第2章No.5
従来は「シャンポンよりカンチャン」というセオリーがありました。『科学する麻雀』にて「カンチャンよりシャンポン」であることが示された時も反論が多かったことからかなり根強いセオリーであったことがうかがえます。今回の研究でシャンポン有利ということが改めて示されただけでなく、どのような条件がつけばカンチャン有利になるかといったより細かい判断もできるようになりました。
今回の結果から、実際には「カンチャンよりシャンポン」でありながら、長らく「シャンポンよりカンチャン」と信じられてきた理由についても見えてくるような気がしました。考えられる理由を3つほど挙げてみます。
①シャンポンのアガリ率が高いのは、待ち牌が2種類あるので後ヒッカケになりやすいといった出アガリのしやすさにあり、ツモアガリ率に関しては大差ありません。待ちが2種類あるシャンポンより、1種類しかないカンチャンの方が、「山に残っている待ちになった場合にそのことを予想しやすい」ので、ツモアガれた時の印象が強く残ったのではないでしょうか。
②端寄りの牌が待ちになる場合については、従来でもシャボ有利であることが分かっていました。しかしこれは牌の使いやすさから常識的に分かることです。
A>BであるものがB有利な条件が加わったからといってB>Aになるとは限らないのですが、分かりやすいところに基準を置きたがるというのは誰しも少なからずあることですから、「内寄りの牌同士であればカンチャン有利」と思われてきたのではないでしょうか。
③枚数は変わらないのに2種類あるという理由で、シャンポンを過大評価するのは覚えたての初心者に昔からよく見られる光景です。そのような背景もあって、トイツ落とし関連の手組は上級者向けの手筋として好まれていました。麻雀を長年打っていれば初心者によくある見落としによるミスは自然と減っていくので、部分的には損な選択をしていても結果的には勝てるようになります。このため、「トイツにとらわれない方が勝てるようになったから、やはりカンチャンを優先した方がよい」と思い込む打ち手が多かったのではないでしょうか。「シャボよりカンチャン」に限らず、「上級者が好む選択だから正しい」と思われてきたセオリーが麻雀には少なくありません。
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