「黒いデジタル」
一見すると理から大きく外れたように見えるその選択。
しかし対人ゲームとして考えたとき、相手に与える影響は絶大である。
こうして相手を翻弄し、数々の舞台で結果を残してきた変幻自在のプレイヤー。
今回は石橋伸洋プロの軌跡を紹介したいと思います。

◆石橋伸洋(いしばしのぶひろ)
◆生年月日:1980年9月29日(39歳)
◆出身地:千葉県佐倉市
◆血液型:O型
◆所属チーム:U-NEXT Pirates
◆所属プロ団体:最高位戦日本プロ麻雀協会
◆趣味:ドライブ
◆主な獲得タイトル:第36期最高位・第19期發王位・第10回モンド杯優勝・第3期天鳳名人
◆Twitter:@rate1484
一瞬で魅了された麻雀との出会い
石橋が麻雀と出会ったのは高校生の頃、学校の先輩に誘われたのがきっかけでした。
すぐにその魅力の虜となり、覚えてからはほぼ毎日のように打つ麻雀漬けの生活が始まりました。
1999年からは一時代を築いたネット麻雀「東風荘」(※)に出会います。
これをプレイするようになった石橋は、戦術をやり取りするネット掲示板を見つけ技術の研鑽と共に、東風荘プレイヤーとの交流を深めます。これが石橋の将来に大きな影響を与えることになるのです。
その掲示板で交流していた方の紹介で山口まや(最高位戦)が主催する勉強会に参加することになったのです。
この勉強会には村上淳・鈴木たろう・小林剛・水巻渉・佐藤崇など当時は若手ですが、現在を代表することになるプロが研鑽を積んでいました。
この勉強会に参加した石橋がもっと強くなりたいと思い、プロ入りを目指すようになるのはあたりまえな事でした。
(※)東風荘(とんぷうそう):日本でサービスが提供されていた麻雀のオンラインゲーム。チャット機能などが装備されていたのが特徴。2018年3月にサービス終了。
プロ入りからの麻雀感の変化
こうして2003年に最高位戦日本プロ麻雀協会に28期生として入会した石橋。
しかし、当時は今のイメージとはかけ離れた麻雀スタイルでした。
麻雀を始めたころは、「振り込んだら配牌が良くなると思い、めちゃくちゃに攻めていた」と言います。
この言葉を石橋の口からきいたときの衝撃は今でも忘れられません(笑)。
そこから始まった石橋の麻雀ですが、数学の確率を麻雀が強くなるために勉強し、猿のように麻雀を打ち徐々に今の麻雀に近づいていきます。
26歳の頃、麻雀プロ同士で東風荘で卓を囲み、その牌譜を見ていた時に石橋は自分のエラーから相手が読み違えた局面を見つけます。
もちろん手順などの基本は大事だが、その前提があり読みが入るメンバーで打つ場合はあえてセオリーを外すことで相手の読みを外せる、そんな今の麻雀感にかなり影響を与える発見をします。
この考えに至ったのは、高校の部活で水球をやっており、体格差がある相手の中で通用する手段を常に考えることで、柔軟な発想力が鍛えられた影響かもしれないと語ってくれました。
また、この頃に参加するようになった古久根塾(※)で、相手の速度や場況など自分の手牌以外の部分を学びます。
これにより麻雀を立体的に捉えられるようになり、さらなる進化のきっかけとなりした。
こうして単なる確率のパズルゲームから対人ゲームとしての麻雀という今の石橋の麻雀感の土台が完成したのです。
また、この後に発足したばかんすリーグという研究会では牌譜からそれぞれの意見をぶつけ合います。ここでの対局や検討などから各選手の「A(主に石橋の捨て牌や仕掛け・手出し)という局面に対しどう読むか、その読みをもとにどういった対応を取ったか」などを予測していくことが石橋の戦術となり、これが著書「黒いデジタル麻雀」へと繋がったのです。
(※)古久根塾(こくねじゅく):最高位戦やRMUに所属した古久根英孝が主催した勉強会。最高位連覇を含む3度獲得した当時のスタープレイヤーで、場況読みを得意とし、現在にも各団体に古久根の門を叩いた選手は多く存在する。
駆け上がったスター街道、そして試行錯誤
順調に昇級と進化を続けていった石橋は27歳の若さで最高位戦Aリーグに昇級。
29歳の時に最高位決定戦に進出。さらにAリーグでの対局を見たMONDO杯プロデューサーにその将来性を買われ、第10回MONDO21杯にノンタイトルながらも初出場、その抜擢にこたえ見事優勝を果たし一気にスター街道を驀進します。

