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重圧と戦い続けたシンデレラストーリー。丸山奏子のこれから――【予選第2節Bブロック2卓】

重圧と戦い続けたシンデレラストーリー。丸山奏子のこれから――【予選第2節Bブロック2卓】

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彼女の歩みは、シンデレラストーリーそのものだ。

最高位戦日本プロ麻雀協会所属、丸山奏子。昨年、プロ入り2年目の彼女がMリーグ「赤坂ドリブンズ」に指名され、大きな話題を呼んだことは記憶に新しい。まだキャリアが浅く、何色にも染まっていない彼女の伸びしろに期待を込め、Mリーグ初代王者は白羽の矢を立てた。

指名後は園田賢村上淳鈴木たろうという名実ともにトッププロのチームメイトたちから直接指導を受ける日々が続いた。それはたしかに、丸山の血肉となった。だが当然と言うべきか、その身にかかる重圧もすさまじかったという。

「あの3人に教えてもらっているんだから、できて当然だよねって思うようにしていたんですけど、それはすごい自分を追い詰めるし、間違ってはいけないみたいなプレッシャーを余計にかけたんですよね。麻雀がすごく臆病になって、ただ怖いみたいな感情が大きくなっちゃった時期がありました」

プロ入り2年目、ようやく競技麻雀の世界にも慣れ親しんできたかなというタイミングで、突如として最高峰の舞台に立つことになったのだ。麻雀ファンも驚いた顛末だったかもしれないが、誰よりも衝撃だったのは他ならぬ丸山だろう。そんな渦中に身を置かれ、平常心でいろというのも難しいように思う。

「それでも、開き直ることはできました。どん底まで落ち込んだからだと思います。泣くだけ泣いて、落ち込むだけ落ち込むみたいなことがあったので(笑)」

Mリーグデビュー戦、丸山は衝撃的な逆転勝利で話題をさらった。だが、その後は本領を発揮できることなく、思うような結果を残すことは叶わなかった。

「自分は今期のMリーグの対局数は、最低10戦からって言われていました。1戦1戦やるごとに、こんなにいい舞台で打てるっていうだけでラッキーなのに、気付いたら終わっていたってなるのは本当にもったいなさすぎると思っていて。結果が残せなくて落ち込んで、そのたびにみんなから励ましていただいたりもしたんですけど、自分のことは自分で立ち直らせないといけないなと思えるようになりました」

その経験は、キャリアが少ない丸山にとって大きな財産になったように思う。今期の麻雀ウォッチ シンデレラリーグでは、第1節に大きなマイナスを叩く結果となった。

だがこの日、予選最後の戦いとなる舞台に臨む丸山の表情は、ひどく晴れやかに見えた。どんなに辛かろうと、苦しかろうと、自分の力で這い上がる。そう思える経験を積んだからこそ、集中して舞台に立てたのだろう。

現在はトータル6位の丸山だが、同卓者は2位の涼宮、3位の山田、4位の水谷。いずれも自身より上の順位であるため、勝ち続ければ自然と2位以内に入れる可能性がある。

初戦こそ3着スタートだったものの、まだまだ3戦も残されている。いずれにせよ、次の2回戦はなんとかトップが欲しい局面だ。

丸山は序盤から積極的だった。親の山田から先制リーチを受けたものの、123の三色が見える1シャンテン。引きからのピンフドラ1でも打点十分で、山田の河も強いということでを勝負したが――

