第五章 魔術師の独白2
無意識の「理」
麻雀本レビュー第26回でも申し上げましたが、「手牌読み」というのも、「手作り」の裏返しであり、独立した技術ではありません。実力者の中で特に意識して読みは入れないという人であっても、ここにあるような、「理」に基づいた読みについては無意識のうちに行っていると思われます。
「読み」がどうしても苦手という方は、先制でテンパイしている時といった、選択の余地が無いので労力を打牌選択以外のことに回せる時に、自分の河が、相手からどのように見られているかを考えるようにするとよいのではないでしょうか。
相手の手牌を読むということについて
読みを重要視しているというイメージを本書に持たれた方も多いと思いますが、成岡プロ自身が、「読み」の力が雀力のうちに占める割合は非常に小さいと断言していることに意外性を感じました。
下手に読みを入れて打牌判断を変えてしまい失敗してしまうというのは、私自身もよくやりがちです。
しかし、読みを入れて打牌判断を変えるべきケースというのも、実戦を積み重ねていけば必ず出現する以上、手牌読み能力の研鑽を全くしないというわけにもいきません。
ネット麻雀は牌譜が残るという利点があります。余裕があれば、打牌判断には影響しない局面であっても、河から相手の手牌をどの程度特定することが可能であるかを検討されてはいかがでしょうか。
マージャン力
「勝つための現代麻雀技術論」では、選択の一連の手順を、「認知」「判断」「操作」としました。言い換えれば、麻雀力は大きく分けて、「局面を正しく認識する能力」「認識に基づいて正しく判断する能力」「判断した通りに打牌する能力」の三つからなると言えます。
「読み」については公開情報である局面から非公開情報を推測することですから、「認知」の段階、「ハートの強さ」は、自身の下した判断を正しいと信じることですから、「操作」の段階で影響すると言えます。
打牌を変えた、「ハートの弱さ」
優劣自体はあっても大差ないということは麻雀においては多々あるので、判断に関する知識を突き詰めることよりも、その後の選択もミスしづらく自分の能力を発揮しやすく、精神面も保ちやすいような打牌を優先するというのも実戦では有力かもしれません。
ただ、それについては「人それぞれ」としか言いようがないので、「勝つための現代麻雀技術論」においては、その後の選択でも最善手を打てることを前提とした基準を設けたつもりです。
何切ってもいいんじゃない?
2巡目の手牌から打とするのは、大損ではないかもしれませんが流石に疑問手とみます。一色を見切る、「絶一門打法」は、三色をバランス良く持つ「バランス打法」に対する打法ですが、結局のところ、「順子の近くにある牌は面子になりやすい→多く持っている色が残りやすいので絶一門になりやすい」「面子候補の近くにある牌は面子になりにくい→少ない色が残りやすいので三色均等になりやすい」ということで説明できるのではないでしょうか。
「役牌暗刻の絶一門」については、役牌暗刻があれば三色同順にはなりにくい一方、絶一門が絶二門になってホンイツがつく場合があるので、うまくあがれた時に高打点になりやすいので、絶一門にするとうまくいくような印象が強く残ったから言われるようになったのではないでしょうか。
手牌だけの何切るは答えようがないとありますが、「条件無し」というのも一つの条件ですし、条件によって打牌が変わるのであれば、ある程度は回答者側が、「場合分け」をしたうえで回答すべきであると私は考えます。
ただし、「条件が明示されてない場合、どのような条件を想定したうえで回答すべきか」について、麻雀打ちの間で見解が共有されていることがほとんどないという現状があるのもまた事実です。同じ麻雀打ちとして、この辺りの見解の相違における溝が埋まる日が来ることを私は強く待ち望んでおります。
これにて、「神眼の麻雀」レビューを終わります。
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