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卓上でヨシ!麻雀暗記ノート 第16回 アガリに向かう2つの考え方

卓上でヨシ!麻雀暗記ノート 第16回 アガリに向かう2つの考え方

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新卒で新聞記者になると、どの会社でも、若いうちに高校野球の取材をすることが多いです。
私も多くの監督に話をうかがいましたが、攻撃と守備のバランスについて、多様な考え方がありました。
「攻撃は水もの。守備力と投手力を鍛える」という監督。あるいは「8点取られても9点取れば勝てる」として、打撃や走塁の練習に力を入れるチームもありました。甲子園を目指す道は、監督の考え方同士の戦いでもあります。

麻雀にも、攻撃と守備があります。どちらも大事ですが、私は、覚えたてのうちは、攻撃を優先するのが良いと考えています。麻雀は、どこかの局面では攻めて、点数をとらねば勝てないゲームだからです。また、攻めた方がシンプルに楽しいからです。楽しくないと続かないですよね。攻めると振り込みも増えますが、実際に振り込むと印象に残るので、守備意識と押し引きの感覚が身についていきます。

1 まずは全力で攻撃してみる。アガれると楽しい
2 振り込むことも多い。痛すぎる放銃は記憶に残る
3 守備のポイントを学ぶ

4 攻守のバランス、自分なりの押し引きが身につく

という順序がおすすめです。

ということで、早速攻撃の話をしていきますが、「トレードオフ」という言葉を聞かれたことはありますでしょうか?
2つ実現したいことがあり、一方を目指すと、他方が難しくなる状態をいいます。ことわざでいうと「あちらを立てればこちらが立たず」でしょうか。

例えば「ダイエットしたい/デザートを食べたい」といった身近なレベルから、「高品質なサービスを提供したい/人件費を抑えたい」という企業レベル、「経済を発展させたい/自然環境を守りたい」という地球規模まで 、世の中はトレードオフにあふれています。そして、これを解決しようとすることが、ヒット商品を生みだしたり、イノベーションを起こしたりします。「いくら食べても太らないデザート」「丁寧な接客をする人工知能」などですね。

麻雀の攻撃も、「早くアガる/点数の高い手でアガる」がトレードオフになっています。
早くアガろうと鳴けば打点が下がります。またメンゼンでも、最速で進めると役なしでテンパイし、リーチのみになることがままあります。
一方、じっくり手作りして役を狙うと打点は高くなりますが、時間がかかり、他家に先制リーチを打たれたり、安いかわし手でアガられたりします。
常に、両者のせめぎ合いなのです。

アガリに関する数字の考え方

そして大きく分けると、「点数が低くても早くアガることが大事」「少々遅くなっても高い点でアガることが大事」という2つの考え方があります。

どちらが正解かは、ルールにもよりますし、どんなタイプの人と打つかにもよるので、断言はしにくいです。Mリーガーでは、どちらのタイプでも、結果を残している選手がいます。
Mリーグ公式ページの、2020のレギュラーシーズンの個人成績表 を見てみましょう。
雷電の黒沢咲選手と、パイレーツの小林剛選手が上下隣り合っていますが、この2人は対照的なスタイルです。小林選手は早さ重視で、副露率は31.2%で全選手中1位。アガリ率も26.8%を誇り、サクラナイツの内川選手についで2位です。
一方、平均打点は5856点で、あまり高くありません。

黒沢咲選手は、鳴かないことで有名です。黒沢選手が鳴くだけで、ABEMAのコメント欄がざわつくほどです。副露率はわずか7.1%で小林選手の4分の1以下。アガリ率は19.1%で2割を切ります。一方、平均打点は6844点で、小林選手より1000点ほど高いです。

2人は全くタイプは異なりますが、いずれもプラスの結果を出し、チームの原動力として活躍されています。

麻雀ウオッチの連載「データから見るMリーグ」の第5回では、2018年以来のレギュラーシーズンの「アガリ率×平均打点」が紹介されていますが、興味深いことに、5位の小林選手と6位の黒沢選手は、近い数値で並んでいます。
そして、この「アガリ率×平均打点」が高い選手が、おおむね好成績を残していることが読み取れます。

つまり、早さか打点かは、どちらが正解かというよりは、トレードオフの本質をつかんで、高いレベルでバランスを取っている人が強い、と言えそうです。そのためには、両方の考えた方を知るとよいと思います。適した本を3冊ご紹介します。

1冊目は「神速の麻雀 堀内システム55 令和版」(堀内正人著、福地誠編、三才ブックス)。
YouTubeでの活躍が目立つ堀内さんの著書で、タイトル通り、テンパイまで全力疾走して先制攻撃することを徹底的に重視する内容です。「現代麻雀においては先制リーチが最大の武器となっている」(15ページ)とし、牌効率に沿って打つことが最優先です。また、早くなるなら鳴きの多用もすすめています。「役牌トイツがあったら1枚目から鉄ポン、ほとんどの場合はそれが正解になります」(84ページ)と説きます。

2冊目は「大きく打ち 大きく勝つ麻雀」近藤誠一著、マイナビ)。
最高位を4期、最強位にも輝いた近藤選手は、Mリーグでも、打点を追求するスタイルで人気を集めています。2021年3月4日のMリーグ第2試合のオーラス、渾身の倍満をツモり、ラス目から逆転トップを決めた場面は、長く語り継がれるであろう名シーンでした。この本からは、打点をあげることの大切さと、そのための具体的な方法を学べます。

この本を開いてすぐ、7ページに出てくるのはこんな配牌です(7ページ)。
[一][二][五][九][③][③][⑧][2][4][6][8][白][白][発] ドラ[⑤]

最速のテンパイを目指すなら、まず[発]切りでしょう。また、[白]が出たらポンします。
一方、近藤さんの本では、「第1本線はピンズのホンイツチートイツにさだめて、[五]などから切っていくのがいい」「[2][4][6][8]を片っ端から切り飛ばしていくのもいい」とあります。全くアプローチが異なることがわかると思います。実際にホンイツチートイツになる可能性は高くないでしょうが、もしできた時は破壊力十分です。また、字牌をかかえながら進めるので、攻められたときの安全度も高いです。

3冊目は「迷わず強くなる麻雀」鈴木たろう著 鈴木聡一郎編 講談社)です。
攻撃、守備、押し引きの基本的な事柄から、上級レベルの考え方までが、コンパクトにまとまった1冊です。「佐藤はな」さんという新入社員に、鈴木たろうさんがアドバイスする対談形式で、楽しく読めます。

攻撃面では、まず、早くテンパイするための方法を中心に解説されています。そのうえで、本の終わりの方で、打点を追求するための考え方が紹介されます(204ページ、「最終形を見て打て」)。はなさんは、これまで習ってきたことと異なる考えを示されて「私の手作りの概念が崩壊しているんですけど」と戸惑いますが、説明を聞いて納得します。
1冊のなかで、2つの考え方を学べておすすめです。

早さ重視か打点重視か、様々な考え方を吸収して、みなさんご自身なりのバランスを組み立てていって頂ければと思います。守備は、ベタオリの手順などある程度定型が決まっていますが、攻撃のパターンは幅広く、打ち手の個性を出せます。その自由さも、麻雀の大きな魅力の一つです。

次回からはまず、早さ重視でアガリを考える場合のポイントをご紹介していきます。

この記事のライター

藤田 明人
最高位戦日本プロ麻雀協会第43期後期(2018年入会)
兵庫県出身。東京大学法学部卒業後、新聞社に入社。
記者を経て、教育事業部門で勤務。
麻雀が、幅広い世代の学びにつながることを研究しています。

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