第三章 フーロ
(6)「先付け」と、「後付け」。字面上では反対なのに、意味が全く同じというのも不思議なものです。「戻る」という意味はないのに、後付けが「バック」と呼ばれているのも、言われてみれば確かに謎ですが、バックには「逆」という意味もあるので、先に役を付けるのとは手順が逆だから「バック」と呼ばれるようになり、あまり違和感なく浸透していったのではないかと推測します。
本来麻雀には、1翻しばりのルールもありませんでしたが、昭和27年に初のリーチ麻雀ルール「報知新聞ルール」が発表され、以降のルールの基礎になりました。しかし、報知新聞ルールの中の一節「1翻しばり」の解釈について誤解が生まれました。
ルールでは、「アガリは1翻以上が確定していなければならない」とあり、これは「アガった時に1翻あればよい」という意味でしたが、一部の人々が「副露した時や聴牌したときに役が完全に確定していなければならない」というように解釈してしまい、完全先ヅケルールが誕生しました。なお完先に対する形でアリアリという概念も生まれました。
私は最初この話を聞いた時、「アガリは1翻以上『確定』していなければならない」と言われたら、むしろ「後付け」無しのことだと解釈するのが自然なので、どうしてそのような表現になってしまったのが疑問でありましたが、そもそも当時は「1翻しばり」の概念自体がなかった時代。そのような誤解が生じるところまでは想定されていなかったのもやむを得ないことだったのかもしれません。
(7)「確定する」という言い回しにも注意が必要です。今回はを先に引いても役牌があるので、単純に役有りになる受け入れが多い分よりもを鳴いた方が、三色は不確定ですが、「よい手」になります。
同様のことは手役以外に、テンパイ形が良形になるかどうかでも言えます。例えばリャンメン×2の1シャンテンと、とのくっつき1シャンテンであれば、前者は「良形確定」ですが、良形テンパイになる受け入れ枚数はどちらも同じなので、良形不確定であっても、テンパイする受け入れが多い後者の方が、「よい手」です。あくまで、よりよい受け入れ優先なのであり、イマイチな受け入れだからといって嫌うのはただ損するだけです。
(8)マンズとピンズが鳴かれた場合、待ちがソーズである可能性が高いことを、「マンピンソーの法則」と言いますが、これは牌の組み合わせ上、鳴いて既に見えている牌が待ちになるような面子候補が残っていることは少ないため。一色手であれば、数字の上の方が鳴かれているのであれば、待ちは下の方の数字である可能性が高くなります。「生牌は危険」というのも同様の理屈です。
だからこそ、待ちを替える鳴きや、二度受けを解消する鳴きは、鳴いたところと待ちが同色、同じ数字になるので盲点になるというわけです。手牌Eはドラ無しならチートイツやサンアンコの1シャンテンでもあるので基本はスルーするところ。鳴いても満貫あるが故の鳴きです。このように、鳴いても打点十分なのでメンゼンにこだわる必要性が薄い時ほど、「意外性のある鳴き」が有効になりやすいもの。あがれた時に戦績に与える影響が多いため重要度が高いので見落とさないようにしたいですね。
本記事に関するご紹介
ツキ、流れ、勢いといったあいまいな表現を嫌ってきた著者の明晰な頭脳で、麻雀を論理的に限界まで語りつくされてます。