十代半ばで社会的な常識は備えておりますし、また年齢に不相応な長い雀歴に支えられて技術やマナーもしっかりしている男です。そんな彼がこう言います。
「最近のフリーのマナーってかなり落ちてると思いません?」
悪意のない「マナ悪」
強打とか先ヅモ・立てヒザとかのれっきとしたマナ悪行為のことではなく、もう少し細かいレベルの話です。
先ヅモや強打については多くの店の努力により以前より格段に減少している、と彼も認識しています。
ここで彼が言ってるのは、先例の女性のように〝間違った常識を持つ打ち手〟が増えたということなんです。
すなわち、マナーが悪いのではなく、本来のマナーを教えられていない人。礼を失している意識や悪意はなく、「これが普通」と勘違いしているケースですね。
抽象的すぎてわかりづらいでしょうから、一例を。
自分の牌山が王牌となった場合、必ず7トンにしなければ気がすまない人がいます。目の前に5トンあったら下家の山から勝手に2トンひっぱり、逆に7トンより長い時は余った分を下家の山につける人。けっこういますよね。
例えばこれについて、件の彼がグチるわけです。
他人の山には触らない
以下は彼とのやりとり。
昔は『他人の牌山に触るのは失礼』と教えられたもんですよね。
いつからオーケーになったんです?俺自分の山に触られるのイヤなんですけど」
いや別にオーケーにはなってないでしょ。ただそうする人はたしかに増えてる。
『ここまでがツモ山』とはっきりさせないと落ち着かないのかな。もちろん僕もイヤだよ
下家がやりづらくなるケースもあるわけだから、お店で注意してもいい気がしますけど
それを注意するシーンは見たことがないね。以前下家に4トンつけるのを見た時は『それはさすがにつけられた人がやりにくいと思いますよ』と言ったけど。
あ、その時は僕もお客さんね(笑)。17トンでさえ長いのに、21トンだとハジからハジまで無限に伸びてた(笑)
アルティマだと全部の牌山が短いから、余分な牌をつけることに抵抗がないとか?
まあ不都合はあまりないだろうけど、嫌がる人がいる以上はやっぱり他人の山に触るべきじゃないよね。
余分な動作を入れれば、牌をこぼすリスクも増えるわけだし
お客さんならまだしも、当然のように7トンに揃えるメンバーもいますよ
雀荘メンバーが発祥?
教えてくれる人が誰もいないんだね。
知らなきゃ教えようもないけど。ひどいレベルになると、誰かがカンをした時に慌てて他人の山のカンドラを開けにいくメンバーもいる。これは一つの考えなんだけど、おかしな動作はたいていがどこかのメンバー発祥だと思うんだ。
後輩がそれを見て『なるほど、こうするものか』とマネをし、それがお客さんにも伝播していく。
ひと昔前に流行ったのはリーチ後中指盲牌に切り替え、ツモった時に手牌中央とフレームの間の狭いスペースにタン!と叩きつける動作。
これはホントに一瞬で広まった。
いわゆる『壁打ち』同様、某雀荘が始まりと僕は見てるんだけど
たしかにとあるメンバーがほとんどが壁打ちしていたけど、あれも本来はダメでしょう?
フレームに手牌やツモ牌をつけるわけだから、当然ガチャガチャうるさくなるよね。さらに見せ牌が多くなる。
手牌に何らかの余分な力が関わった時、片側に逃げる余地はないので表向きに倒れるから。そのうえ小手返しなどの牌遊びをむやみにしてるから、本当によく見せ牌になる。
その都度謝るでもなく『チェックです!』と胸を張って自己申告してるけどさ、そんなことよりメンバーならばまずは見せない配慮が必要でしょうね。
一牌見えただけで局面に影響あるのが麻雀ですから
この件も含め、いっそのこと〝あなたのマナーは大丈夫?〟みたいな記事を書いたらどうですか?
