放送対局を見ていると、「さてオーラス、○○選手は満貫ツモで逆転ですね」「2本場なので、700/1300でトップになれます」などとよく聞きます。瞬時に計算できて凄いな、と感じますが、実況や解説の方は、その都度計算しているわけではありません。どうツモれば何点縮まるのか、もともと知っているのです。
「麻雀の匠」で、第45期最高位の醍醐大プロがオーラスに臨むところを見てみましょう。
33900点持ちの2着目で、トップ目は40900点。7000点差です。十分逆転圏内で、ぜひトップを目指したいですね。醍醐さんは「8000点か、2000/4000をアガれば逆転できる。イチサンニーロク(1300/2600)だとちょっと足りない」と話しています。
7000点差なので、満貫(8000点)をアガれば文句なく逆転できるのは、分かりやすいと思います。
では、1300/2600をツモった時(典型的には、リーチ・ツモ・ピンフ・ドラ1など)はどうでしょう。
自分は、親から2600点、2人の子から1300点ずつもらうので、5200点増えます。
一方、トップ目(子)は1300点減ります。あわせて、6500点縮まります。こんなイメージです。
うーん、惜しい!7000点差を埋めるには、500点足りないですね。
ただ、誰かがリーチしてくれれば、アガるとリーチ棒(1000点)も得られるので、きっちり逆転できます。
子でツモった時に、どうなるかを細かく見てみましょう。
アガる点数 | 子と縮む点差 | 親と縮む点差 | アガリ方の例 |
300/500 | 1400 | 1600 | ツモのみ(30符) |
400/700 | 1900 | 2200 | ツモ・ピンフ/ツモのみ(40符) |
500/1000 | 2500 | 3000 | リーチ・ツモ/ツモ・ドラ1(いずれも30符) |
700/1300 | 3400 | 4000 | リーチ・ツモ・ピンフ/リーチ・ツモ(40符) |
800/1600 | 4000 | 4800 | ツモ・チートイツ |
1000/2000 | 5000 | 6000 | リーチ・ツモ・タンヤオ(30符) |
1300/2600 | 6500 | 7800 | リーチ・ツモ・タンヤオ・ピンフ |
1600/3200 | 8000 | 9600 | リーチ・ツモ・チートイツ |
2000/4000(満貫) | 10000 | 12000 | |
3000/6000(跳満) | 15000 | 18000 | |
4000/8000(倍満) | 20000 | 24000 | |
6000/12000(三倍満) | 30000 | 36000 | |
8000/16000(役満) | 40000 | 48000 |
うわ、こんなに覚えられないぞ…、と思うかもしれませんが、実は、法則を2つ知っておけば大丈夫です。
ます、基本は「子と縮む点差は、子からもらう点数の5倍。親と縮む点差は6倍」です。上の表で黒字の列です。
1300/2600であれば、子と縮む点差は1300×5=6500点、親と縮む点差は1300×6=7800点です。
満貫ツモだと、子と縮む点差は2000×5=10000点。親とは2000×6=12000点縮みます。
赤字の列は、親からもらう点数が、子からもらう点数の倍ではないため、少しずれます。
「子と縮む点差は、子からもらう点数の5倍マイナス100点。親と縮む点差は6倍マイナス200点」です。
700/1300であれば、子と縮む点差は700×5-100=3400点、親と縮む点差は700×6-200=4000点になります。
赤字は3列だけなので、そのまま「300/500は1400と1600縮む」などと覚えてもよいと思います。
実戦では、供託や本場の影響も加えます。
供託として出ているリーチ棒は、アガれば自分のものなので、足し算します。
本場は、例えば2本場なら「自分は600点プラスで、相手は200点失うから、さらに800点縮まる」と考えます。本場が1つ増えるごとに、400点ずつ縮む計算です。
ここまではツモアガリの話ですが、ロンのときはどうでしょう。
ます、狙ったターゲットから直撃できるときは、点差の半分より多い点ならOKです。
上記の7000点差なら、7000の半分は3500。3900点以上を直撃できれば逆転できます。
ターゲット以外の他家から当たる場合は、シンプルに、点差より多い打点が必要です。
7000点差であれば、他家から8000点以上でアガれば良いわけです。これは分かりやすいですね。
オーラスでの点差計算は、順位に直結してとても重要なので、プロ団体の試験でもよく出題されます。
最高位戦日本プロ麻雀協会の過去問は、ウェブサイトで公開されていますので、第46期前期の東京会場の筆記問題(PDFファイル)をご覧ください。
問題8の1で、「南 4 局 2 本場・供託 1 東家 37600 南家 36500 西家 28200 北家 16700」から、「北家がツモで単独 3 位になる最低点数」が問われています。
3着の西家との点差は、28200-16700=11500点。アガれば供託のリーチ棒を1本得られるので、10500点を縮めればよいですね。
さらに2本場なので、800点加わります。縮めたい点差は、10500-800=9700点となります。
上の表を見ればわかりますが、9700点差をまくる最低点数は、2000/4000 が正解となります。
このような計算に慣れれば、オーラスでどの役を作れば良いのか、リーチをかけるべきかなど、方針を立てやすくなります。どうしても目指す打点にならなければ、リーチをかけて、裏ドラに期待することもあります。
また、オーラスの前、南3局でどの程度の位置につけておくべきか、見通しをつけられます。
オーラスを2着以下で迎える時の、トップ目との点差は、満貫ツモでまくれる1万点以内(相手が親なら12000点以内)がひとつの目安です。
もっとも、そう都合よく満貫はできないので、できれば 1000/2000 か 1300/2600 でまくれる射程に入れておきたいですね。
逆に、自分がトップ目であれば、南3局に少しでも加点し、オーラスでまくられにくい点差を作ることが、勝率を上げるコツになります。オーラスはもちろんですが、南3局の戦い方もとても重要です。
次回は、できれば避けたい「チョンボ」や「アガリ放棄」について考えます。