残念ながら一発放銃となり7700の失点を喫する。

東3局1本場も、後手に回る展開となった。親の涼宮のリーチを受けながらも絶好のカン引きで追いかけリーチを放つ。

だが涼宮のカンを掘り当ててしまい、裏ドラも乗って12300の直撃。

次局、ようやく先手を取れた丸山。だが――

これも不発! 涼宮からもロンの声がかかったが、頭ハネで山田が2600は3200を丸山からアガった。これで丸山は、とうとう箱下になってしまう。

ラス前になったが、まだまだ丸山はファイティングポーズを崩さない。メンタン赤の待ちで親の涼宮に真っ向勝負を挑んだが――

涼宮が高めのをツモ! 他家を突き放す4000オールを成就させた。アガリが発生した直後、カメラに移らないタイミングで大きく伸びをした丸山の姿が印象的だった。

丸山とは対照的に絶好調の涼宮は、次局もわずか5巡でリャンメンリーチをかけた。これは、さすがに白旗か。などと思っていたら――

丸山はチートイツのリーチで追いかけた! 安牌は潤沢にあり、降りることには事欠かない。だが、もはや退いていられるような状況ではなくなった。ここでは腹を括って一歩踏み込む選択を取った。待ち牌のは――

山田が2枚抱えている! 残るは1枚だけ。またしても窮地かと思われたが――

ついに丸山が競り勝った!

「ポイントがないからこそ、開き直って押し切れた部分もありました。今は状況のバランスをつかむ練習をしているんですけど、そのバランスにあった選択はできたんじゃないかなと思っています」

1年前のシンデレラリーグに出場した頃の丸山は、まだまだデビューしたてのルーキーという印象が強かった。当時も随所でセンスの良さを感じさせるプレイヤーだったが、今では小柄な見た目とは裏腹にたくましさも備わっているように感じられた。

この3回戦、丸山にとっては紛うことなき正念場だ。いくら上位陣との直対とはいえ、現状のポイントを考えるとここでトップを取らねば追いつけるものも追いつけなくなってしまう。なればこそ、東1局にかけたこの会心のリーチは、是が非でも成就させたいところではあったが――

丸山がつかんだのは、水谷の当たり牌。たった1枚だけ山に残されていたを掘り当て、8000点の失点を喫してしまった。

この日、こんな光景を見るのは何度目だろう? どれだけ前に出ようと、待ちの枚数で数的優位に立とうと、丸山のリーチはことごとく跳ね返された。意地悪なほどに山に嫌われ、見ているこちらが悲鳴を上げてしまうような展開が続いた。

大事な南場の親番、丸山にメンタンピンの絶好の手が入った。待ちもならば十分といったところだが――

リーチをかけた時点で、なんとこの待ちがすでに純カラ……。アガリ連荘のため、これで丸山の親番は終わり。それは事実上、彼女の敗退を決定づけると言っても過言ではないほどの痛手だった。

オーラス、丸山はラス目ながら好配牌をもらった。がアンコになったが、選択はツモ切り。本線は789の三色だが、まだ4ブロックしか確定していない状況で、に赤牌がくっつく可能性は捨てられない。くっつき候補を最大限に残すべく、を雀頭固定した。

この半荘は倍満ツモでもまくれないほど涼宮が突き抜けてしまったため、トップ奪還は絶望的。しかしながら、着アップの可能性は十分に残されている。すでにトータルポイントで大差がついてしまった状況で、その着アップがどれほどの追い風になるかはわからない。けれど、たとえそれがそよ風程度だったとしても、丸山は突き進むしかないのだ。

現在2着目の水谷は、1メンツが完成しているものの、まだ時間はかかりそう。丸山の手の進み方次第で、2着浮上も十分にあり得そうだ。

などと思っていたら、3着目の山田からわずか5巡でタンヤオ・三色のリーチが入った。ヤミテンでも満貫ツモだが、他家へのけん制にもなるリーチだ。

このリーチを受けた丸山は、まだ1シャンテン。浮き牌として残した2牌はどちらも無筋だが――

当然降りてなどいられない! 無筋のをまっすぐ前に出した。その一念が実を結んだのは――

終盤も終盤の14巡目。ピンフ・ドラ1のこのリーチが跳満に化けることは、ほぼない。けれど3着になる条件は満たしている。この状況で3着になることに、どれほどの意味があるのかはわからない。けれど、それは無意味では決してない。丸山の思いは――

ここに来てようやく報われた!