翌年には第19期發王戦で初タイトルを獲得すると、第36期最高位も戴冠し二冠達成。

名実共に最高位戦の看板選手となります。
当時31歳と年齢的にも若く、ここから石橋の時代が続くのかと誰もが思いました。
しかしこの後、石橋は大舞台での勝利から遠ざかることとなります。
ディフェンディングで迎えた第35期決定戦やMONDO21杯、RTDリーグなどの大舞台で戦いそして負けを重ねる。
2017年には度重なる国士無双放銃で「国士職人」という不名誉な異名まで得てしまいました。
しかしそれでも石橋は研究も怠らず、国士無双に対しても同じ局面が来たら何回でも放銃するというメンタルの強さも見せてくれました。
こんな石橋の実績と精神性、そしてネット麻雀で培ってきた実力を評価され、第一回ドラフト会議でU-NEXT Piratesから指名を受けるに至ったのは至極当然の出来事でした。
初年度こそ成績は振るいませんでしたが、同じく最高位戦所属の塚田美紀と結婚し、第一子も授かり幸せいっぱいの私生活。
2年目の今年は好スタート、セミファイナルでは個人215.5ポイントの個人首位で、チームのファイナル進出に大健闘しました。
今期も石橋の魅せるトリッキーな選択とその真価が楽しみですね。
年 | 年齢 | 主な出来事 |
---|---|---|
1980 | 0歳 | 千葉県佐倉市生まれ |
1997 | 17歳 | 高校の先輩から麻雀を教わる |
2003 | 20歳 | 最高位戦入会(28期) |
2006 | 26歳 |
東風荘の牌譜から今の麻雀への大きなヒントを受ける |
古久根塾で麻雀を立体的に捉える学びを受ける |
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第15期麻雀マスターズで決勝に進出するも、惜しくも準優勝 | ||
2007 | 27歳 | 最高位戦Aリーグに昇級 |
2009 | 29歳 | 第34期最高位決定戦に進出するも4位に終わる |
2010 | 29歳 | 第10回MONDO21杯に初出場し初優勝を飾る |
2011 | 30歳 | 第19期發王戦で優勝 |
31歳 | 第36期最高位を戴冠し二冠達成 | |
2017 | 36歳 | 最高位戦Aリーグから降級 |
2017 | 37歳 | 結婚 |
Mリーグが発足し、U-NEXT Piratesに3位指名される | ||
2019 | 38歳 | Mリーグ初年度はチーム5位でシーズンを終える |
著書
『黒いデジタル麻雀 ~現代流データ戦術を斬る~』( 2015マイナビ麻雀BOOKS))
最高位、發王位(リアル)、モンド杯優勝(TV)、天鳳名人(ネット)と、どのような環境、ルールでも勝ち続ける男・石橋伸洋が自身の打法「黒いデジタル打法」を伝授する待望の一冊が完成!
レベルが上がった現代の麻雀で最大限勝つためには、自分の選択によって相手に間違った選択をさせたり、自分に協力してもらったりする必要があります。私が「黒い」と言われてしまうのも、きっとこのような考えを大切にしているせいですが…
(まえがきより抜粋)
第1章 現代流の手作り ~相手はこう打つ~
第2章 黒いデジタル 基本編
第3章 黒いデジタル 局面編
第1章では相手がどう打つのか、現代流のセオリーをみっちり叩き込みます。
続く第2章が本書のメイン。前章で解説されたような現代流のデジタル戦術の弱点を突き、その上を行く黒いデジタル麻雀の本領が発揮されています。
そして第3章では応用編として局面ごとに分けて、どのように打てば良いかという方針が示されています。
本書には中途半端ではなくしっかりと勝てるようになってほしいという石橋プロの願いが込められています。
”勝つこと”ではなく”勝ち続けること”に徹底的にこだわってください。
『進化するデジタル麻雀 現代の強者に打ち勝つテクニック)』(2016マイナビ麻雀BOOKS)
「ネット麻雀での統計データをもとに生まれた『現代流データ麻雀』は“必勝法"ではありません。なぜなら、すでに世に広く知られた戦術を使う相手同士で対戦した場合は大きく勝ち越すことができないからです」(まえがきより)
本書は自団体で最高位と發王位を同時獲得、テレビではモンド杯優勝、ネットでは天鳳名人戦優勝の現在最強の打ち手と呼び声高い石橋伸洋プロによる、最高レベルの麻雀戦術書です。
現代流データ麻雀をマスターしている打ち手の考え方、打ち方を透視し、予測し、それを逆手に取って勝つ方法を伝授しています。本書は「弱い人に勝つ方法」ではなく、「強い人に勝つ方法」が書いてある本だといえます。
前著「黒いデジタル麻雀」で概念的に説明された戦術論を具体的な局面に落とし込んで解説しています。41の例題が収録されていますが、それらは決して単なる何切る問題ではなく、何を切り、何を考えておくべきかを問うています。ハイレベルになった現代麻雀において勝ち続けるにはここまで深く考えなければいけないのかと驚かされます。
相手の打ち方や動向を予想し、人より常に一歩、二歩先に行った麻雀、現在のベストの麻雀の打ち方がこの本にあります。