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卓上でヨシ!麻雀暗記ノート 第17回 配牌から将来像を構想しよう

卓上でヨシ!麻雀暗記ノート 第17回 配牌から将来像を構想しよう

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前回、「次は早さ重視でアガリを考える場合のポイントをご紹介します」と書きました。
さっそく、牌効率の話を書こうと思っていたのですが、考えを改めました。今週、渋川難波プロの、この動画を見返したからです。

冒頭で、渋川プロは「牌効率も大事なんですけど、僕は構想力の方が大事だと思ってます」と話しています。
なるほど、確かに。。。

初中級者向けの本を手にとると、牌効率を中心に、早くあがる考え方が先に紹介されていることが多いと思います。おそらく、ある程度正解が決まっていて教えやすいのが一因でしょう。
例えば、「ペンチャンターツとカンチャンターツが両方あるときは、カンチャンターツの方を残す」というセオリーがあります。

[一][二]と、[①][③]を比べると、引くと嬉しい牌が一つずつ([三][②])あるのは同じですが、後者は[④]を引くと[③][④]のリャンメンになります。
一方、前者は[四]を引いても[二][四]のカンチャンに変わるだけ。さらに[五]を引いて、やっと[四][五]のリャンメンになります。比べると、一手でリャンメンに変わる可能性がある[①][③]の方が優秀です。
数理的に説明がつくので、わかりやすいですね。

一方、構想力は、一言では言い表しにくい。数多くの対局を経た経験も必要でしょうし、「この役が好き」といった個人の感覚やセンスにも影響されます。牌効率がサイエンスの世界なのに対し、構想力はアートの要素が多分にあるといえるでしょう。

私が会社で取り組む仕事の一つは、理数教育ですが、この分野では「STEAM(スティーム)教育」という手法が広まっています。Science、Technology、Engineering、Art、Mathematicsの頭文字をつなげた言葉です。
かつては「STEM(ステム)教育」が主流でしたが、Arts(芸術を含めたリベラルアーツ)を一緒に学ぶと、より創造的な発想が生まれる、という考えが多くの人に受け入れられています。

麻雀は数理的なゲームですが、構想力というArtsの部分を含んでいます。またそもそも、麻雀牌の造形が美しく、それ自体が芸術作品だとも思います。この両面性が、多くの人を引きつける魅力になっているとも感じます。
「麻雀ウオッチ」の「クソ配牌コンテスト」も、(言葉は綺麗ではないものの)一種の芸術鑑賞といえそうです。

さて、Artsの世界では、正解はすぐに一つには決まりません。

今シーズンのMリーグで優勝した「EX風林火山」の1人、二階堂亜樹プロの著書に「勝てる麻雀の基本」(マイナビ出版)という1冊があります。この本も、攻撃と守備、ゲーム回し、さらにマナー面での基本が学べてお勧めです。

ページをめくって、最初に出てくる手牌は、こんな形。南家で、配牌から最初のツモをしたところです。

[一][四][六][八][八][①][⑤][1][2][西][西][北][白] ツモ[九] ドラ[九]

最初のツモでドラを引いたのは嬉しいとはいえ、よい手とはいえず、微妙ですね。
ここから何を切るか。亜樹プロは「答えは、ありません」とし、「そんな無責任なー! と怒られるかもしれませんが、それが麻雀の本質です」と続けます。

亜樹プロほどの実績があれば、「この場面ではこうです」と格好良く言い切ることもできそうですが、あえてそうはしないところにプロ意識と誠実さを感じました。
同時に、答えがないからこそ、追求したいという思いも強くなりました。

本に答えは書いていないのですが、自由に構想してみましょう。

考え方の基本は、冒頭の動画で渋川プロが述べているように、「どうやったら一番素晴らしい形になるか」です。
具体的には、「どうやったら満貫(難しければ3ハン)になるか」を基準にすると、考えやすいです。リーチやツモもカウントしてかまいません。

一つ目の構想は、ドラが[九]であることも生かして、マンズのホンイツに向かうことですね。

[一][二][三][四][五][六][七][八][九][西][西][白][白] ドラ[九]