リー棒と順位点を合わせて、その価値19000点相当のアガリ。それは、土壇場で見せた丸山の意地のように思えた。

3回戦を終えて、ボーダーにいる夏目と丸山の差は108ポイント。この差を埋めるには、98100点のトップが必須だ。

正直に言おう。役満一発でも届かないほどの差は、「目無し」と呼んでも差し支えない。そういった状況に置かれたプレイヤーの最終戦について触れることに、心苦しい気持ちもある。

だが! 丸山は諦めないのだ。Mリーグでの重圧にもがき、シンデレラリーグでの劣勢に苦しみ、それでも丸山は戦い続けているのだ。ならば、僕たちはその雄姿を見届けるしかない。

東2局、丸山のもとへ好機が訪れた。345の三色も見えるが、を引いてソーズの伸びにも期待できるようになった。

ここは切りとし、ソーズの伸びに希望を繋いだ。

この選択が実を結んだ! フリテン3メンチャンを先に埋め、待ちのリーチをかけた。

の暗カンをして、新ドラも1枚乗った! そして――

3000-6000を成就! ここに来て、この日の最高打点を記録した。

こうして親番を迎えた東3局、またしても丸山にチャンスが。絶好のカン引きで、わずか3巡で1シャンテンに。そして次巡――

あっさりとネックのペン引きでテンパイ! なんと待ち牌は6枚も山に眠っている。さすがに勝ち濃厚に思われたが――

ここで山田が追いついた! しかも3メンチャンの上に丸山の現張りだ。丸山と殴り合うのはリスクが大きすぎるとばかりにヤミテンに構え――

水谷からこぼれたを討ち取った。丸山にとって、打点以上に厳しい1000点の横移動……!

南場に入り、丸山は以前トップ目をキープしている。だが、まだまだ稼ぎ足りない。そんな彼女の思惑とは裏腹に、親の山田が南・赤2のテンパイを入れる。

丸山はチートイツの1シャンテン。だが勝ち上がりを考えるなら、この手は四暗刻にまで育て上げたい。しかしその場合、山田の当たり牌であるが高確率で飛び出してしまう。平常時であれば起こり得ないような巡り合わせに、丸山が襲われていた。

「『それ本当に、あの3人に教わったの?』って言われるような打牌をしたくないんですよね。ただ教えてはもらっているけど、その時の最善は自分でも模索中だし、その瞬間は私で考えて判断するしかないので」

園田賢に、村上淳に、鈴木たろうに教わっている環境は、単なる重圧ではない。かけがえのない財産だ。この日、丸山は幾度となく足を踏み出し、そのたびに敗れた。けれど、後悔はない。丸山は、丸山として最適解を目指し続け――

ここでも前に踏み出した! 山田の当たり牌を吸収してのドラ単騎リーチ。ツモれば跳満、裏ドラも乗せれば倍満だ。四暗刻にはならなかったが、跳満以上のアガリならば光明は差す。しかも山田のは残り1枚。丸山のは3枚も山に眠っている。そう、これは反撃の狼煙――

とはならなかった。最終戦でも丸山は山にあざ笑われるような展開に襲われ――

無念の予選敗退となった。

「今日は気持ちよく打てました。もちろん、負けて悔しい気持ちもすごくあります。だけど、やり切ったっていう気持ちもあって。だから次に繋がるんじゃないかな。このまま、この気持ちで他の対局にも挑めたら、きっといい結果になるんじゃないかって思えたので」

人事を尽くしても、自分の望んだ天命が下るとは限らない。それが麻雀だ。不運に襲われ、理不尽な目に遭うことだって日常茶飯事だ。だからといって、それを嘆いても何も始まらない。この日の丸山には、何があろうと心を揺らさない芯の強さがたしかに感じられた。

この1年で得た豊富な経験は、丸山の開花予想を大きく早めた。シンデレラストーリーは、まだまだ終わらない。ここから始まるのは第2章。そのサブタイトルは、きっと「飛躍編」だ。

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この記事のライター

新井等(スリアロ九号機)
麻雀スリアロチャンネルの中の人。
ナンバリングは九号機。
スリアロでのポジションをラーメンに例えると、味玉くらい。
お酒があれば、だいたい機嫌が良い人です。

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