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ネマタの戦術本レビュー第1185回「『世界最強麻雀AI Suphxの衝撃』編 その3 著:お知らせ」

ネマタの戦術本レビュー第1185回「『世界最強麻雀AI Suphxの衝撃』編 その3 著:お知らせ」

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ネマタの戦術本レビューとは
  • 『ネマタの戦術本レビュー』は、麻雀戦術サイト「現代麻雀技術論」の著者・ネマタさんによる戦術本レビューです。
  • ご意見・ご感想がありましたら、お問い合わせフォームから送信してください。
  • 第1回から読みたい方は、目次からご覧ください!

当レビューは書籍の内容に関するネマタ氏が当書の回答に異論があるもの、追記事項があるもの、または更に掘り下げたい部分等を取り上げます。姿牌、局面については書籍を購入してご確認下さい。

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第1章 強くなること

3.麻雀を学ぶこと

「天鳳位になるのと東大に合格するのはどちらが難しいか」という話題で盛り上がったことがあります。環境次第と言えばそれまでですが、両方目指せる環境にあるなら、天鳳位の方がよほど難しいというのが私の見解です。当時唯一両方達成した第5代、第16代天鳳位も「天鳳位の方が難しい」と回答。2人目の両方達成者である筆者も、本書での書きぶりからして「天鳳位の方が難しい」と考えているように思われます。

何故東大よりも天鳳位の方が難しいと言えるのか。その理由は本書で取り上げられているような、「麻雀を学ぶことの難しさ」にあります。大学入試は、①満点の答案を見る②満点取れる人から教わる③満点取れる人の書いた参考書を使う ①②③全ての選択肢を取ることが可能。しかも満点を取れるようになる必要はなく、東大であれば6割取れれば合格できます。

最善手が分かったとしても、具体的に何点程度の手と評価できるのか、次善手と何点程度の差があるのかが分からないことも、麻雀を学ぶことが難しい理由に挙げられます。本書では牌譜検討を例に出されていますが、戦術書でも同じ問題が起こります。

①選択肢A90点、選択肢B70点のような例ばかり取り上げられている戦術書

②選択肢A76点、選択肢B74点のような例について、あたかも選択肢A90点、選択肢B70点であるかのような評価を与えている戦術書

①の戦術書だけ読むと、A80点B70点のようなケースであっても、A側不利な条件がついているのだからB有利なのではないかという印象を受けがちになります。具体例を挙げれば、A90点B70点はリャンメンテンパイでリーチかダマかの選択。A80点B70点はカンチャンテンパイでリーチかダマかの選択。カンチャンテンパイも大概は即リーチが良いことが示される以前の戦術書も、待ちが悪ければ何でもダマと書かれていたわけではありません。

しかし、リーチがかかっている手牌が「リーチ90点、ダマ70点」のようなものばかりで、リーチにはデメリットもあるという話が何度となく出てくるのですから、私自身何となく理由をつけてはリーチをしない打ち手になっていました。

②はまさに、カンチャンテンパイ即リーチの優位性が示されてから登場した戦術書に多く見受けられました。A76点B74点をあたかもA90点B70点のような評価を与えていると書きましたが、②の戦術書は、①のような戦術書を読んだ経験があり、A80点B70点くらいでもBを選びがちな打ち手を対象にしたもの。読者に強い印象を与え、より強い打ち筋に転換させるために、やや大袈裟とはいえそのような表現を取る必要性があったという背景も否めません。

ところが、A有利であることを強調するあまり、例外的にB有利の例はA70点B90点のような牌姿が取り上げられることが多く、②から入った読者には、A70点B90点がA74点B76点程度のような印象を与えてしまうという問題がありました。

拙著「勝つための現代麻雀技術論」は、A76点B74点、あるいはA74点B76点のような微差(と、私個人が判断した)の牌姿を意識的に集め、より細かい体系的な判断が可能になる作りにすることを目指しましたが、①②を読んだことがない打ち手にとっては理解が難しいものになる。明確な優劣がつかないので、選択に至る前の導出過程がどうしてもあやふやなものになるという問題が残りました。

そのうえ、実戦中の盤面における判断の変化までは取り上げることが出来なかったので、微差を意識するあまり、より重要な実戦中の要素を軽視しがちになるという問題もあります。本書執筆後、私が度々、麻雀における認知力の重要性を強調するのはこのためでもあります。

本書は実戦例を通して、盤面における要素をAIがどの程度重視しているかについて、筆者が天鳳位としての審美眼をもって判断しています。「本当に正しいかは永遠にブラックボックスから顔を出してくれません」とありますが、麻雀も将棋AIのようにどの手を選択すればどの程度有利になるのかという「評価値」を示すことが可能になれば、この問題も徐々に解決していくようにも思われます。強くなるためには覚悟が必要ですが、安心して覚悟ができる。そんな時代もすぐそこまで来ているのかもしれませんね。

世界最強麻雀AI Suphxの衝撃

世界最強の麻雀AIを人間のトッププレイヤーが本格解説!

2019年6月、麻雀AIで初めて天鳳十段に到達し話題をさらった「Suphx」(スーパーフェニックス)。

天下のMicrosoft社が麻雀という不完全情報ゲームに殴り込みをかけてきたのです。「Suphx」の強さはもはや人間のトップレベルに達しており、他のボードゲームがそうであるように、麻雀も「AIから学ぶ」時代に突入しつつあります。

本書はその端緒となるもので、最強のAIである「Suphx」を人間界のトップといえる天鳳位を獲得したお知らせ氏が徹底的に解説するのものです。

お知らせ氏の筆致は処女作である『鬼打ち天鳳位の麻雀メカニズム』で証明されたように緻密にして正確無比。「Suphx」の打牌を咀嚼し、人間の知として昇華する上でこれ以上の適任はいないでしょう。

ぜひ本書で「Suphx」の強さの秘密と、麻雀というゲームの深淵を味わってください。

●目次
第1章 強くなること
第2章 スタンダードな押し引き
第3章 中盤のスリム化
第4章 序盤の方針

●著者プロフィール
1989年9月18日生まれ。
神奈川県横浜市出身。東京大学工学部卒。
第14代四麻天鳳位。
著書 「鬼打ち天鳳位の麻雀メカニズム」(マイナビ出版)

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この記事のライター

ネマタ
浄土真宗本願寺派の僧侶。麻雀戦術サイト「現代麻雀技術論」の著者。
同サイトは日本麻雀ブログ大賞2009で1位に。
1984年佐賀県生まれ。
東京大学文学部中退。

著書:「勝つための現代麻雀技術論」「もっと勝つための現代麻雀技術論 実戦編

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