のようなテンパイになれば最高です。リーチをかけて[白]をツモると、裏ドラがなくても、リーチ・ツモ・白・ホンイツ・一気通貫・ドラで倍満になります。

ここまでは高望みとしても、

[八][八][八][九][九][白][白] チー[五][四][六] ポン[西][西][西] ドラ[九]

でテンパイし、[九][白]のどちらでアガっても満貫になるようなイメージは十分持てそうです。

二つ目の構想は、一九字牌が多いので、チャンタに向かうルートです。かなり遠いですが、123のサンショクもかすかに見えます。

[一][二][七][八][九][①][②][③][1][2][3][西][西] ドラ[九]

のような最終形です。リーチしてツモると、リーチ・ツモ・チャンタ・サンショク・ドラで跳満。裏ドラが1つ乗ると倍満です。途中で鳴いたとしても、チャンタ・サンショク・ドラで3ハンが期待できますね。

三つ目の構想として、オタ風の[西]のトイツに着目し、[四][六][⑤]はすぐに周囲をひけると考えて、ピンフを狙うルートもありそうです。最終形のイメージは

[四][五][六][七][八][九][⑤][⑥][1][2][3][西][西] ドラ[九]

リーチしてツモると、リーチ・ツモ・ピンフ・ドラで1300/2600。裏ドラが1つ載ると満貫です。ホンイツやチャンタのように、途中で鳴けないのはネックですが、十分な打点が期待できます。

四つ目の構想として、[西][八]のトイツを生かし、七対子も考えられそうです。とくに、ドラの[九]をもう1枚引けると、一気にパワーアップしますね。ドラが2枚ある七対子は、リーチしてツモると、リーチ・ツモ・七対子・ドラ2で跳満、裏が乗ると倍満になる強力な手です。

あるいは、赤ありルールなら、[赤五][赤⑤]に期待し、タンヤオを目指すルートもあるかもしれません。
もしくは、いずれもアガリには遠いと判断して、いわゆる「配牌オリ」を選択し、安全牌をかかえて振り込まないように打つ方もいそうです。

今の私は、まずマンズのホンイツを目指しそうですが、それが正解とはいえないですし、他のルートが間違っているともいえません。答えがないなかで、手探りで進めていくしかないのです。また、最初の構想どおりにいかず、途中で方針転換をしたり、妥協することも頻繁にあります。

さて今回は、構想力についてお届けしました。
前回、「点数が低くても早くアガることが大事」「少々遅くなっても高い点でアガることが大事」という二つの考え方を紹介しましたが、麻雀で一般に「構想力」というときは、後者の考え方に沿って、打点を追求することをいいます。

ここまで書いておいてなんですが、実は、この考え方自体が正解ではないかもしれません。

「LIBRA」という東京弁護士会の会報が、2018年5月号で、小林剛プロに興味深いインタビューをしています。
小林剛プロは「人によっては役の高い低いを重視して打つ方針をとる方もいらっしゃるのですが、実際には、平均打点は成績に大きくは影響せず、和了率と放銃率が成績に直結することが分かっています」と述べています。何よりもまずアガることが大事という考えですね。

役の高さを重視しない人は、プロの中でもほとんどいないので、ここまで徹底した考え方は少数派だと思います。
しかし小林剛プロがとても強く、Mリーグでも、ほとんどラスをひかない好成績をおさめていることは、ご承知のとおりです。もしかすると、「構想力」などといって、中途半端に高い手を狙いに行かない方がよいのかもしれないのです。悩ましいですね。

前回も書いたように、早さか打点かのバランスは、みなさんご自身が対局を重ねるなかで、自分だけのものを組み立てて頂ければと思います。
とりあえず今回は、配牌時に構想を立てることは大事、という考え方があることを知って頂ければ幸いです。

次回からは、当初の予定通り、牌効率を中心に、早くアガるための基本をご紹介していきます。

この記事のライター

藤田 明人
最高位戦日本プロ麻雀協会第43期後期(2018年入会)
兵庫県出身。東京大学法学部卒業後、新聞社に入社。
記者を経て、教育事業部門で勤務。
麻雀が、幅広い世代の学びにつながることを研究しています。

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