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ネマタの戦術本レビュー第386回「麻雀序盤の鉄戦略 著:独歩 しゅかつ すずめクレイジー 平澤元気その11」

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 ケース21

 アガリ率はもちろん鳴いた方が高く、スルーしてメンゼンでアガるにはかなり厳しい牌姿。手牌を短くするリスクをどう見積もるかが問題になります。

 4巡目で上家から比較的メンツになりやすいが切られるということは、手牌進行が早いとも考えられますが、これだけの情報だとアガリに遠いところからの手役狙いで中張牌が多く切られているとも考えられます。前者ならテンパイする前にリーチが入ることも多く、その時は安手の場合は手牌を短くしていることが損になるのでスルーでしょうか。

 このように局面に依存するところが大きい問題ではありますが、自分では牌姿Aでもはチーすることが多いです。遠いところから仕掛けてテンパイしないうちにリーチがかかると確かに困ることが多いですが、相手の仕掛けに速度を合わせるという理由で他家も仕掛けて進めることが増えるので、スルーして当分メンゼンで進めた場合に比べれば他家にメンゼンで高打点の手をアガられるケースが減ることも期待できるためです。鳴いた場合は打としては安牌として残し。メンツ候補オーバーになるようならメンツ候補を1つ外してやはり安牌は抱えるように手を進めます。

 は鳴くがはタンヤオが否定されるからスルーという考えもあります。ただチーだけでは手役を役牌だけに絞ることが出来ず、チーでもにくっついてペンチャン外しなど手を進めていくうえでタンヤオでないことが読まれやすくなるので、この段階では鳴くつもりであればからでも鳴きます。

 ケース22

 他家3人から仕掛けが期待できるのであれば、役牌トイツのメンツのなりやすさはメンゼン限定のリャンメンと同程度ですが、仕掛けが全く期待できないのであれば、メンゼン限定の残り2枚のペンチャンと同程度にまでメンツになりづらくなります。

 1つ鳴くことでここまでが出づらくなるのであれば、シャンテンが進んでもアガリやすくなっているとは言えません。浮き牌にくっついて新たにメンツ候補ができた場合はカンをメンツにしなくてもアガリを目指せることも考慮すると、カンチャンとはいえスルーという結論になりそうです。

 ただし、を鳴くとドラを一切打ってこない相手が、メンゼンで進めたところで簡単にを出すというのも考えにくい話です。元々メンゼンでテンパイしづらく、メンゼンで進める打点的メリットが薄いことをふまえると、は流石にスルーしますが、他はシャンテンが進むものは全て仕掛けます。ケース21と異なり、中張牌を仕掛ける場合は鳴いて打とすることでタンヤオに見えやすくなるように手を進めます。

 他家の打ち筋に結構依存する問題ですが、どちらかと言えばガチガチに絞ってくる打ち手より、字牌ならドラでも使いにくいという理由でアガリに遠いところから切り飛ばす打ち手を相手している方が、「メンゼンで進めてさえいればの出が早い段階で期待できる」ということでスルー寄りでしょうか。

本記事に関するご紹介

例えば非常にいい配牌をもらったとき、これは一直線にアガリに向かえばいいだけなので、中級以上の打ち手であれば差がつきにくいですし、最終的にはロジカルに正解がでる部分です。
問題は悪い配牌をもらったとき。この場合はアガリに向かうのか守備に重心を置くのか、アガリに向かうにしてもどの手役を狙うのか(どの手役も遠い)、第1打から考えるべきことが多くなり、不確定要素も増えます。そしてこのジャンルは麻雀研究においても未開拓の分野です。
そして、この「超序盤の戦略」こそ、強者と弱者の差がつく、残された分野なのです。
 
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この記事のライター

ネマタ
浄土真宗本願寺派の僧侶。麻雀戦術サイト「現代麻雀技術論」の著者。
同サイトは日本麻雀ブログ大賞2009で1位に。
1984年佐賀県生まれ。
東京大学文学部中退。

著書:「勝つための現代麻雀技術論」「もっと勝つための現代麻雀技術論 実戦編

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