でもさ、『うちにはうちのスタイルがあるから勝手に常識だと押しつけられても困る』というお店もあるだろうし
取捨選択はお店や個人に任せるとして、本来あるべき姿を知ってもらうことは必要だと思いますよ。
お店で一人一人に指導するよりは業界改善の早道だと思うし
こんないきさつにより、会話に出てきた〝気になる行為〟をこれからのこの麻雀界で連載していきたいと思います。
マナーは他人目線で
さて、舞台は再び、若い子と麻雀のマナーについて話しているシーンです。
さっきの王牌処理の件でもうひとつ訊きたいんですけど。
ドラ表部分を含む牌山が8トン以上のとき、単に切れ目を入れるのはどうなんですか?
もちろん、余った牌を下家の牌山につけたりとかはしないとして
山に切れ目を入れると落ちやすい牌が増えるわけだから、切らない方がいいね。
ゲームに支障が出る可能性が増える動作は、極力しないに越したことはない
なるほど。切れ目を入れるどころか、王牌部分を目一杯左の方に寄せる人もいるでしょ。
打牌しやすくするためなんでしょうけど、なんか違和感がありますよね
あれもとあるメンバーが発祥だった気がする。彼の言い分は『切る時に山を崩したら悪いから』なんだけど、その気持ちがあるなら最初から振りかぶって切ったりしなきゃいい。
そもそも『切りやすい』は自分本位の視点でしょ。
王牌が本来の位置より外側にあればドラ表示牌が視野から外れやすくなってケアレスミスが起こる可能性があるし、カンした人は遠くまで手を伸ばさなきゃならなくなる。
やっぱり自分の動作は他人目線で考えないとダメだよね
麻雀は「プレイヤー=審判」
やっぱりな。同じように自分視点になりがちな事で、アガった本人がすぐボタンを押して牌を流すのはどうなんですかね。あれは俺の中では一番『自分勝手だなあ』と思うことなんですが。
いるね、一刻も早く次の局に移りたがる人。そもそもアガった人が他家の確認を待たずに流すのは言語道断。みんながアガリの正当性を確かめ点棒を払い始めるまでは待つべきだよね。
さらにそんな人は他の人がアガった場合にも点数申告があるやいなや流しちゃうでしょ。『フリテンしてないか』とか『申告は合ってるか』とか、絶対見てないと思う。
麻雀は4人がプレイヤーであると同時に審判であることを理解してないよね。
『とにかく早く卓をまわせ』と指導されてる雀荘スタッフじゃないんだから(笑)。
僕はそんな人がいるとたいてい『すみません、あと5秒だけ待ってもらえますか』と言っちゃう。自分の勉強としてもその一戦の対策としても、最終形と捨て牌を眺めたいもん。
逆に言うとさっさと流そうとする彼らはそんな努力や研究をしないわけだから、だいたい雀力も頭打ちになるでしょ。
そのせいかどうかわからないけど、それをやる人たちは『俺は打てるぜ』オーラを出してるわりには似たようなレベルの人が多い気がするな
その行為に対して注意する店も少ないですよね。やっぱりゲーム代を考えると回転を上げたいからかな
毎局毎局感想戦をやろう、って話じゃないからね。気がつかないか、あるいは注意するのがめんどくさいかのどちらかでしょ。
殺伐とした雰囲気になってラス半が早目にかかるより、一言言ってみんなが心地よく遊ぶ方がお店にとってもトクだと思うんだけどな。
僕が町田や横浜で店長をやってた時はやんわりと注意してたよ。
『うちは儲かってますから、そんなに急いでもらわなくても大丈夫ですよ』とかね(笑)。
言い方さえ工夫すれば、注意するのってそんなに負担にならないんだけどね」
著者:大貝博美
プロフィール:昭和35年、東京都生まれ。101競技連盟所属。第22・30期王座。ファミレス店店長を経験後、競技麻雀に惚れこみ、麻雀プロの世界に足を踏み入れる。
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