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フリーライター 福地誠 「まだ本になったことがない新テーマの本を作りたい」【マージャンで生きる人たち 第19回】

フリーライター 福地誠 「まだ本になったことがない新テーマの本を作りたい」【マージャンで生きる人たち 第19回】

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『現代麻雀押し引きの教科書』(洋泉社)をはじめ、麻雀ジャンルを中心に50冊以上の本の執筆と編集に携わっているフリーライター/編集者・福地誠さん。出版のプロとしての矜持と仕事論を聞いた。

福地誠(ふくち・まこと)プロフィール

1965年、東京生まれ埼玉育ち。水瓶座、A型。東京大学教育学部卒。フリーライター。学生時代、九蓮宝燈をアガった時に役満賞として雀荘からもらった灰皿を現在も愛用中。

 

麻雀を始めたきっかけは?

「中学生のとき、憧れの職業は将棋指しだったんですよ。実力はからっきしだったんですけど、将棋指しが一番かっけぇなぁ!って。それが中3のとき、ふと麻雀の入門書を読んでみたらめちゃくちゃおもしろくて、ハマる対象が将棋から麻雀にターゲットオン的に切り換わりました(笑)。でも周りに麻雀ができる同級生はいなくて、しかたなく目につく麻雀の本は片っ端から読んでいました。初めて麻雀を打つ機会を持てた2年後には、すでに50冊以上の麻雀の本を読んでいて、完全に頭でっかち系の雀士でした(笑)」

「次にハマったのは大学時代の後半でした。就職活動で全敗してしまい、そのときたまたま麻雀で勝ったことで、昔ハマってた時期を思い出し、俺にはこれしかない!って(笑)。そしてまもなく麻雀荘でアルバイトをするように……。これはぼくの持論なんですけど、麻雀は仕事や学業や家庭から逃げてる人が強くなるゲームなんですよ(笑)。強くなるには、まず現実逃避からです(笑)」

 

フリーライターになったきっかけは?

「大学時代の後半は留年を続けて麻雀ばかり打っていたのですが、そのときの彼女が妊娠して結婚したんですよ。いわゆる“できちゃった結婚”です。しかし、彼女の親が麻雀荘のアルバイトじゃ駄目だと強硬に言ってきたので、麻雀以外の仕事は考えられなかったため、麻雀本の出版ではナンバーワンだった竹書房を受けました。3ヶ月後には子供が生まれる状況の中、ここ以外どこも受けていないんですと言ったら、入れてくれました(笑)。そんな温情で入れてもらった立場なのに、麻雀を打つのと麻雀の出版物を作ることは全然違うんだと入社してからわかりました。しかも会社員は性に合わなかった(笑)。頑張っても頑張らなくても一緒で、責任があるようで無いことに納得がいかなかったんです。いつも無断欠勤しては麻雀ばかり打っていて、よくクビにしないでいてくれたもんだと思いますけど、さすがに居づらくなってきて、入社から3年後の30歳のときに退社しました。以降はフリーライターとして活動しています。フリーランスになってからは、頑張った分だけ実入りがあって、実入りがないのは自己責任。これがぼくにとっての仕事のイメージで、フリーになってからは自然体でやってこられました」

「これもまたぼくの持論なんですけど、麻雀が好きなのは病気なんですよ。麻雀が面白すぎて病気になっちゃう。依存症化して、アルコール中毒みたいな麻雀中毒となります。そうなってしまうとすぐに回復しようとするのは無理で、根気強く付き合っていくことが必要になります。ぼくは会社員だった3年間に、ようやくひどい中毒状態から脱してきて、ふつうの麻雀愛好家までトーンダウンできた感じです」

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「真のプロとは世の中に何かしらを提供して対価を得る者」と語る福地さん。まさに麻雀界のプロと言える

 

元々書くことは好きだったんですか?

「先ほど、中学生のときの憧れは将棋指しだったと言いましたが、高校生のときはプロスキーヤーか作家になりたかったんですよ。作家というのはエッセイスト的なやつ。そういう意味では近い立場になれているかもしれません。大学受験時代に小論文で全国1番になったこともあるんですよ。当時から筋道を立てて文章を書くことは得意でした」

 

企画を立てるときに意識していることは?

「企画を立てるためというか、その前段階になるんですが、普段から、①自分は何をおもしろと思うか、また②世間の人たちは何をおもしろいと感じているらしいか、という2つを分けて、両方を鋭敏に感じるようにトレーニングしています。約20年前になりますけど、ぼくがフリーライターになった頃は、漫画誌の『近代麻雀』シリーズが月に3冊出ていました。それを発売されるたびにすべて読み、おもしろさの順番を決めていました。そして1カ月後にアンケート結果が出たら答え合わせをします。何が人気あって、何がなかったか、その理由を自分なりに分析します。そのサイクルを10年くらい繰り返しました。当時はバビィこと馬場裕一さんが麻雀ライターの第一人者として君臨していました。アンケート結果で、ぼくはかならず負けるわけです。5年くらい、なぜ勝てないんだ…、何が違うんだ…、そんな自問自答の果てしない繰り返しでした。互角になれるまで7年くらいでしたかねぇ。今もその延長上にあって、麻雀の書籍が出るたびに、どれくらい売れそうかの予測と、数カ月してからの答え合わせをしています。いうなれば、人気予測マシーンとして自分を作っています」

 

執筆にあたって、心がけていることとは?

「ロジックと直感のバランスですね。ロジックは現代社会では共通言語で、これが基本になります。ぼくは麻雀とは関係ない本もよく読むんですけど、この本の図式で麻雀を説明したら…って、いつも考えています。本を作るときに、全体の大きな枠組みを考えるのはほぼロジックです。その一方で、直感もまた大切です。直感を大事にするため、何事に対しても素人っぽい意見をできるだけ持つように意識しています。どの分野でも、仕事をやっていくうちにプロ化していきます。それは絶対に必要な過程ですけど、その一方で素人っぽい直感がないと、正しいだけで魅力ない商品を作るようになっちゃうんですよね。ぼくの本はわかりやすいと誉められることが多いのですが、そのわかりやすさは素人っぽさからくるものです。ぼくの父は数学の教師なんですけど、『数学者が書いた数学の本は難しくてよくわからない。物理学者が書いた数学の本はわかりやすい』と言っていました。専門家って、放っておくと厳密性の迷路に入り込んでしまいます。意識的に自分を素人にしていかないと、発想がシンプルにならないんですよ」

 

最近面白かった本は?

「漫画もよく読むんですが、ここ1年の間に素晴らしいなと思った作品は『かくかくしかじか』(集英社)ですね。『東京タラレバ娘』(講談社)の作者でもある東村アキコさんの半生を描いた作品で、クリエイター系を志望する人にはオススメです」

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近代麻雀のバックナンバー30年分が並ぶ書斎。麻雀からビジネス書、漫画、歴史までジャンルは幅広い

 

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